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夜中の思考って大体ロクなもんじゃないから。
しおりを挟む皇宮からの帰りの車で、俺はつらつら思い巡らせた。
整理しなければならない。
取り敢えず、遡行前とはかなり状況は変化した。
目覚めてからの俺の行動は、変えられる所は意識して全て変えた。
着る服、午前の行動、俺からの婚約破棄要請。
パーティーへの出席は免れなかったが、着用する衣装は最初に通達があった通り、殿下と揃いの衣装を着る事になった。殿下に皇宮に連れて行かれた事によって、だ。
そして殿下の俺に対する態度が変化した。明らかに。
前には会わなかった人物にも会った。
それにより、知らなかった真実の一端を知る事にもなった。
殿下の、俺に対する、気持ちを知ってしまった…。
だがここで、1つの疑問が生じる。
今日聞いた通り、そんなにも俺を思っていたのなら、何故殿下は婚約から破棄迄の5年、俺に対してあんなに突き放した態度だったんだろうか…?
そうなる原因が、何かあった?
今夜のあの様子から見ても、嘘だったとは思いにくい。
先刻の別れ際だって、何時もの様子からは想像出来ない程に切なげな顔をして…。
(本人の事は本人に直接、聞いてみるしかないか…。)
目を閉じて更に思考する。
結局、婚約破棄は流れたままになっているのだ。
予定ではもう間もなく、俺はあの魔窟とも呼ぶべき学園に入学しなければならない。
学園は全寮制だ。
状況が多少変化したとは言え、入学したら長期休暇の帰省を別にすれば4年間はあの中に入ったままだ。
そして、彼処には俺を殺した奴がいる。
状況が変わったとはいえ、そいつが俺に殺意を持った理由がわからない以上、今回も同じようにならないとも限らない。
(参ったな…どうしよう。 いっそ入学を取り止めるか?)
学問を積むだけなら、他にも学校はある。貴族が行くような所も、無くはない。単に貴族社会の中では彼処が最もスタンダードとされているというだけだ。
将来を見据えて様々な貴族の子弟達と交流を図り、社会性を身につける為には一番良い場所というだけ…。
(でも…父上達は、納得しないだろうなあ…。)
親や兄を説得するのが一番骨が折れそうだ。
俺は気が重くなった。
自力で変えられる状況には限界がある。
今日1日だけで言えば劇的に思えるこの変化も、この先の未来にどれほどの影響があるのかは未知数だ。
(……協力、させるか…。)
俺の、悲惨な状況を作り出した本人に。
車は間も無く家に到着する。
取り敢えず、着いたら風呂に入って、ゆっくり寝よう。
そして起きたらクリアになった頭で、もう一度考えを整理しよう。
夜中の考えって、大抵ロクな事にはならないからな。
俺は思考を停止して、流れ行く夜の光を眺める。
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