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…ナニソレkwsk。

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「雪!!」


クソ殿下に見つかった。
助かったような、そうでもないような…。


「何をしてたんだ。」


早足でつかつか寄って来て俺とアンリ大公殿下を引き剥がし、ずいっと間に割って入るクソ殿下。

…殿下殿下でややこしいな…。

「やあ、ラディス殿下。あちらはもう良いのかい?」

大公殿下がにこやかに仰るのに、クソ殿下は、ギッとそれを睨みつけて、

「お気遣い無く。
叔父上こそ、人の婚約者に接近し過ぎるのはよろしくないと思いますが。」

その言葉に大公殿下は、へぇ、と意外そうにクソ殿下と俺を交互に眺める。

「様子が変わったと感じたのは気の所為じゃなかったんですね。」

大公殿下はそれ迄の人の良さそうな笑顔から、何処と無く意地の悪そうなニヤリ顔になり、それを見た俺は背筋が寒くなりクソ殿下は チッ、と舌打ちをした。
ひ、品が悪いゾ…。

しかしそんな事は全く気にならないらしく、大公殿下は更に突っ込んで来る。

「何時の間に君らそんなに親密になったんです?そんな風にされると、」


ーー皇太子殿下が婚約者殿に心底惚れているようにしか、見えないぞ…ーー


それを聞いて、俺を庇うように立っていたクソ殿下の肩が一瞬ビクリと震えた。
だよな。そりゃ心外だよな。相手が俺じゃあなあ…。と、少しクソに同情してしまう。

ところが。


「婚約者に惚れていて、何か不都合がございますかね?」

一瞬の沈黙の後、クソ殿下が低い声ではっきりと大公殿下に向かって言った。         なんて?       

俺もビックリしたが大公殿下もビックリしてる。
しかしクソ殿下は更に爆弾を投下する。

「俺が雪に惚れているのは今に始まった事ではないでしょう。
でなければわざわざ他の婚約話があった所に横槍なんか入れてませんよ。」



………………なんて?


いや、今ちょっと聞き捨てならない事が聞こえなかった?


「まあ、そうだよねえ。伯爵家の可愛らしい御令嬢を泣かせて迄、手に入れた愛しの婚約者殿だもんなあ。」


大公殿下の言葉に、クソ殿下はぐっ、と詰まった。

大公殿下の口調、完全にくだけて、甥を揶揄う叔父のものになってます。
いるよな、こういう大人。
やんごとなき御一族であらせられても、こーゆうの変わんないんだ。
ちょっと親しみ感じるわ。


……いや、そうじゃねえ。


俺は心ならずも震える唇で事の真偽を問うた。勿論、クソ殿下に対して。

「…伯爵家の、御令嬢との…って、佐陀川伯爵家の櫻子嬢ですよね…?」

「そうそう、佐陀川とか宇田川とかそんな感じの名前だったよね。」

「ラディス様にお伺いしております。暫しお静かに願えますか。」

「…はい。」

子供に質問すると横から代弁してくる親のよう、というより、明らかに面白がっているだけの大公殿下には少し黙っていただいて。


「ラディス様。」

俺はクソ殿下の背中から前にまわる。

真っ直ぐ見上げると、クソ殿下は此方見ているようでいて、視線が逃げている。

「ラディス様。」

もう一度、ゆっくり呼びかけると、唇殿下はおずおずと、やっと目線を合わせてきた。
合わせてくれたは良いが、みるみる顔色が悪くなっていく。

「その件につきまして、もう少し、詳しく、お聞かせいただけますか?」

大事な事なので、ゆっくり区切りながらお願いする。

多分、今の俺、瞳孔開いてる。



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