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オソロで絶望。
しおりを挟む……くっそ…。
昼間のアレから数時間後、
俺はあのまま殿下に拉致られ、皇宮に逆戻りして連れてこられ、用意されていた衣装を着せられ、そのまま誕生日パーティーに強引に出席させられた。
クソ殿下様の20歳のお誕生日であらせられる故、婚約者とはコーディネートされた衣装で、というのは遡行前にも通達は来ていた。
だがその時は衣装が家に届けられる事は無かった。当日ギリギリ迄待っても、届かなかった。
だから首を捻りながらも仕方なく俺は、いつも通りの微妙な派手衣装で出席したのだ。
そして散々な目に遭って帰る羽目になったのだが。
その衣装を、今回は着ている。
それだけでも、確かに変化は起きている、のだが…。
(…こんな感じの衣装だったのか。
しかし何故、ウチに届かなかったんだ、コレ?)
生地は押さえた上品な光沢のあるネイビーブルー。
形はあくまでオーセンティック。
襟の辺りに、艶のある銀糸と黒糸で細かい刺繍が施されていて、光が当たると美しく煌めき映える。
殿下がそれを黒地で仕上げたもの。刺繍は金糸と黒糸。
完全にペアである…。
「まあ、良くお似合い…。白い肌と黒髪が映えてお美しいですわ。」
衣装を担当したデザイナーが俺に対して、生まれてこのかた聞いた事もないような褒め言葉を放って来たぞ。
プロフェッショナルだな。
「御髪を上げられると、凛々しくおなりあそばされますね。」
「…アリガト…。」
そろそろむず痒くなって来ちゃった…。
殿下は、とキョロキョロすると一足先に支度を終えていたらしく、部屋の壁際に置かれた長椅子に座って此方を眺めている。
流石のイケメン、眩い金髪が黒い衣装に映えていらっしゃいますね。
あと、あんま見ないで下さいます?
衣装の中身の素材の落差がしんどいんで。
出来る事なら並びたくねえ~。
はぁ、と息を吐いて解れてきた髪を指で掻き上げると、生唾を飲み込む音がした。
思わずクソ殿下を見る。
「……。」
「…すまん。」
やっぱアンタかよ…。
小綺麗にしてりゃ俺でも良いのか。
もう何でもアリなのか。
「……綺麗だな。」
何故か照れたように言いながら赤くなるクソ殿下。
え、何、こわ…。
「…恐縮です…。」
頑張って微笑もうかと思ったけど、引き攣ってしまう。
「惚れ直した…。」
「………?」
………は、ハアぁ?!
いやいやいや、アンタ俺に惚れてたっけ?!初耳なんだけど!!!
テキトーこいてんじゃねーぞコラ?!
(※これでも貴族の息子です。)
軽く硬直していると、殿下が頬と耳を少し赤らめて、固まってた俺の手を取って甲に唇を落として
「本当に綺麗だ…。」
とか、目を潤ませて言うからさ、
(あ、こりゃマジだな。)
って また違う絶望が生まれたんだが。
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