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何しにおいでに?
しおりを挟む本当は今日はもう会いたくはない。
せっかく夜も欠席にして未来の大幅変更を狙ってるのに。
…あ、でも。
ヤツが来たからって別にパーティーは行かなきゃ良いのか。
ん?既に此方から申し入れたから、既にあの場で破棄を叩き付けられる事は無いか…?
いや油断大敵。そんな事は何事も無かったように素知らぬ顔でやらかすかもしれない。
俺に恥をかかせて、オロオロする姿を見たいが為に。
思えばクソ殿下には、度々そういう所があった。
婚約しても全く自分からはすり寄っていかない俺が面白くなかったんだろうか。
とはいえ、入場時の義務的なエスコートだけして後は放置していたのは殿下だ。優しくない。
俺は仕方なく、一通り顔馴染みの貴族達の挨拶を受けた後は 隅の方で数少ない友人と話し込んでいた。
それを、自分は取り巻きに囲まれながら遠くから睨みつけていたよな。さながら陰湿な蛇の如く、じっとりと。
とはいえ、相手は皇族。
先刻元気に歩いてる姿を見せておいて、会いたくないと待ちぼうけさせる訳にも、追い返す訳にもいかない。
うんうん唸りながら考え込む俺を、若干不安げに見ているじいちゃん執事。
なんか気の毒になってきた。
「…殿下は何処に?」
「創一郎様の執務室にてお待ちです。」
「兄上の…。わかった。」
…仕方ない…。
何しに来たかは知らんが、取り敢えず行くか。
俺は皇宮から帰ってきたそのままの姿で、兄の執務室へ向かった。
「雪長でございます。」
ノックしながら声をかけると、ややあって
「入りなさい。」
と 兄の声が答えた。
執事が重い扉を開ける。
「皇太子殿下にはご機嫌麗しく…」
「さっきのは何だ。」
便宜上挨拶しただけだが食い気味に遮られるとちょっとイラッとするな…。
表情を崩さずカス殿下の方を見る。
「恋人同士のお時間をお邪魔してしまいました事は誠に申し訳ございませんでした。」
「…恋…、あれは、そんなものではない。そうでは無くだな…。」
「では、婚約を破棄していただく事をお願いに参りました事でしょうか。」
「…。」
兄がポーカーフェイスを保ちながらもどこかハラハラして見守っているのがわかる。
殿下は睨むように眉を寄せ、俺を見ている。
この人、俺を見る時いっつもこうなんだよな。実は嫌いなんだと思うわ。
マジで何で婚約しようと思ったのかわからん。
政略結婚に必要なら他にも適齢期の御令嬢はいる。
ウチの家門の血筋を入れたいって事なら、従姉妹だって数人、それなりの娘達がいる。 わざわざ俺じゃなくても。
「…何故、いきなりそんな勝手な事を?」
殿下は苛立ち混じりの声で質問してきた。
え、それってさ…
「しかし殿下は、元よりそのお心積りでいらしたのでは?」
少し苦笑しながら探るように問うてみると、明らかに顔色が変わった。
直後、それを誤魔化すように憮然とした表情になる。
もう見ちゃったから、無理だゾ…。
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