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「殿下、てめぇは絶対許さねえ。」2
しおりを挟む皇宮に着いた俺は顔パスでずんずん皇子の部屋へ向かった。
奴は最近は滅多に執務室には居ない。
色ボケ野郎故に、浮気に忙しいからだ。
そう、残念ながら俺の婚約者は皇国の第1皇子なのだ。
だからこそこれ迄、嫌々ながらも婚約関係に甘んじざるを得なかったのだ。
元々、皇子の幼い頃からのご学友のひとりであった兄…の、弟に過ぎなかった俺に、何故婚約者なんて白羽の矢が立ったのかが全くわからない。
皇子と顔を合わせたのなんてほんの数回だ。
え?罰ゲーム?
部屋の前には護衛がいたが、婚約者である俺の顔は知っている。
だが室内には俺以外の浮気相手がいる為、取り次ぐかどうかを迷っている様子。
「構うな。」
「は。」
俺は押し通った。
「誰だ。」
扉を開け入室すると、突然の闖入者に苛立つ声がした。
クソ皇子である。
真昼間であるにも関わらず、カーテンは全て締め切られ、そして臭い。
ナニをしていたのかが丸わかりだ。
答えないでいると、面倒臭そうにベッドから起き上がって此方を見た皇子。
この暗さでは見えまいな、と気を利かせて傍の照明を点ける俺。
「ご機嫌うるわしゅう。」
と挨拶をすると、不機嫌そうに眉を寄せていた表情がみるみる変わり、目を丸くしている。
「えっ、お前…」
「殿下、お話がございます。」
クソ皇子の横には共寝していたのだろう、見覚えのある可愛い顔をした男が、突然点灯した照明に眩しげに目をしばしばさせている。
「いやおま…、雪…か?」
「左様です。」
何故か動揺しながらベッドから降り、此方へ向かって来ようとするクソ男を手で制する。
動きは止まったが、その目は俺を上から下まで観察するのに忙しい。
相変わらず気持ちの悪い奴だ。
手を出されかけては逃げ回って、の繰り返しだった、内定から破棄される迄の5年間のセクハラの数々を思い出す。
くそ…マジで無駄な年月…。
「婚約を、」
「え?」
「破棄させていただきたく。」
「…は?」
舐め回すような視線が止まり、静かに俺の目線に合わされる。
「恐れ多くも、婚約を 破棄させていただきたく。」
「……。」
異存は無い筈だ。
今夜、此奴は俺に同じ事を告げる気だったのだから。
だが、同じ事でも何方から動くかでその後の運命は違ってくる。
だからこそ、先手を打ったのだ。
現在進行形で浮気の現場を押さえたのだから、皇室侮辱罪を適用する訳にもいくまいよ。ざまぁだ。
言うだけ言ったので、俺は踵を返し部屋を出ようと歩き出したのだが、、、
「待て。」
後ろから声がかかり、ウンザリする。
そうだ、この際、もっと変えとくか。
「…今夜のパーティーは欠席致します。」
「待てと言っている。」
「…何でございましょうか。」
振り返らないままで問うと、
「…俺は認めないぞ。」
と来た。アホですか、アンタ。
「……お傍に侍られている方に、お譲り致しますよ。」
「…」
分が悪いのは理解しているらしく、クソが黙った。
「では。」
今度は声も追っては来なかった。
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