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20 婚約式の日取り、決まる
しおりを挟む俺が改めての了承をした事により、婚約式の日取りが一ヶ月後と決められた。
はっきり言って早い。エリス嬢との婚約破棄から2ヶ月足らずで新たな婚約を結ぶ事になるのだから。
まあ、エリス嬢と違って一応はきちんとケリはつけてからの事なので、早かろうが問題は無いだろうが。
俺が気を揉んでいた様々な問題も、サイラス的には取るに足らないレベルの事らしいので、残されたのは今やサイラスの巨根問題だけである。
そう、巨根。
サイラスは俺としっかりガッツリ性交したいらしいので、受け入れ先である俺の尻穴を何とか慣らして拡張していくしかないのだろうが、本当にそれは可能なのだろうか。あんなの中に挿入れられたら俺の臓腑は無事ではいられないのではないだろうか。
これまでの人生、たいていの事は成せば成る精神で生きてきた俺だが、流石にそこまで自分の可能性は信じられない。不安だ。
いや待てよ…それなりに丈夫で身長のある男の俺でそうなのだから、小柄で華奢な令嬢達ならひとたまりもないのでは?
通常、婚姻を結ぶという事は、子作りの義務が生じるという事。特に王侯貴族の間ではそうだ。他国よりだいぶ緩い我が国でさえ、男性同士の特例的(政治的、或いは単純に恋愛)な結婚を除き、その義務は免除される事は無い。であるから、夫婦になった男女はその義務を果たす為、性交しない訳にはいかないのだ。公爵家の後継であるサイラスだって、本来ならエリス嬢と婚約を破棄してもまた別のご令嬢と縁組を組まれて結婚し、子を作る為に夫婦のイトナミをする事になったんだろうが……通常、貴族の令嬢は貞淑を守り、婚姻まで処女である事が多く、(エリス嬢は特殊な例だった)そんな令嬢達があの巨根を受け入れて無事で済むとは思えない。
そう考えると、俺はこの身をもっていたいけな女性を一人救ったのでは…?
……なんて発想の転換を試みて自分を慰めようとするが、失敗。
やはり不安なものは不安なのである。
そんな俺の胸中を知ってか知らずか、サイラスは上機嫌だった。
「無理せずゆっくり慣らしていこう。何、これからずっと共に生きるんだ。焦らずとも時間はあるさ」
東ネール邸軟禁生活一週間目。
今夜もサイラスは当たり前のように俺の部屋のベッドに潜り込んで来た。来るには来るのだが、初日のような激しく求める感は無く、何と言うか…お互いに手や口で慰め合う感じの事をするにとどまっている。どうやらサイラスの逸物に視覚と触覚から慣れさせようとしているようだ。何なら、抱き込まれて寝るだけの夜もある。初見で俺に失神された事を結構気にしている様子だ。
『初めて見たから驚いただけだし、そんなに気にしなくて良いぞ』
と言ってみたのだが、サイラスは神妙な顔をして首を振るばかり。
『いや、純情なアルに突然こんな巨大なモノを見せてしまった私に配慮が足りなかったんだ。徐々に慣れていこうな』
俺の肩に手を置いて慈愛の目でそう言うサイラスだが、俺は別にそんなに純情じゃない。確かに色事には縁遠くて奥手だったが、お前だって似たようなものだと白状してたじゃないか。高位貴族だからウチと違って房事の指南役みたいな人物はいるようだから性的な事には俺より知識があるのはわかる。だが、実戦を拒否してるってなら同じ童貞だろ。
…とまあ、心の中ではそう突っ込んでいるのだが、そう思われてるからこそ、この超スローペースで進める事にしてくれたんだろうとわかっているので余計事は言わない。地獄に到達するのは出来るだけ先延ばしが良い。サイラスの巨根の全部がこの体内に収まった時が俺の命日になるかもしれないしな。(諦)
そんな訳で、俺は毎晩サイラスの巨砲のようなペニスに慣れるべく、撫でて扱いて舐めたりしゃぶったりしながら頑張っている。
勿論それだけではなく、昼間は一緒に勉強をしたり、ゆっくり敷地内デート(散歩や乗馬)をしたりと、思っていたより充実した軟禁生活を送っている。それにしても、朝起きてから眠りにつくまでずっと誰かとベッタリ一緒に過ごすなんて初めてだ。
そうして、そんな濃密過ぎる日々を暫く過ごしていると、俺の気持ちにも不思議と変化が出てきた。
何せ、家族にさえこんなにも四六時中愛情を示された事なんて無かった。貧乏貴族家の長男以下の男子なぞ、親にしてもそう手をかけられるものではない。いや、愛されなかったとは思わないが、跡取りである長子の兄と比べると教育にしろ何にしろ手薄にされてしまった感は否めない。そこは割り切っているので別に恨んでもいない。寧ろ我が家の経済状況で、次男の俺を冷飯食いや単なる労働力と扱わず、貴族の息子としての教養を身につけるべく学園に通う事を許してくれ応援してくれた事に感謝している。…まあ、あの父上の事だから、教養を身につけさせた方が箔がついて、何処ぞの令嬢に婿に出すにも有利だと経済的しただけかもしれんがな?
いや、話が逸れた。
つまり何が言いたいのかと言うとだ。
俺のこの先の人生で、これだけ人に愛される事なんてあるだろうか?サイラス以上に愛してくれる人が、現れるだろうか?という事だ。
前にもチラッと考えた事はあるが、此処に来てからは特にそう思う。
縁談の持ち上がっていた令嬢との話はとうに立ち消えになったと父からの手紙にはあった。だが、例え別のご令嬢に縁あって婿入りしたとしても、平凡な俺をそれほど愛してくれるかどうか。そして、実は結婚は生存の為の契約だと考えていた俺の方も、愛せるかどうか自信は無い。
それを思えば、俺の方でも既に深い友愛を育み済みで、向こうも暑苦しいくらいの愛情を注いでくれているとわかるサイラスとの方が、幸せな人生を掴み取れる気がしてきてしまうのは仕方ない事だ。
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