トライアングルの真ん中で

Q.➽

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11 申告する俺 (※微R18描写あり)

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「駄目か。やっぱり許せないのか、俺の事が…。
そうだよな…あんな身勝手な事、許される訳がないよな…。」

そう言いながらまたしてもゆっくり俯いていく湯木。
ぱさり、と灰色の髪が揺れた。
あっ、ヤバい。湯木の目から光が…光が失われてしまう!!
あの時と似て非なる感じで闇堕ちの気配を感じる。

危険な匂いを察知した俺は素早く否定した。

「いや、いや今のは言葉のあやだ。
全然、大丈夫。それだけ好きだでいてくれたって事だもんな。許した許した。」

「……ほんとに?」

灰色の前髪の隙間からじっと上目遣いで俺を見詰める湯木。湯木の目は、カラコン入れてる訳でもないのに薄い茶と灰が混ざったような、不思議な色合いの瞳をしている。それに合わせてか、髪色も灰色にする事が多かった。
それがまたイケメンに輪をかけるんだよな。ずっと見てられる。俺なんかは何の変哲もない普通の黒茶だから正直羨ましい。

「ほんとほんと。」

これ以上俺の所為でどうこうなられるのが嫌ってのもある。あの苦しさと恐怖は、湯木の気持ちを知ったからって消えるものではないし、またあんな風になられるのは困る。
でも、許せないかと言われたら、不思議な事にそれ程許せない訳ではない。 
只、もうあんなのは嫌だ、ってだけ。

ずっと俺の知ってる優しくてカッコいい湯木でいてよ、という気持ちでニコッと笑ったら、湯木もホッとしたように笑った。

「じゃあ、つき合ってくれる?」

「……じゃあとは…。」

「俺、充だけをずっと一生大事にする。看取る。」

「……何で俺が先に召される前提なの?」

ジリジリと心理的距離を詰めてくる湯木。そしてそれを避けられない俺。
攻防戦の結果はこの時点で既に見えていた。

不意にトンッ、と肩を押された。

「……は?」

一瞬の内に、俺は湯木にベッドに押し倒されてマウントを取られていた。
顔の両側には湯木の両腕、両脚の間に湯木の片膝。

「なあ、他の奴らは良くて何で俺には躊躇うの?
許してくれるっつったじゃん。なら条件は他の奴らと同じじゃん。何時もなら告られたらつき合ってやってたのに何で?結局俺が嫌いなの?許してなんかくれてなくね?」

ブツブツと早口で言いながら見下ろしてくる湯木の目は虚無に囚われかけているように見えて、俺は背筋が寒くなった。
こ、怖い…メンヘラ迄装備してたの、湯木。
また、またあの湯木は嫌だ。

「許してるしつき合う!」

そう言葉が口をついて出てしまったのは、防衛本能も大いにあるが、湯木の事を嫌いなんだろうと言われた事に対する反射もあったと思う。嫌いな訳ないだろう、お前みたいな良い男を。
俺はキリッと真摯な眼差しで湯木を見上げたつもりだったが、何せ押し倒されているからイマイチ格好がつかない。
だが、俺を見下ろす湯木の目はキラキラした光を取り戻していた。

「マジ?ほんとに?後からやっぱりナシって言わない?言わせないけど。」

湯木がそう言いながら俺に覆いかぶさってきて、鼻と鼻がくっつく程の距離で目を見詰められたら、もう覆せる訳がなかった。
湯木の吐息が唇にかかる。

「あー…うん。大丈夫。でもまた3ヶ月で別れたら笑えないな。」

湯木の顔を直視出来なくて、目を逸らしながらそんな事を言ってしまう可愛げのない俺。つき合う前から不穏な事を言ってしまった、と湯木に視線を戻すと、何故だか湯木はニヤッと笑った。そして、

「それは200%心配無いよ。」

と言って、俺の呼吸を奪うような、熱烈で激しいキスを仕掛けてきた。
湯木の唇ってこんなに熱いんだ…。
さっき迄親友だった男に舌と唾液を吸われて、気持ち良すぎて腰が抜けてしまいそうな俺。下半身が反応してしまっているのは、男なら仕方ない生理現象だ。
だがそれに目敏く気づいた湯木は、右手で俺の盛り上がった股間を撫で始めた。
童貞には刺激が強過ぎる。下着の中で暴発したらどうしよう。


「……ん、んんっ!」

口の中で湯木の舌が暴れ回っているからくぐもった声しか出せない。
くちゅくちゅという卑猥な水音が、まさか自分の口の中から出ている音だなんて。恥ずか死にそうだ。
だってだって、歴代彼女達とのキスなんて、唇が触れる程度のものしかしてなかった。彼女達が焦れていたのはわかってたけど、いい歳をしてキス以上の経験が無かった俺には、彼女達の期待に応えられる自信が無かった。3ヶ月なんて短期スパンで振られてきたのは、きっとその辺にも原因がある。俺では物足りなくて他に余所見したのだろう。
だが、そういう訳で実は俺は、未だに童貞なのだ。
悪戯に交際した人数だけは更新したが、実情なんてこんな情けなさである。
 
果たしてこんな俺が、恋人は作らなくてもそれなりに遊んできたモテ男湯木を満足なんかさせられるのだろうか?

「んん!」

ぷはっ、と湯木の胸を押して何とか唇を離した俺は、急いで息を吸い、唾液塗れのままの唇を開いた。

「俺っ、未だ未経験なんだけど、いいっ?!」

キョトンと目を見開いていた湯木は、数秒経たぬ間に蕩けるような笑顔になって、

「望むところ。」

と自分の唇を舐め上げながら、俺を見据えて言った。

そしてその時俺達は、此処が何処だったのかという事を、すっかり忘れ去っていたのだった…。









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