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㊴ ※ややR18描写あり
しおりを挟む祈里は柔らかな羽毛布団の上に押し倒された。優しく、しかし有無を言わさぬ強引さで服を剥ぎ取っていく麗都に戸惑って、ほんの少し不安そうな目をしながらも、結局は従順に肌を晒していく祈里。こまかい震えは寒いからではない。恥ずかしいからだ。夜毎何人もの男達の前で裸になって来たのだから、とうに慣れた行為の筈。なのに麗都に見られるのは、どういう訳か中学の頃に初めて他人に制服を剥かれて犯された時よりも恥ずかしい。
「…ふっ、」
あっという間に下着を残し、すっかり覆う布の無くなった素足を足首から内腿までをフェザータッチで撫であげられ、祈里は息を詰めた。ゾクゾクゾクッと脚から尾骶骨、背骨を駆け上がる何か。今まで皆もっと無遠慮で、こんな触れ方はされた事が無かったから、変に強く触られるよりも刺激的だ。
快感に目を閉じてしまい、睫毛を震わせて耐える祈里の耳に、また麗都のウィスパーヴォイスが響く。
「さっきから思ってたけど、ホントに感じ易いよね。こんなんでよく、仕事出来てたね」
「っ…」
貴方の触れ方が特別過ぎるのだ、と言おうとするのに、声までが震えてしまって上手く喋れない。その間にも、麗都の長い指は祈里の腕や脇腹、胸を静かに滑り、祈里は細い呻き声をあげた。悪寒に似て非なるこの快感。
「ひっ、あん…っ」
「…そんなに可愛い声出ちゃうんだ。いいね、そそられる」
「そんな、こと…んっ」
無抵抗でされるがままに体を預ける祈里の肌を、手で唇で愛撫していく麗都。祈里は、麗都の前では今までの男性経験が通用せず、まるでバージンのようになってしまうのが、自分でも不思議で仕方なかった。でも、不快ではない。熱を帯びた麗都の眼差しも、ひたすらに優しい手つきも、不快ではない。寧ろ嬉しい。麗都の全てに、自分に対する優しさと労りを感じられるから。薄っぺらい口先やポーズではなく、真に祈里ただひとりに向けられているとわかる、重くて熱くて真摯な優しさを。
それが余計に自分の感度を上げているのを、祈里は自覚していない。
いつもと同じようで、全く違う行為。単なる性欲処理ではないとわかる、愛おしまれる感覚。
丁寧な愛撫で時間をかけて、指で舌であの部分を慣らされて、解されて、感じさせられて。待ちきれなくなって疼くソコに、前からゆっくりと麗都のペニスが挿入って来た時、祈里は涙が出てしまった。セックスがこんなにも幸せを感じられるものなのだと、祈里は今の今まで知らなかった。幼い頃に会っているのだと言われても、体感的には今日初めて客として話した男。好きかどうかもわからない。そんな相手が、こんなに多幸感に満ちたセックスを齎してくれるなんて。仮にも恋人で、恋愛感情を伴っていると思っていた天馬とのセックスですら、祈里が我を忘れた事は無かった。なのに直腸の奥、腹の中に麗都のペニスの息づいているのを感じる度、祈里のペニスも連動して、先端から涙を流しながら震えた。そして、それを麗都の指が優しく拭い、芸術品のように形良い唇に運ぶ。麗都の指を汚した祈里の露は彼の赤い舌に味見をするように舐め取られる。そんな淫靡な場面を見せつけながら、麗都は祈里を優しく容赦無く穿つ。重厚な造りのキングサイズのベッドの上、シーツの海を盛大に乱して、2人はキスをしながら汗だくで繋がり続けた。あれだけ他人の唾液を忌避していた祈里が、麗都のディープキスを受け続ける事に全く抵抗を無くしてしまっている。それどころか、もっともっとと自分から麗都の舌を強請っていた。祈里は麗都によって唇同士の快楽も開発されてしまったらしい。
「んっ、んむっ…」
唇の結合部からはくちゅくちゅ、下の結合部からはぐちゅぐちゅと、濡れた何かを掻き混ぜるような淫らな音がして、それがまた耳からの刺激になる。それを聴きながら、麗都は打ち付ける腰の動きを速めていく。そして…。
「ひっあっ、あああぁあ!」
「く…っ」
祈里は麗都の下で、彼の熱い迸りと脈動を中で感じながら絶頂を迎えた。麗都の手の中に握り込まれたペニスから、白い白濁を溢れさせて。
そうしてくたりと脱力し、麗都に抱きしめられた祈里が口にしたのは、
「もっと早く僕を見つけてほしかったな…麗都さんが初めてなら良かった」
という、ほんの少しだけ切ない言葉だった。
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