12 / 20
今年のイブは一味違う
しおりを挟む「ちょっとシャワーだけしてくるわ。」
「りょー。」
バイトだったんだもんね。お疲れ様。ゆっくり汗を流しておいでよー。
翔ちゃんがシャワーに行ってる間にテレビをつける。
でも内心はテレビどころじゃないんだよね。
だってこの部屋、翔ちゃんの匂いでいっぱい…幸せ…。
僕と翔ちゃんのコートをハンガーに掛けて、お泊まり用に置いてるスウェットに着替えてから翔ちゃんのベッドにダイブ。
布団!枕!ラッキー、今日はカバー替えてない日!!アタリだ~!!
くんくん嗅いで翔ちゃんの匂いを吸い込む。はぁ…いい匂い…。
暫くラリってたら、ガチャ とドアが開いて翔ちゃんが髪をタオルで拭きながら戻って来てて、僕の行為を見てドン引きしていた。
「……早かったね…。もっとゆっくりしてきたら良かったのに…。」
「…早かったら悪いのかよ…。」
いや、嬉しいです。
「お前は、ほんと…さあ。
本体より抜け殻みたいなモンの方が好きみたいだな。」
呆れたような、不憫がられているような目で見られる。
ぎゃふん。(古)
でもそれは聞き捨てならない誤解だ。
「違うよ!!本体を嗅げないからこっちで満たしてんの!!」
理由を述べると翔ちゃんが、怪訝そうな顔をする。
「何で嗅げないんだよ?」
「だって!!」
「俺、嫌がった事、あった?」
…嫌がった事…?
…そう言われてみたら、そんなにないね…。
呆れられはするけどね。
「はぁ…。」
翔ちゃんは壁に掛けてあった自分のコートのポケットから片手サイズの箱を取り出して、ベッドに転がってる僕の横にどかっと腰を下ろした。
「マナ、お手。」
「え…ワン。」
条件反射で右手を出してしまう。
しかし首を捻る翔ちゃん。かわい。
「…うーん…どっちだろ。
おかわり。」
「…ワン。」
よくわからないまま左手を出す。
翔ちゃんは箱を開けて何かを取り出すと、僕の左手首に通した。
「えっ」
「こないだ見てたじゃん。一緒に映画行った時に。」
それは、確かに見覚えのあるバングルだった。
綺麗な透かし模様と青い石の埋め込まれたシルバーのバングル。
好みにドンピシャで買おうかな、と迷ったけど、映画の予約した時間がそろそろだからもう少し考えてから来よう、って それきり行く機会がなくて。
「えー…翔ちゃーん…」
毎年、クリスマスプレゼントはお互いそんなに高価なものは交換しないってのが暗黙の了解だったのに、こんなの不意打ちじゃん。
嬉しくて涙出てきた。
じいっと見てると今度は翔ちゃんが同じデザインの黒っぽいのを自分の左手首にはめて、
「見てたら俺も欲しくなってさ。」
と、ニヤッと笑った。
ずっきゅーん!!!
お、男前すぎィ!!!
惚れ直してまうやろー!!!
「お、お揃い…!!」
「…まあ、そうなっちまうな。」
「あ、ありがとう…ありがとう翔ちゃん…っ」
嬉し過ぎて涙と鼻水が一緒に…。
「うわ汚ねっ」
ティッシュを投げて寄越す翔ちゃん。…優しい。
「…え、まさか、それでバイトしてたの?」
「…まあ。」
「し、翔ちゃ~~ん!!!」
抱きついて良いよね!!!
はっ、そうだ…
グズグズに泣きながら僕はベッドを降りる。
コートコート…。あった。
翔ちゃんのより小さい箱を持ち、翔ちゃんの横に戻る。
「し”ょ”う”ち”ゃ”ん”…」
「…まずは涙と鼻水を拭け。」
言われて、いそいそとティッシュで鼻をかむ。
翔ちゃんがドン引きしながらそれを見ている。何この状況。
仕切り直しだ。
「翔ちゃん、僕と結婚して下さい。」
箱の中は指輪。
学生の間はバイト禁止の我が家だが、翔ちゃんへのプロポーズの為に、お小遣いを貰えるようになった小一からその一部とお年玉をコツコツ貯めていたのだ。
だからと言って、バカ高いものは、学生の内は受け取って貰えないと思ったから、それなりのお値段の指輪だけど。
だからこれは、結婚指輪じゃなくて、言わば婚約指輪だな。
見て僕の誠意。
ところが箱の中の、めっちゃシンプルな指輪を見て、翔ちゃんは微妙な表情で言い放った。
「…つか、その前に俺、お前に告白さえされてねんだけど。」
……………ハッ!!
43
お気に入りに追加
543
あなたにおすすめの小説
初恋はおしまい
佐治尚実
BL
高校生の朝好にとって卒業までの二年間は奇跡に満ちていた。クラスで目立たず、一人の時間を大事にする日々。そんな朝好に、クラスの頂点に君臨する修司の視線が絡んでくるのが不思議でならなかった。人気者の彼の一方的で執拗な気配に朝好の気持ちは高ぶり、ついには卒業式の日に修司を呼び止める所までいく。それも修司に無神経な言葉をぶつけられてショックを受ける。彼への思いを知った朝好は成人式で修司との再会を望んだ。
高校時代の初恋をこじらせた二人が、成人式で再会する話です。珍しく攻めがツンツンしています。
※以前投稿した『初恋はおしまい』を大幅に加筆修正して再投稿しました。現在非公開の『初恋はおしまい』にお気に入りや♡をくださりありがとうございました!こちらを読んでいただけると幸いです。
今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。
愛して、許して、一緒に堕ちて・オメガバース【完結】
華周夏
BL
Ωの身体を持ち、αの力も持っている『奏』生まれた時から研究所が彼の世界。ある『特殊な』能力を持つ。
そんな彼は何より賢く、美しかった。
財閥の御曹司とは名ばかりで、その特異な身体のため『ドクター』の庇護のもと、実験体のように扱われていた。
ある『仕事』のために寮つきの高校に編入する奏を待ち受けるものは?
処女姫Ωと帝の初夜
切羽未依
BL
αの皇子を産むため、男なのに姫として後宮に入れられたΩのぼく。
七年も経っても、未だに帝に番われず、未通(おとめ=処女)のままだった。
幼なじみでもある帝と仲は良かったが、Ωとして求められないことに、ぼくは不安と悲しみを抱えていた・・・
『紫式部~実は、歴史上の人物がΩだった件』の紫式部の就職先・藤原彰子も実はΩで、男の子だった!?というオメガバースな歴史ファンタジー。
歴史や古文が苦手でも、だいじょうぶ。ふりがな満載・カッコ書きの説明大量。
フツーの日本語で書いています。
高塚くんと森くん
うりぼう
BL
顔だけが取り柄の高塚くん。
ごくごく普通の高校生の森くん。
「好きなんだ、オレと付き合って」
「え、嫌だ」
そこから始まる二人のお話。
基本一話完結。
本編完結済み
随時小話更新予定です。
※BL
※受け大好き
※攻め半分変態
※R15というほどR15表現はありません
他サイト様にも投稿しています
βの僕、激強αのせいでΩにされた話
ずー子
BL
オメガバース。BL。主人公君はβ→Ω。
αに言い寄られるがβなので相手にせず、Ωの優等生に片想いをしている。それがαにバレて色々あってΩになっちゃう話です。
β(Ω)視点→α視点。アレな感じですが、ちゃんとラブラブエッチです。
他の小説サイトにも登録してます。
【完結】おじさんはΩである
藤吉とわ
BL
隠れ執着嫉妬激強年下α×αと誤診を受けていたおじさんΩ
門村雄大(かどむらゆうだい)34歳。とある朝母親から「小学生の頃バース検査をした病院があんたと連絡を取りたがっている」という電話を貰う。
何の用件か分からぬまま、折り返しの連絡をしてみると「至急お知らせしたいことがある。自宅に伺いたい」と言われ、招いたところ三人の男がやってきて部屋の中で突然土下座をされた。よくよく話を聞けば23年前のバース検査で告知ミスをしていたと告げられる。
今更Ωと言われても――と戸惑うものの、αだと思い込んでいた期間も自分のバース性にしっくり来ていなかった雄大は悩みながらも正しいバース性を受け入れていく。
治療のため、まずはΩ性の発情期であるヒートを起こさなければならず、謝罪に来た三人の男の内の一人・研修医でαの戸賀井 圭(とがいけい)と同居を開始することにーー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる