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20 (三者面談 3 ※近親相姦表現あり)
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奏は戸惑っていた。
「なら質問の仕方を変えてみるね。
他の人達より、大事だなって思う人は誰かな?」
幾分態度を軟化させた梁瀬が、子供に語りかけるようにゆっくり問いかける。
「他の人より…?家族とか?」
「…まあ、今はそれでも良いよ。」
「家族の中ではちぃ兄さんが一番好きだよ。優しくて綺麗で、少し梁瀬に似てる。」
「え、僕に?」
梁瀬はびっくりして、脳内の木本家の家族構成を手繰り寄せた。
父、母、長男、次男、そして末の奏。
政治家の父の地盤を継ぐべく秘書として修行中の長男とは10歳以上離れており、既婚。8歳離れた次男は未婚だが、確かにこの次男が奏を特に猫可愛がりしていたと聞く。
しかし彼は仕事で数年前から国外にいるはずだ。
「そっか。なかなか会えないお兄さんなんだろ?寂しいね。」
そう言うと、奏は急にしょげて俯いた。
「寂しいよ。
父さんがちぃ兄さんを追い出したんだ。」
「?」
そんな話は聞いた事が無いが、家族間で起きた事を外部に伏せるのはよくある事だ。
「親子喧嘩でもしたのかな?」
あまりに奏が悲しげなので、恐る恐る鈴木が聞く。
「喧嘩…って言うか…、、俺とちぃ兄さんが遊んでるとこを見られて…。それで父さんとおお兄さんが怒って。」
「…それくらいで?」
「子供ができたらどうするんだ、って…。」
「?!?!」
鈴木と梁瀬は動揺した。
これは……。
「…ちぃ兄さんとは、何して遊んでたの?」
そう聞くと、奏はきょとんとして答えた。
「何って、セックスに決まってるじゃん。」
ーー…やっぱりか…。ーー
それはとんだ醜聞だ。
まさかの兄と弟の禁断の関係とは。
流石にそれが知れてしまえば、幾ら奏が希少Ωとはいえ、何処かに嫁がせるなんて事は難しくなるだろう。
そして決まってるじゃんという言い方にも引っかかる。
「…お兄さんとは、何時からセックスしてたの?」
「えーと…始めてヒートが来た時からだから、中等部の頃からだな。」
2人は絶句した。
という事は、奏の初めての相手は実の兄であり、その関係は2人の関係が発覚する迄数年継続していた事になる。
しかも、奏はその関係を自然に受け入れていたようだ。
事の大きさは、鈴木よりもαである梁瀬の方がより理解していた。
木本家の上の男子は2人共にαの筈だ。
次男は奏のラットに負けたのだろうか。
きょうだいのいない梁瀬には、上手く想像出来ないが、同じ家の中にいると例え兄弟でもΩの匂いに欲情してしまうものなんだろうか?
「俺、ちぃ兄さんが大好きでさ。小さい頃は、ちぃ兄さんのお嫁さんになるってよく言ってたんだって。
ちぃ兄さんも、絶対カナを番にするってしょっちゅう言ってた。」
…どうやらそれなりの下地があったようだ。
鈴木も梁瀬も、もう何と言っていいものか言葉が見つからなかった。
色々話を聞こうとは思ったが、まさかいきなりこんな地雷を踏み抜いてしまう事になるとは想像もしていなかった…。
しかし、なんという事か。
奏は、どうやら性に対するタブーをわかっていない。
越えてはならない一線があるという事を、理解出来ていない。
教えなければならない家族が、禁忌を犯しているのだから。
一応、引き離す措置を取る程度には、不味い事だとは思っているようだが、それを隠し梁瀬家に押し付けるつもりだったのも腹立たしい。
木本家の罪科は思いの外、重いなと梁瀬も鈴木も思った。
それにしても、数年継続した関係で、よく妊娠しなかったものだ。
ヒート時のセックスは妊娠率が高いというのに。
単に運が良いだけではないような気がする。
「そっか。そのお兄さんが、今でも一番好きな人?」
梁瀬はやっとの思いで言葉を紡いだ。
「うん。」
「会いたいと思ったりする?」
「会いたいよ。ずっと、会いたい。」
奏の大きな瞳が涙の膜を張り出した。
「父さんの意地悪で、俺とちぃ兄さんは会えない。
ちぃ兄さんがいないから、俺は代わりの奴らで我慢しなきゃなんない。
ちぃ兄さんがいてくれたら、ずっと俺は特別だって言ってくれたら、俺は寂しくならないのに。」
大粒の涙がその目から零れ落ちて、テーブルに水溜まりが出来ていく。
梁瀬はふと気づいた。
「お兄さん、いつ頃追い出されたの?」
「…高校に、上がる少し前…。」
「ああ…なるほど…。」
奏の男関係が一気に乱れ出した頃。
何時も何人もの男達を侍らせて、兄を奪われた喪失感をどうにか紛らわせていたのだろうか。
…確かに、近親は不味い。
不味いが、、、。
しかも未成年。
レイプでは無さそうとはいえ、ものの善し悪しも判断出来そうにない弟につけ込んだ、とされてもおかしくは無い…が…。
(その次男は奏の事を、今どう考えているんだろう?)
次男にとっては、遊びでは無かったとしたら。
奏も奏で、本人が気づいてないだけで、兄と引き離された事で精神のバランスを著しく崩したんだな、と、リアルタイムで見てきた梁瀬としては思うのだが。
梁瀬に微妙に固執していたのも、兄の面影を見ていたという部分も、あるのではないだろうか。
思いの外深かった奏の心の傷。
知らなかった事とはいえ、梁瀬は過去の自分の奏に対する態度を後悔した。
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