毒親育ちで余り物だった俺が、高校で出会った強面彼氏の唯一になった話 (浮気相手にされて〜スピンオフ)

Q.➽

文字の大きさ
上 下
5 / 16

5 会えない日々に募るもの (※微R18描写あり)

しおりを挟む

 それから間も無く夏休みに突入して、俺と西谷が毎日会う事は無くなった。
 俺は家の自室にひっそり篭って過ごす日々に突入した。中学の頃なら仲間と遊び回って帰らない日もあったりしたが、進学で殆どの連中とは離れてしまった。高校では友達と呼べる友達は出来てないから、同じ事はできない。ひっそりと存在を消して、買い出し以外は自室の中から殆ど出ずにやり過ごす。そんな夏休みは、途方も無く長かった。
 幸い、世話係が居なくなってしまった中学からは、父は俺の口座に毎月ある程度の金を振り込むようになっていた。食費やその他が賄えるようにと。
 流石にまだ未成年の息子の世話を放棄してるのは外聞が悪いと思ったのか、誰かに何か言われたのか。中学生なのだから金さえ与えておけば、自分で食事くらいはするし必要なものは揃えられるだろうと考えたのか。金で親の義務は果たしたつもりでいたのかもしれない。まあ、放置子としては、金すら与えられない家よりは格段に良い待遇だろうと思うから特に不満は無かった。食費を切り詰めれば、ある程度の物なら欲しい物も手に入るし、ゲームだって買える。
 そうして手に入れた娯楽アイテムで、一人ぼっちの長い時間を潰すのだ。

 でもそれも、夏休みに入って最初の数日で飽きてしまった。あと何十日も、こんな無為な時間をどうにかやり過ごさなければならないのかと思うと、うんざりした。去年の夏休みや冬休み、どう過ごしてたんだっけと記憶を手繰る。
 殆ど寝て過ごしていたんだったなと思い出し、またうんざりした。ネットで映画や動画を観たりして、でもそれだけでも疲れる。ゴロゴロしていても疲れる。
 家族が少ない時間帯を見計らって洗濯物を回しに行ったりして気分転換を図っても、気分は晴れなかった。
 でも去年迄と違うのは、そんな時間のふとした隙間に、西谷の事を思い出す事だ。スマホに連絡先は入ってる。でも、受験に専念する為に3年に上がって早々に部活を引退したと早川に聞いてしまった手前、勉強の邪魔になるのではと思い、何となく連絡出来なかった。
 それに西谷自身が、夏休みに入って1週間程は家の用事で忙しくなる、と言っていた。

(つまらないな…)

 ずっと一緒に昼を食べていたから、昼時になると腹が減るようになってしまった。毎日の重箱弁当の所為だ。そのお陰で少し肌艶も良くなったのだが、一度そういう事になれたら無くなった時にきつい。それは食事だけの事ではなく、あらゆる面で。
何度も与えられてしまうとそれが常態化してしまって、頭では期待するなとセーブを掛けていても体が勝手に期待してしまう以前の状態に戻るのが難しい。

 俺はベッドに寝転がりながらぼんやりとスマホを見つめていた。


 短いうたた寝から覚めると、スマホの画面には通知が1件。
休みに入って1週間、初めての西谷からの連絡だった。明日家に帰れるから、会って昼を一緒に食べないかというもので、一気に気分が上昇した。

(会える…!)

 胸にじわじわと溢れてくる喜び。初めてだ、誰かと会える事がこんなに嬉しいなんて思うのは。
 俺を見る西谷の切れ長の目が、嬉しそうに細められるさま。大きな手が優しく頭や頬を撫でる感触。
 そんな事を思い出して、胸が高鳴る。

 …ふと、熱くなっているのは胸だけじゃない事に気づいた。
最近、西谷の事を思う度に起こる現象。

 俺は股間の張りに手を伸ばした。熱い。引く程硬く、熱くなったのは、俺のペニスだった下着の中でずくずくと脈打って、少し指が振れただけで、またビクリと膨張が増す。

 最初に気づいた時は躊躇いがちだった。今では貪欲に指を絡ませて、西谷の指に触れられている事を思い浮かべながら自慰に耽るようになっている。

 西谷にされたい。あの長いふしくれだった指は、どんな風に俺に触れるのか。あの唇は、どんな風に俺を貪るのか。
 優しく?それとも、余裕を無くして少し乱暴に?

 想像しながら擦るペニスの亀頭からは、何時も直ぐに先走りの涙が滲む。

「あ、ああ…っ…にし、や…」

 濡れた先端を指先で撫でると、痺れが走った。それを皮切りにダラダラと溢れてくる、ぬるついた液体。握って、擦る。
空いた左手の指先で乳首に触れた。

「…っふ…、ん…っ」

 西谷、切ない。西谷、先輩...。


 俺は、アンタが好きなんだろうか?








しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

あなたと過ごした五年間~欠陥オメガと強すぎるアルファが出会ったら~

華抹茶
BL
子供の時の流行り病の高熱でオメガ性を失ったエリオット。だがその時に前世の記憶が蘇り、自分が異性愛者だったことを思い出す。オメガ性を失ったことを喜び、ベータとして生きていくことに。 もうすぐ学園を卒業するという時に、とある公爵家の嫡男の家庭教師を探しているという話を耳にする。その仕事が出来たらいいと面接に行くと、とんでもなく美しいアルファの子供がいた。 だがそのアルファの子供は、質素な別館で一人でひっそりと生活する孤独なアルファだった。その理由がこの子供のアルファ性が強すぎて誰も近寄れないからというのだ。 だがエリオットだけはそのフェロモンの影響を受けなかった。家庭教師の仕事も決まり、アルファの子供と接するうちに心に抱えた傷を知る。 子供はエリオットに心を開き、懐き、甘えてくれるようになった。だが子供が成長するにつれ少しずつ二人の関係に変化が訪れる。 アルファ性が強すぎて愛情を与えられなかった孤独なアルファ×オメガ性を失いベータと偽っていた欠陥オメガ ●オメガバースの話になります。かなり独自の設定を盛り込んでいます。 ●最終話まで執筆済み(全47話)。完結保障。毎日更新。 ●Rシーンには※つけてます。

元ベータ後天性オメガ

桜 晴樹
BL
懲りずにオメガバースです。 ベータだった主人公がある日を境にオメガになってしまう。 主人公(受) 17歳男子高校生。黒髪平凡顔。身長170cm。 ベータからオメガに。後天性の性(バース)転換。 藤宮春樹(ふじみやはるき) 友人兼ライバル(攻) 金髪イケメン身長182cm ベータを偽っているアルファ 名前決まりました(1月26日) 決まるまではナナシくん‥。 大上礼央(おおかみれお) 名前の由来、狼とライオン(レオ)から‥ ⭐︎コメント受付中 前作の"番なんて要らない"は、編集作業につき、更新停滞中です。 宜しければ其方も読んで頂ければ喜びます。

初心者オメガは執着アルファの腕のなか

深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。 オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。 オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。 穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。

孕めないオメガでもいいですか?

月夜野レオン
BL
病院で子供を孕めない体といきなり診断された俺は、どうして良いのか判らず大好きな幼馴染の前から消える選択をした。不完全なオメガはお前に相応しくないから…… オメガバース作品です。

完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました

美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!

【完結】幼馴染から離れたい。

June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。 βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。 番外編 伊賀崎朔視点もあります。 (12月:改正版) 読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭 1/27 1000❤️ありがとうございます😭 3/6 2000❤️ありがとうございます😭

白い部屋で愛を囁いて

氷魚彰人
BL
幼馴染でありお腹の子の父親であるαの雪路に「赤ちゃんができた」と告げるが、不機嫌に「誰の子だ」と問われ、ショックのあまりもう一人の幼馴染の名前を出し嘘を吐いた葵だったが……。 シリアスな内容です。Hはないのでお求めの方、すみません。 ※某BL小説投稿サイトのオメガバースコンテストにて入賞した作品です。

【完結】選ばれない僕の生きる道

谷絵 ちぐり
BL
三度、婚約解消された僕。 選ばれない僕が幸せを選ぶ話。 ※地名などは架空(と作者が思ってる)のものです ※設定は独自のものです

処理中です...