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24 高校二年、 宇城 三環 2
しおりを挟むこの世界中で、自分の学校の男性教師に恋をして成就した男子生徒ってどれくらいいるんだろうか。
片思いしている先生と、ひょんな事から急接近してしまったのは一昨日の晩の事だ。
まだまだ寒い時期なのに何故かヒラヒラした薄着で、先生は駅前で肉まんを食べていた。
いや、一瞬我が目を疑った。
今日の下校時に他の教科の先生に用があって職員室に寄った時は、先生はデスクでPCを使って仕事していた。その時も午前中と同じ、ワイシャツにネクタイで、椅子の背もたれには上着がかかってた。
だから駅前で見たのは他人の空似かと思ったんだけど、成人男性なのに細過ぎる首やサラサラの天然っぽい茶髪は、やっぱり先生だった。
一回帰って着替えたの?
いやでもわざわざそんなカッコに?それともどっかで着替えたの?それは良いとしても、上着は??
相変わらず謎多き人だ。
しかも、先生がおにぎりと黄色いブツ以外を口にしてる場面なんて初めてだから、俺はちょっと嬉しくなった。
よしよし、たんとお食べ…。
大人の男の人に可愛いなんて思ってるなんて、知られたらきっと嫌がるんだろうな。
俺はその時、絵画教室帰りに祖父母の家に行く予定でこっちの駅で降りてたんだけど、そう言えば前に話した時、先生の家もこの駅が最寄りだったなと思い切って声を掛けた。
そうしたら俺を見て、あっ…て顔をしたから、やっぱり先生だった訳だ。
でも、不思議だな。
確かに先生なんだけど、何時もと雰囲気が違って、話し方も何かこう…生命力が満ちてる感じ…。目に力があるというか。
何時もは…どう言ったら良いのかな。植物みたいに静かだ。見てるこっちが心配になるくらい。
だから、告白する連中も、何とかなりそうな気がしちゃうのかもな。
触れなば落ちん的な?
あたりも優しいから、ワンチャンあると思えるのは俺にもわかる。
でも、あくまで相手は教師だからなあ…。
俺だって先生の事は好きだけど、在学中に先生と気不味くなりそうな事はする気は無かった。
せめて、大学生になって、先生の生徒じゃなくなって、成人したら…。
そしたら、玉砕覚悟で気持ちを伝える。いや玉砕しても諦める気は無いからストーカーにでもなって、先生が俺と付き合わざるを得なくなるように外堀埋めていくかな…なんて物騒な事も考えてはいる。
だけど、少なくとも在学中はアクションを起こすつもりはなかったのに。
初めて学外で話す先生は、何時もと違って、口調も少し雑な気がした。
それでも声はやっぱり何時もの柔らかい澄んだ先生の声だから、ちょっとくらい雑でも可愛い。
買い食い現場を生徒の俺に見られてバツが悪いのか、まごまごしてるのも可愛い。
しかも、季節外れのピラピラした服は首元が大きく開いていて、くっきり浮いた鎖骨が見えている。
それは、夏でも襟を寛げる事無く、ジャージ姿になってもしっかり上迄ジッパーを上げている先生の、初めて見る貴重な露出だった。
許されるものなら画像に収めたかった…。
そんなあざと可愛い格好の美人を一人で帰す訳にはいかないので、俺は近所迄送ると申し出た。
こんな鎖骨を見せつけて歩いていたら、不埒な事を考える男がいてもおかしくはない。何せ春だからな。桜はとうに葉桜だけど浮かれた奴はまだまだいるからな。
それに送って住所を把握してしまえば、今後何かと…。
そんな不純な動機もあり、俺はこれ以上先生の肌を世に晒さない為に上着を脱いで先生の肩に掛け、有無を言わせず送ったのだった。
勿論、ナイトとしての役目を果たしつつ、アパートと階数も把握。
俺は返却された先生の温もりの残る上着にホクホクしながら祖父母宅へ向かったのだった。
しかし翌日、先生は病欠で休みだと、他の教師が出欠を取りにHRに現れ、俺は内心パニックに陥ったのだった。
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