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23 高校二年、宇城 三環 (現・宇城side)
しおりを挟む俺の好きな人は先生だ。
通ってる高校の、担任教師。そして、男。
どっからどう見ても、男。
でも綺麗。顔の造作が俺好み。
二年に上がって最初に見た時には凄く静かな人だなと思った。元々そうなのか、仕事用の顔なのかはわからない。
何時もワイシャツにネクタイ、スラックス。カーデは羽織ったり無かったり。
生徒達にも結構人気。
…まあ、男子校だから、それが嬉しいかは微妙。
でも告白されてたってのは何度か聞いた。
男子校つっても全寮制でもないんだし、一歩外に出たら女の子はいるのに何で男に走るんだろうな。
俺だって最初は、そう思ってた。
「宇城、あの さ…。
…ちょっと話さない?」
新しいクラスに少し馴染んできたある日、帰ろうとしたら先生に呼び止められた。
え、指導室とか?
俺、何かしたかなあ、と不思議に思って先生を見てたら、困ったように眉を下げた。
先生、そんな顔するんだ。何時も澄ましたような顔してるからわからなかったな。
そう思ってたら、先生は益々困ったように俺を見た。何か気の毒になって、黙って頷いた。そしたら何故か視聴覚室で話すことになったんだけど、妙な質問ばかりされて困った。
何か悩みはないかとか、仲の悪い生徒はいないかとか、今何か困ってないかとか。
どういう意味だろう、と首を捻って考えてみたけど、よくわからなかったから、俺の答えもイマイチ噛み合ってなかったんだろう。
その一週間後くらいに、またお誘いがかかって、今度は一緒に昼食を食べた。
先生もあまり口数が多い方じゃないみたいだし、俺も馴染んだ人相手じゃないとあまり喋らないから2人とも無言の時間が多くて、黙々と食事だけが進んだ。
結局、その日もろくに話さないまま解散したんだけど、それから俺と先生は、顔を合わせるとちょくちょく話すようになった。
俺はかなりの人見知りだけど、別に寡黙な訳じゃない。両親が亡くなってて叔父の家に厄介になってるから、それを知った人の目には境遇フィルターがかかって苦労してるように見えるらしいが、実際には叔父とは年の離れた兄弟みたいなフランクな関係だし、祖父母と同居して介護をしてる伯母夫婦の手伝いにもたまに行ってるから、そっちとの関係も悪くない。
中学迄がちょっと悪かったから、高校ではクソ真面目に挽回を図って、好きだった絵をやってこうと美大を目指す事にした。見た目も出来るだけ地味にして頑張ってるんだけど、それを面白く思わない昔のツレもいる。
多分、中学の時振ったのを根に持ってるとこもあるんだろうけど、喧嘩を吹っ掛けてくるというよりは未だに拗ねてて文句を言ってくるだけだ。
友達なら良い奴なんだ。
だけど、顔がな。顔がタイプじゃない。
俺と同系統の、アッサリ塩顔。何が悲しくて自分と似たようなのとくっつかなければならない。
俺の好みは目鼻立ちのハッキリした美人だ。
でも、だからと言って、欧米人のように迄はアクが強くなくて良い。その辺はもう少し主張し過ぎなくて良い。程良いバランスが大事なのだ。
その点、先生のパーツバランスは俺的には完璧だった。
色白の小顔にクリっとしているけれど大き過ぎない目にスッキリ通った鼻梁、薄くて形良い唇。
サラサラの茶色の髪は、少しくらい伸びても清潔感が損なわれたりはしない。
顔が良いからだ。
そして、何時も仄かに柔軟剤なのか洗剤なのか、良い香りがする。
変な整髪料とか妙な香水とか、勿論煙草の匂いなんかしない。
なのに、こんな人なのに先生は、身長はそれなりにあるのだ。175の俺と同じくらいはある。いや、もしかしてもう少し先生の方が高いかも。しかし身長はあるけれど、細い。
そしてその理由は、先生を見ていればとてもよくわかる。
先生の弁当は、大抵何時も手作りらしい、ラップに包まれた小さな三角おにぎりが2個だけだった。中身は鮭の切り身か、無。無だ。
面倒なのか時間がないのか、そんな日は見てしまった俺も物悲しくなり、食欲が落ちてしまう。
たまにバランス栄養食だとか言う黄色い小箱だけの時は驚愕を隠し切れず悲鳴をあげそうになって手で押さえたくらいだ。
先生。どうしたんですか先生。
あんなにもしっかり働いてらっしゃるのに何故そんなにも食生活が貧しいのですか。
借金でも抱えてらっしゃるんですか。
悪い女か男に騙された過去でもお持ちなんですか。
考えたらキリがない、気になって仕方ない先生の私生活。
何時の間にか俺は、先生を目で追わなければ日も夜も明けぬようになってしまっていた。
何時か先生を養いたい。
先生のその辺の女子高生より断然華奢過ぎる手首をどうにかしてあげたい。
せめて、おにぎり3個食べられるようにしてあげたい。いや、なんなら2個でも良いから普通サイズにして、中身にでっかい鮭をいれてあげたい。
それが俺の夢になった。
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