ドS皇子が婚約破棄までして歳上教師の俺に求愛してくる

Q.➽

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21 これ、リンクしてね? (逃桐)

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「0511!!!」


ガバッと起き上がって降り、転がったいるリュックの内側に挿してあったペンでテーブル上にあった封筒の端にメモをした。

してから、ハッとする。

「…夢だっ…た?」


俺はこの数分の出来事を脳内で反芻した。

さっき一度、俺は夢の中で目を覚ました。
人の気配がしたからだ。
宇城が帰ってどれくらい経ったのかはわからなくて、だからもう翌日になってて、また宇城が来たのかと思って身を起こしたのだ。

そしたら、部屋の天井近くに "俺"が浮いていた。
咄嗟にあっちの世界にやった"俺"が、何かの弾みで戻って来たのかと思った。

何で戻って来れたのかと思って、掛けた声が思わず声が裏返ったが、そいつも言い返して来て…。
けれど、様子がおかしかった。

その俺は半透明で浮いていて、小さいけれど声も聞こえるが、一向にそこから近づいてはこれないようだった。
着てる服は以前俺が着ていたものだったが、いたぶられたようには見えなくて、あの分だと、馬鹿皇子達はちゃんと保護の方向で動いたんだなと思い、良かったなとは思ったのだが…。

その時、ハッ、これはチャンスでは?!と閃いたんだよ。
これ、金を引き出せるキャッシュカードの暗証番号を聞くチャンスだろ!と。

ぶっちゃけ、俺が思いつきそうな番号って共通しねえかなと思い、風邪が治ってから試してみようかと思っていたんだが、入力ミスが何回でロックがかかるのかわからず、リスクが高い。

そんな事が気にかかっていたから、今かなと。


でも暗証番号を聞き出した後、俺は再び起き上がった。という事は、今のはやっぱり夢だったのかとガッカリしたのだが、せっかくだから今度試す事にする。

只の夢なのか、夢という潜在意識下で思いがけずあっちの俺とリンクしたのかはわからないが、もし後者なら棚ボタ的ラッキーだったって事になる。

俺は封筒の端に書いた数字の羅列を見つめた。

0511。

その番号に、俺は物凄く覚えがあった。

「…ラクの誕生日じゃん…。」

ラクとは、俺が子供の頃から高校にかけて、実家で飼っていた犬の名前だ。
知人の家で生まれた子犬の一匹を引き取った。
茶色い秋田犬で、仔犬の頃から笑っているような顔をしていた。
楽しそうに笑ってるみたいに見えるから、ラクってのも本当安直なんだけど、結構良い名前だよな。

まあ、ラクは俺が16歳の時に天国とやらに行ってしまったんだが。
そのラクの誕生日と命日を、俺は覚えている。

この世界でもラクは"俺"に飼われていたんだろうか。


「そうだと、良いな…。」

ラクは、幼い頃から両親が仕事で不在がちな俺にとって、兄弟のような存在だった。誰よりも家族だった。
他の世界でも、そうだと良い。どの世界の俺にも寄り添ってくれていたら良いな、と思った。


さっきより少しだけ熱が下がったような気がする。

俺は額に貼られたシートに触れてみた。
温い。既にぜんっぜんひんやりしない。
高くなった体温と馴染み過ぎている。

指でゆっくり引き剥がして、額に手を触れて熱を測ってみた。
未だ未だ熱い。
替えの冷却シートは何処だったっけ、と見回した時に、玄関からガチャガチャと音がして、肩が跳ねた。


「あ、起きてらっしゃったんですね。おはようございます。未だ寝てらっしゃるかと…。」

鍵を開けて玄関ドアを開けて入ってきたのは、またもや左手に白いナイロン袋を持った宇城だった。

何時も下りている前髪をサイドに流して、眼鏡のフレームが何時ものより細い…。あれ?何か、スッキリしてる…。
しかも土曜で私服だからか、シャレオツ感すげえ…。
何で何時も学校だとモッサリさせてんの?


「…おはよ。」

色々思いながら俺が挨拶を返すと、

「少しは熱。下がりましたか?」

と、言いながら、冷蔵庫を開けて冷却シートを出す宇城。

あ~、そこだったか~。


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