152 / 200
監禁! 最後の文化祭
23
しおりを挟む
例年、王道高校の文化祭における盛り上がりというのは二年生が一手に担っている。部活や委員会ごとに展示はあるが、底辺部活や底辺委員会は基本的に注目されない。何よりクラスごとの出し物が大掛かりなのだ。
「では、えーーと三年生Cクラスの出し物を決めていきたいと思います」
よれたジャージにメガネ、じょりじょりとしたヒゲというまるでだらしないおっさんが教壇に立つ。我らが担任の白井先生である。わりと影が薄いがそれなりにいい先生だ。
「とはいえね、皆さん受験や就活もありますから参加できる人だけで……参加できる人は手あげてください、ああ~少ないですね」
パラ……パラ……と数人が手を挙げる。
俺はあげなかった。
実は一ヶ月以上に渡る監禁により俺も大変就職活動がまずいことになっており、九月十月に急いで面接に行ったり応募書類を書いて提出したりしなければならない。
というか、もうやっている。地獄のような日々である。これでもヒイコラ言っているのだ。
しかしどうもやりたいことが見つからずとにかく大手企業を受けとってくれる場所があれば縋り付く所存だ。そもそも説明会とか体験会とか行ってないので圧倒的に不利だし。
「はい、じゃあ数人で出来ることを考えていきましょう」
「はいはい! 劇!!」
「数人で出来ることって言われただろ座れ!」「何すんの? 独白劇? 文化祭で??」「逆にロック」
独白劇でも最低限配役は必要だしな。
三年生は基本的に忙しく、文化祭は回る側に行く方が多い。なぜなら毎日残って作業するゆとりがないからである。何も生み出せないので生み出されたものだけ貪って生きる悲しき生き物。
「メイド喫茶、やりてぇ……!」
「去年やった」「2Aの二番煎じ」「てかAクラスとCクラスのメイド喫茶ならAクラスしか勝たんかないか」「そもそめ数人って言ってるだろ」
いると思ったメイド喫茶やろうとするやつ。定期的にいるんだよな。去年もやったってそれ。
ちなみに去年は猫耳メイドで語尾は『にゃん』が必須だった。
俺は体が分厚いせいで──筋肉である、断じて太ったわけではない──安い衣装がパツパツだったし動きにくすぎたのでジャージで接客していた。
ちなみに水瀬はお化け屋敷のお化け役をやっており、俺がガチビビりして泣きながら入り口に戻る一部始終を握っている。
「たこ焼き屋台とかどうよ、カラースプレーかけて甘いたこ焼きにしたら女子にもウケるっしょ!」
「女を舐めすぎ」
「スイートたこ焼きを買うのはどちらかといえばネット民」
「食べ物で遊ぶな」
「焼き餃子!」
「食べ物系ってそもそも衛生管理法的にどうなん? 基準クリアしないといけなくない?」
「俺らそれ今年許可取ってないぞ」
「ダメです」
ぽんぽん意見が飛ぶが、それに対しての否定も飛び交っている。
文化祭あるあるの準備期間に恋愛色が入りそうなものや接客中に好きな子が見に来てプチパニック的なやつは、衛生指導を受けていないということからことごとく却下になった。
「みんなよく飽きないよねぇ」
「アハハ……最後の行事だもんね……」
椅子に寄りかかった俺の隣で、ちょうどいた佐藤くんが苦笑する。
俺がぼっちなのを察したらしく、クラスで何くれとなく気にかけてくれていて、友達が他にいるのに俺の近くにいてくれる。すごくありがたい。
「食べ物系が封じられたのは大きいよね、あとは展示でしょ?」
「展示ね~……」
よくあるやつだと写真とかだろうか。園芸委員会では一応外のブースで植物の展示を行っている。手作りのポプリも販売するつもりだ。
「劇とかも展示の一部だよねぇ」
「人がいなくてダメだったけどね」
そりゃそうだ。劇って用意するのにめちゃくちゃ時間かかるんだぞ、衣装とか!
演劇部に協力を頼んでもいいが、あそこもあそこで劇をするのだし。
何か面白いものはないものか。できれば他のみんなの目を楽しませて、最後の文化祭らしいフィナーレにできるものであるといい。
……思いついたら苦労しないけどさ。
「では、えーーと三年生Cクラスの出し物を決めていきたいと思います」
よれたジャージにメガネ、じょりじょりとしたヒゲというまるでだらしないおっさんが教壇に立つ。我らが担任の白井先生である。わりと影が薄いがそれなりにいい先生だ。
「とはいえね、皆さん受験や就活もありますから参加できる人だけで……参加できる人は手あげてください、ああ~少ないですね」
パラ……パラ……と数人が手を挙げる。
俺はあげなかった。
実は一ヶ月以上に渡る監禁により俺も大変就職活動がまずいことになっており、九月十月に急いで面接に行ったり応募書類を書いて提出したりしなければならない。
というか、もうやっている。地獄のような日々である。これでもヒイコラ言っているのだ。
しかしどうもやりたいことが見つからずとにかく大手企業を受けとってくれる場所があれば縋り付く所存だ。そもそも説明会とか体験会とか行ってないので圧倒的に不利だし。
「はい、じゃあ数人で出来ることを考えていきましょう」
「はいはい! 劇!!」
「数人で出来ることって言われただろ座れ!」「何すんの? 独白劇? 文化祭で??」「逆にロック」
独白劇でも最低限配役は必要だしな。
三年生は基本的に忙しく、文化祭は回る側に行く方が多い。なぜなら毎日残って作業するゆとりがないからである。何も生み出せないので生み出されたものだけ貪って生きる悲しき生き物。
「メイド喫茶、やりてぇ……!」
「去年やった」「2Aの二番煎じ」「てかAクラスとCクラスのメイド喫茶ならAクラスしか勝たんかないか」「そもそめ数人って言ってるだろ」
いると思ったメイド喫茶やろうとするやつ。定期的にいるんだよな。去年もやったってそれ。
ちなみに去年は猫耳メイドで語尾は『にゃん』が必須だった。
俺は体が分厚いせいで──筋肉である、断じて太ったわけではない──安い衣装がパツパツだったし動きにくすぎたのでジャージで接客していた。
ちなみに水瀬はお化け屋敷のお化け役をやっており、俺がガチビビりして泣きながら入り口に戻る一部始終を握っている。
「たこ焼き屋台とかどうよ、カラースプレーかけて甘いたこ焼きにしたら女子にもウケるっしょ!」
「女を舐めすぎ」
「スイートたこ焼きを買うのはどちらかといえばネット民」
「食べ物で遊ぶな」
「焼き餃子!」
「食べ物系ってそもそも衛生管理法的にどうなん? 基準クリアしないといけなくない?」
「俺らそれ今年許可取ってないぞ」
「ダメです」
ぽんぽん意見が飛ぶが、それに対しての否定も飛び交っている。
文化祭あるあるの準備期間に恋愛色が入りそうなものや接客中に好きな子が見に来てプチパニック的なやつは、衛生指導を受けていないということからことごとく却下になった。
「みんなよく飽きないよねぇ」
「アハハ……最後の行事だもんね……」
椅子に寄りかかった俺の隣で、ちょうどいた佐藤くんが苦笑する。
俺がぼっちなのを察したらしく、クラスで何くれとなく気にかけてくれていて、友達が他にいるのに俺の近くにいてくれる。すごくありがたい。
「食べ物系が封じられたのは大きいよね、あとは展示でしょ?」
「展示ね~……」
よくあるやつだと写真とかだろうか。園芸委員会では一応外のブースで植物の展示を行っている。手作りのポプリも販売するつもりだ。
「劇とかも展示の一部だよねぇ」
「人がいなくてダメだったけどね」
そりゃそうだ。劇って用意するのにめちゃくちゃ時間かかるんだぞ、衣装とか!
演劇部に協力を頼んでもいいが、あそこもあそこで劇をするのだし。
何か面白いものはないものか。できれば他のみんなの目を楽しませて、最後の文化祭らしいフィナーレにできるものであるといい。
……思いついたら苦労しないけどさ。
35
お気に入りに追加
330
あなたにおすすめの小説
フリーダム!!!~チャラ男の俺が王道学園の生徒会会計になっちゃった話~
いちき
BL
王道学園で起こるアンチ王道気味のBL作品。 女の子大好きなチャラ男会計受け。 生真面目生徒会長、腐男子幼馴染、クール一匹狼等と絡んでいきます。王道的生徒会役員は、王道転入生に夢中。他サイトからの転載です。
※5章からは偶数日の日付が変わる頃に更新します!
※前アカウントで投稿していた同名作品の焼き直しです。

義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!
ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。
「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」
なんだか義兄の様子がおかしいのですが…?
このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ!
ファンタジーラブコメBLです。
平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります。
※(3/14)ストック更新終わりました!幕間を挟みます。また本筋練り終わりましたら再開します。待っててくださいね♡
【登場人物】
攻→ヴィルヘルム
完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが…
受→レイナード
和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。


とある金持ち学園に通う脇役の日常~フラグより飯をくれ~
無月陸兎
BL
山奥にある全寮制男子校、桜白峰学園。食べ物目当てで入学した主人公は、学園の権力者『REGAL4』の一人、一条貴春の不興を買い、学園中からハブられることに。美味しい食事さえ楽しめれば問題ないと気にせず過ごしてたが、転入生の扇谷時雨がやってきたことで、彼の日常は波乱に満ちたものとなる──。
自分の親友となった時雨が学園の人気者たちに迫られるのを横目で見つつ、主人公は巻き込まれて恋人のフリをしたり、ゆるく立ちそうな恋愛フラグを避けようと奮闘する物語です。

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は無い
・悲しい過去🐜のたまにシリアス
・話の流れが遅い
王道学園なのに、王道じゃない!!
主食は、blです。
BL
今作品の主人公、レイは6歳の時に自身の前世が、陰キャの腐男子だったことを思い出す。
レイは、自身のいる世界が前世、ハマりにハマっていた『転校生は愛され優等生.ᐟ.ᐟ』の世界だと気付き、腐男子として、美形×転校生のBのLを見て楽しもうと思っていたが…
目立たないでと言われても
みつば
BL
「お願いだから、目立たないで。」
******
山奥にある私立琴森学園。この学園に季節外れの転入生がやってきた。担任に頼まれて転入生の世話をすることになってしまった俺、藤崎湊人。引き受けたはいいけど、この転入生はこの学園の人気者に気に入られてしまって……
25話で本編完結+番外編4話

Q.親友のブラコン兄弟から敵意を向けられています。どうすれば助かりますか?
書鈴 夏(ショベルカー)
BL
平々凡々な高校生、茂部正人«もぶまさと»にはひとつの悩みがある。
それは、親友である八乙女楓真«やおとめふうま»の兄と弟から、尋常でない敵意を向けられることであった。ブラコンである彼らは、大切な彼と仲良くしている茂部を警戒しているのだ──そう考える茂部は悩みつつも、楓真と仲を深めていく。
友達関係を続けるため、たまに折れそうにもなるけど圧には負けない!!頑張れ、茂部!!
なお、兄弟は三人とも好意を茂部に向けているものとする。
7/28
一度完結しました。小ネタなど書けたら追加していきたいと思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる