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監禁! 最後の文化祭
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俺の言わなかった皮肉を察したのか、武藤様がそっと目を逸らした。かわいい。最近この人のせいで変な性癖が目覚めてる気がする。気まずそうに目を逸らす堂々とした人が、その逡巡が俺のせいで起きているということが愛らしかった。
「……おれっていじめっ子だったっけ」
「似たようなものではある……」
「地元じゃ鳴らしてただろ」
「まぁ、師匠は小学生相手に金魚掬いで勝ち誇っていたからな。カスの勝ち方もする」
「そういう妖怪みたいでしたよ、田中くん」
「過去のおれ~~ッッッッ」
こうちゃんは何で頷いてるんだよ。怒涛のように責めてくるのをやめろえっ今これ何人に陥された? 四人? 四人一気に撃たれることある? リンチっていうんだぞそういうのを。
執行部の皆様しか来ないテラスなので食堂内よりかはごみごみとしていないのだが、それぞれが知り合いかつ特徴的であるがゆえに何となく心持ち騒がしかった。
双子はレオ様と別のソファで話してはタブレット──タッチパネル式なんだ──から注文していたし。
「おい見ろよ宗介、知らんメニューがいっぱいあるぞ。これとかお前のバイト先じゃないか」
「なになに? えっ、喫茶アネラ……」
「そういやイブキのヤツが提携しただか何だか言ってやがったな。まともな代表メニューが出来たとか」
仲良いな武藤様とイブキ。そんな話もしてるのか。
しばらくあそこには顔を出していないし、次のシフトで何か話でもされるのかもしれない。
武藤様の両側には真道と副会長、俺の隣にはそれぞれ水瀬とこうちゃんがいる。
真道の近くのお誕生日席には椅子を持ってきた早乙女くんが座っていた。気まずいのだろう。わかるよ、委員会の二年って三年から思ってるより三年に距離あるもんね。
新メニューに目がない水瀬がおそらく執行部限定メニューに目を輝かせている。こいつ新しい店とか開拓すると絶対途中で食べれなくなって俺に食わせるんだよなぁ。
「おれおべんとあるから良い~」
「何だ、もったいないな。枯れてるのか?」
言いながらぺぺぺっと新メニューを注文していく。お前がどうせ食べきれなくなるから待ってんだよ。こういうこと言ったらおこぼれを狙うハイエナ扱いされそう。ただの親切心だってのに。
「俺はそばをいただこう! 秋メニューのやつ」
「先輩が蕎麦にバリエーション持たせようとしてんのって何なんですか? 別にバリエーションないですよ蕎麦には」
「秋蕎麦ですか。良いですね」
「あるのかよ、蕎麦にバリエーション」
蕎麦のバリエーション、ソバリエーション。
ああーっクソツイが口から出てきそうになったあぶな!! クソツイというか親父ギャグである。親父ギャグって今SNSに新鮮に開発したらめちゃくちゃ叩かれそうだよなを
ちなみに蕎麦は品種や産地によって収穫時期が違うため、秋に収穫した新蕎麦は秋蕎麦と呼ばれている。つまりバリエーションは一応あるのだ。
「そういえば会長、今日はいったいなぜ田中宗介くんを? 普段は別々でしょう」
副会長がメガネを光らせ、何か不正等がないか確認に入る。多少は仲良くなったと思ったがそれとこれとは別。痺れる。
「いや別に、弁当を渡しただけだ」
「ではわざわざ連れて来ずともよかったでしょう。相手の迷惑も考えず連れてきた理由とは?」
「べ、別に良いだろうが」
「よくありません。ここは執行部が入れるという暗黙のルールです。それを四つも破って」
クドクドと説教しているが確かにそうだ。この高校では暗黙のルールが何より重要視される。実際それを破った獅童くんはあんな目に遭っているわけなので。守り守られるにはルールという傘が必要なのだ。
俺はもぐもぐと咀嚼しながら、いったいどう返すのかなと眺め──
「……こいつと恋人だからだよ! 恋人ってのは一緒に飯食うもんだろうが!!」
──吹き出しかけた。
えっそれいうのこの天然お坊ちゃん!?!? やばすぎる、周囲の視線が痛いぜ!
「……おれっていじめっ子だったっけ」
「似たようなものではある……」
「地元じゃ鳴らしてただろ」
「まぁ、師匠は小学生相手に金魚掬いで勝ち誇っていたからな。カスの勝ち方もする」
「そういう妖怪みたいでしたよ、田中くん」
「過去のおれ~~ッッッッ」
こうちゃんは何で頷いてるんだよ。怒涛のように責めてくるのをやめろえっ今これ何人に陥された? 四人? 四人一気に撃たれることある? リンチっていうんだぞそういうのを。
執行部の皆様しか来ないテラスなので食堂内よりかはごみごみとしていないのだが、それぞれが知り合いかつ特徴的であるがゆえに何となく心持ち騒がしかった。
双子はレオ様と別のソファで話してはタブレット──タッチパネル式なんだ──から注文していたし。
「おい見ろよ宗介、知らんメニューがいっぱいあるぞ。これとかお前のバイト先じゃないか」
「なになに? えっ、喫茶アネラ……」
「そういやイブキのヤツが提携しただか何だか言ってやがったな。まともな代表メニューが出来たとか」
仲良いな武藤様とイブキ。そんな話もしてるのか。
しばらくあそこには顔を出していないし、次のシフトで何か話でもされるのかもしれない。
武藤様の両側には真道と副会長、俺の隣にはそれぞれ水瀬とこうちゃんがいる。
真道の近くのお誕生日席には椅子を持ってきた早乙女くんが座っていた。気まずいのだろう。わかるよ、委員会の二年って三年から思ってるより三年に距離あるもんね。
新メニューに目がない水瀬がおそらく執行部限定メニューに目を輝かせている。こいつ新しい店とか開拓すると絶対途中で食べれなくなって俺に食わせるんだよなぁ。
「おれおべんとあるから良い~」
「何だ、もったいないな。枯れてるのか?」
言いながらぺぺぺっと新メニューを注文していく。お前がどうせ食べきれなくなるから待ってんだよ。こういうこと言ったらおこぼれを狙うハイエナ扱いされそう。ただの親切心だってのに。
「俺はそばをいただこう! 秋メニューのやつ」
「先輩が蕎麦にバリエーション持たせようとしてんのって何なんですか? 別にバリエーションないですよ蕎麦には」
「秋蕎麦ですか。良いですね」
「あるのかよ、蕎麦にバリエーション」
蕎麦のバリエーション、ソバリエーション。
ああーっクソツイが口から出てきそうになったあぶな!! クソツイというか親父ギャグである。親父ギャグって今SNSに新鮮に開発したらめちゃくちゃ叩かれそうだよなを
ちなみに蕎麦は品種や産地によって収穫時期が違うため、秋に収穫した新蕎麦は秋蕎麦と呼ばれている。つまりバリエーションは一応あるのだ。
「そういえば会長、今日はいったいなぜ田中宗介くんを? 普段は別々でしょう」
副会長がメガネを光らせ、何か不正等がないか確認に入る。多少は仲良くなったと思ったがそれとこれとは別。痺れる。
「いや別に、弁当を渡しただけだ」
「ではわざわざ連れて来ずともよかったでしょう。相手の迷惑も考えず連れてきた理由とは?」
「べ、別に良いだろうが」
「よくありません。ここは執行部が入れるという暗黙のルールです。それを四つも破って」
クドクドと説教しているが確かにそうだ。この高校では暗黙のルールが何より重要視される。実際それを破った獅童くんはあんな目に遭っているわけなので。守り守られるにはルールという傘が必要なのだ。
俺はもぐもぐと咀嚼しながら、いったいどう返すのかなと眺め──
「……こいつと恋人だからだよ! 恋人ってのは一緒に飯食うもんだろうが!!」
──吹き出しかけた。
えっそれいうのこの天然お坊ちゃん!?!? やばすぎる、周囲の視線が痛いぜ!
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