133 / 200
監禁! 最後の文化祭
4
しおりを挟む
武藤様は学校で何やら生徒会の雑務をこなしているらしく、朝八時に出て午後四時くらいに帰ってくる。ダラダラやっているだけだと本人は話すが、普段これを学業と両立してやっているのだ。頭が下がる。
今もちょうど帰ってきていたらしく、台所でエプロンをつけている。多分カバンにも彼の手元にももう鍵はない。武藤様がいる時は部屋にある金庫に入っている。
「そうそう、今日は武藤様がなんで監禁してくるんだろうなーって考えてたよ」
「そんで寝てたんか。夜変な時間に起きんだからやめろっつったろ」
「やる事ないし。俺分かったんだけど、やらなければならないことがないとメリハリがつかない」
朝起きて畑に行くというのは偉大な習慣になっていたんだな、と思う。軽やかな包丁の音に混じって武藤様が重苦しく黙るのでめちゃくちゃ慌てた。
「え!? なんでそんな落ち込んでんの武藤様どした!」
「ウルセェ……」
「落ち込むくらいなら最初っから監禁せんでよ~!」
「分かってんなら聞くんじゃねぇ!」
めんどくせぇ人だ~~! メンブレしやすいコミュ障人間に言われたくはないだろうが、武藤様は大概メンタルが弱い。勝手に落ち込む割に逃そうとはしないので意志は強い。
意志の強さとメンタルの弱さがマリアージュされ、面倒臭さが倍増している。
「武藤様、メンタル弱いくせに監禁とかするんだから……俺より自己管理ができてないんじゃねーの?」
「ウルセェ、監禁されておいて平然としてるてめーの方がおかしいだろが!」
「今んところ困ったことはないからね」
強いていうならCクラスにのみ出された宿題の範囲がわからないので夏休み明けに詰みが待っているということだろうか。
そして何故か俺に出されたひとことにっきも、やることが無さすぎて読んだ本とか晩御飯のメニューとかのメモ代わりになっている。
「まぁー監禁される程度で武藤グループ傘下の正社員って地位が手に入るならやるけどね」
ちゃちゃっと手を洗って席に着く。
当たり前の顔をして食事を待っていれば、まだ準備が終わっていないらしい武藤様がこれでも食ってろとミカンの山を俺の目の前に置いた。
「夕飯あるから腹は満たすなよ」
「やったー!」
みかんである。みかんは好きだ。
俺はみかんを下手の部分からわざと皮を剥ぎ取り、一本の線になるように剥くのが好きだ。地味に珍しいので基本的にボロボロと溢れる。
「相変わらず剥き方キモすぎるだろ」
「見せたことあったっけ?」
「去年。生徒会執行部にみかん届けただろ」
そういえばあったなそんなこと。
庭づくりのため、お金が足りなくなったので奉仕活動という名目で農家バイトをやったらみかんを二箱もらったのだ。
食べきれないので執行部にみかんを届けに行ったのだ。
「あの後食堂でみかん食ってただろ。まだあんのかと思って見てたら剥き方キモかった」
酷すぎる。
確かに俺はみかんを剥く時一本の線にしようとしすぎて切れた端から変に剥くが、ミカンの剥き方くらいは自由にさせて欲しい。
今自由の身じゃないんだし、ナンツッテ! 俺でも言わない方がいいことはわかるなやめよう。
じゅうじゅうと何かが焼ける音と旨そうなニンニクの匂い。外は陽が沈みかけていて、昼下がりという言葉を思い出した。
何で聞いたんだっけ、ああこうちゃんだ。
「てかさ、武藤様いない時もバルコニーでたいんだけど」
「……ダメだ」
「なんで!」
「逃げるだろ」
「俺のこと本当になんだと思ってる? ここは二十階で人間は五階以上から落ちたら確実に死に至るんだぞ」
死ぬて。あっみかんの皮ちぎれた。仕方ない、並べておくか。
「見て~流氷」
「……アホすぎる……」
どの口が言うか。外に出れたら確実に外に出られる訳じゃないんだぞ。現実はその構文でままならないことは結構ある。
俺のそんな様子を見て逃げる事はないと安心したのか、武藤様はわぁった、と声をあげる。
「出たいなら出りゃいい。鍵は渡しとく」
「いつのまにか何もかもに鍵がいるようになったなぁ」
「いつの間にかってか、てめーが呑気にしてる間に徐々になってんだよ。感知してねぇだけだ」
そうは言われても。武藤様はこの監禁を咎められたいのだろうか、認められたいんだろうか。
「カントリー○ァムってグラデで小さくなってたのに消費者からすると急に小さくなったように見えるじゃん、そういうのだよ」
「思った事ねぇ」
「お坊ちゃんじゃん……」
庶民はカントリーマ○ムの小ささになんの関係が無くても憤るというのに。そのひと周りの部分のクッキーが何よりも大切な時だってある。
そんなことを言っていたら目の前に皿が置かれる。流氷みかん(カワ)は捨てられたので、一口で中身を食べて咀嚼する。このジュースみたいなみずみずしさがたまんないんだわ。
「相変わらず食い方キモ」
「ミカンの食い方がキモいだけでここまで言われることある?」
追撃してくるな。
今もちょうど帰ってきていたらしく、台所でエプロンをつけている。多分カバンにも彼の手元にももう鍵はない。武藤様がいる時は部屋にある金庫に入っている。
「そうそう、今日は武藤様がなんで監禁してくるんだろうなーって考えてたよ」
「そんで寝てたんか。夜変な時間に起きんだからやめろっつったろ」
「やる事ないし。俺分かったんだけど、やらなければならないことがないとメリハリがつかない」
朝起きて畑に行くというのは偉大な習慣になっていたんだな、と思う。軽やかな包丁の音に混じって武藤様が重苦しく黙るのでめちゃくちゃ慌てた。
「え!? なんでそんな落ち込んでんの武藤様どした!」
「ウルセェ……」
「落ち込むくらいなら最初っから監禁せんでよ~!」
「分かってんなら聞くんじゃねぇ!」
めんどくせぇ人だ~~! メンブレしやすいコミュ障人間に言われたくはないだろうが、武藤様は大概メンタルが弱い。勝手に落ち込む割に逃そうとはしないので意志は強い。
意志の強さとメンタルの弱さがマリアージュされ、面倒臭さが倍増している。
「武藤様、メンタル弱いくせに監禁とかするんだから……俺より自己管理ができてないんじゃねーの?」
「ウルセェ、監禁されておいて平然としてるてめーの方がおかしいだろが!」
「今んところ困ったことはないからね」
強いていうならCクラスにのみ出された宿題の範囲がわからないので夏休み明けに詰みが待っているということだろうか。
そして何故か俺に出されたひとことにっきも、やることが無さすぎて読んだ本とか晩御飯のメニューとかのメモ代わりになっている。
「まぁー監禁される程度で武藤グループ傘下の正社員って地位が手に入るならやるけどね」
ちゃちゃっと手を洗って席に着く。
当たり前の顔をして食事を待っていれば、まだ準備が終わっていないらしい武藤様がこれでも食ってろとミカンの山を俺の目の前に置いた。
「夕飯あるから腹は満たすなよ」
「やったー!」
みかんである。みかんは好きだ。
俺はみかんを下手の部分からわざと皮を剥ぎ取り、一本の線になるように剥くのが好きだ。地味に珍しいので基本的にボロボロと溢れる。
「相変わらず剥き方キモすぎるだろ」
「見せたことあったっけ?」
「去年。生徒会執行部にみかん届けただろ」
そういえばあったなそんなこと。
庭づくりのため、お金が足りなくなったので奉仕活動という名目で農家バイトをやったらみかんを二箱もらったのだ。
食べきれないので執行部にみかんを届けに行ったのだ。
「あの後食堂でみかん食ってただろ。まだあんのかと思って見てたら剥き方キモかった」
酷すぎる。
確かに俺はみかんを剥く時一本の線にしようとしすぎて切れた端から変に剥くが、ミカンの剥き方くらいは自由にさせて欲しい。
今自由の身じゃないんだし、ナンツッテ! 俺でも言わない方がいいことはわかるなやめよう。
じゅうじゅうと何かが焼ける音と旨そうなニンニクの匂い。外は陽が沈みかけていて、昼下がりという言葉を思い出した。
何で聞いたんだっけ、ああこうちゃんだ。
「てかさ、武藤様いない時もバルコニーでたいんだけど」
「……ダメだ」
「なんで!」
「逃げるだろ」
「俺のこと本当になんだと思ってる? ここは二十階で人間は五階以上から落ちたら確実に死に至るんだぞ」
死ぬて。あっみかんの皮ちぎれた。仕方ない、並べておくか。
「見て~流氷」
「……アホすぎる……」
どの口が言うか。外に出れたら確実に外に出られる訳じゃないんだぞ。現実はその構文でままならないことは結構ある。
俺のそんな様子を見て逃げる事はないと安心したのか、武藤様はわぁった、と声をあげる。
「出たいなら出りゃいい。鍵は渡しとく」
「いつのまにか何もかもに鍵がいるようになったなぁ」
「いつの間にかってか、てめーが呑気にしてる間に徐々になってんだよ。感知してねぇだけだ」
そうは言われても。武藤様はこの監禁を咎められたいのだろうか、認められたいんだろうか。
「カントリー○ァムってグラデで小さくなってたのに消費者からすると急に小さくなったように見えるじゃん、そういうのだよ」
「思った事ねぇ」
「お坊ちゃんじゃん……」
庶民はカントリーマ○ムの小ささになんの関係が無くても憤るというのに。そのひと周りの部分のクッキーが何よりも大切な時だってある。
そんなことを言っていたら目の前に皿が置かれる。流氷みかん(カワ)は捨てられたので、一口で中身を食べて咀嚼する。このジュースみたいなみずみずしさがたまんないんだわ。
「相変わらず食い方キモ」
「ミカンの食い方がキモいだけでここまで言われることある?」
追撃してくるな。
59
お気に入りに追加
330
あなたにおすすめの小説
目立たないでと言われても
みつば
BL
「お願いだから、目立たないで。」
******
山奥にある私立琴森学園。この学園に季節外れの転入生がやってきた。担任に頼まれて転入生の世話をすることになってしまった俺、藤崎湊人。引き受けたはいいけど、この転入生はこの学園の人気者に気に入られてしまって……
25話で本編完結+番外編4話

無自覚お師匠様は弟子達に愛される
雪柳れの
BL
10年前。サレア皇国の武力の柱である四龍帝が忽然と姿を消した。四龍帝は国内外から強い支持を集め、彼が居なくなったことは瞬く間に広まって、近隣国を巻き込む大騒動に発展してしまう。そんなこと露も知らない四龍帝こと永寿は実は行方不明となった10年間、山奥の村で身分を隠して暮らしていた!?理由は四龍帝の名前の由来である直属の部下、四天王にあったらしい。四天王は師匠でもある四龍帝を異常なまでに愛し、終いには結婚の申し出をするまでに……。こんなに弟子らが自分に執着するのは自分との距離が近いせいで色恋をまともにしてこなかったせいだ!と言う考えに至った永寿は10年間俗世との関わりを断ち、ひとりの従者と一緒にそれはそれは悠々自適な暮らしを送っていた……が、風の噂で皇国の帝都が大変なことになっている、と言うのを聞き、10年振りに戻ってみると、そこに居たのはもっとずっと栄えた帝都で……。大変なことになっているとは?と首を傾げた永寿の前に現れたのは、以前よりも増した愛と執着を抱えた弟子らで……!?
それに永寿を好いていたのはその四天王だけでは無い……!?
無自覚鈍感師匠は周りの愛情に翻弄されまくる!!
(※R指定のかかるような場面には“R”と記載させて頂きます)
中華風BLストーリー、ここに開幕!
フリーダム!!!~チャラ男の俺が王道学園の生徒会会計になっちゃった話~
いちき
BL
王道学園で起こるアンチ王道気味のBL作品。 女の子大好きなチャラ男会計受け。 生真面目生徒会長、腐男子幼馴染、クール一匹狼等と絡んでいきます。王道的生徒会役員は、王道転入生に夢中。他サイトからの転載です。
※5章からは偶数日の日付が変わる頃に更新します!
※前アカウントで投稿していた同名作品の焼き直しです。

顔だけが取り柄の俺、それさえもひたすら隠し通してみせる!!
彩ノ華
BL
顔だけが取り柄の俺だけど…
…平凡に暮らしたいので隠し通してみせる!!
登場人物×恋には無自覚な主人公
※溺愛
❀気ままに投稿
❀ゆるゆる更新
❀文字数が多い時もあれば少ない時もある、それが人生や。知らんけど。
日本一のイケメン俳優に惚れられてしまったんですが
五右衛門
BL
月井晴彦は過去のトラウマから自信を失い、人と距離を置きながら高校生活を送っていた。ある日、帰り道で少女が複数の男子からナンパされている場面に遭遇する。普段は関わりを避ける晴彦だが、僅かばかりの勇気を出して、手が震えながらも必死に少女を助けた。
しかし、その少女は実は美男子俳優の白銀玲央だった。彼は日本一有名な高校生俳優で、高い演技力と美しすぎる美貌も相まって多くの賞を受賞している天才である。玲央は何かお礼がしたいと言うも、晴彦は動揺してしまい逃げるように立ち去る。しかし数日後、体育館に集まった全校生徒の前で現れたのは、あの時の青年だった──
いとしの生徒会長さま
もりひろ
BL
大好きな親友と楽しい高校生活を送るため、急きょアメリカから帰国した俺だけど、編入した学園は、とんでもなく変わっていた……!
しかも、生徒会長になれとか言われるし。冗談じゃねえっつの!

とある金持ち学園に通う脇役の日常~フラグより飯をくれ~
無月陸兎
BL
山奥にある全寮制男子校、桜白峰学園。食べ物目当てで入学した主人公は、学園の権力者『REGAL4』の一人、一条貴春の不興を買い、学園中からハブられることに。美味しい食事さえ楽しめれば問題ないと気にせず過ごしてたが、転入生の扇谷時雨がやってきたことで、彼の日常は波乱に満ちたものとなる──。
自分の親友となった時雨が学園の人気者たちに迫られるのを横目で見つつ、主人公は巻き込まれて恋人のフリをしたり、ゆるく立ちそうな恋愛フラグを避けようと奮闘する物語です。

風紀委員長様は王道転校生がお嫌い
八(八月八)
BL
※11/12 10話後半を加筆しました。
11/21 登場人物まとめを追加しました。
【第7回BL小説大賞エントリー中】
山奥にある全寮制の名門男子校鶯実学園。
この学園では、各委員会の委員長副委員長と、生徒会執行部が『役付』と呼ばれる特権を持っていた。
東海林幹春は、そんな鶯実学園の風紀委員長。
風紀委員長の名に恥じぬ様、真面目実直に、髪は七三、黒縁メガネも掛けて職務に当たっていた。
しかしある日、突如として彼の生活を脅かす転入生が現われる。
ボサボサ頭に大きなメガネ、ブカブカの制服に身を包んだ転校生は、元はシングルマザーの田舎育ち。母の再婚により理事長の親戚となり、この学園に編入してきたものの、学園の特殊な環境に慣れず、あくまでも庶民感覚で突き進もうとする。
おまけにその転校生に、生徒会執行部の面々はメロメロに!?
そんな転校生がとにかく気に入らない幹春。
何を隠そう、彼こそが、中学まで、転校生を凌ぐ超極貧ド田舎生活をしてきていたから!
※11/12に10話加筆しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる