王道学園のコミュ障ニセチャラ男くん、憧れの会長と同室になったようで

伊月乃鏡

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密着! 夏休み旅行!

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結局集合場所は俺の部屋になったらしく、体調の悪い俺を気遣ってか各々カードゲームを持ってきて盛り上がっていた。

「あ~もう引ける手札ないねェ~~おれの勝ちィ!」
「グワァァァアッッ!!!! クッ、まさか田中様がクソデッキ使いだったとは──!!」
「結構予想は尽きますけどね」

クソデッキ使う予測がつくのはどないやねん。
ペケカ玄人の島田くんを即席クソデッキでカスの勝ち方をして撃破していると、隣でババ抜きをしていた三年組がそれぞれコチラを覗いてくる。

「九鬼、どさくさに紛れて俺の札をのぞこうとするな!」
「チッ、バレたか」

最初は真道もペケカ組に参加していたのだが、島田くんの持ってきたカード枚数が少ないのを察してババ抜きに移っていた。そこはポーカーとかじゃないのかと思ったが結構楽しそうである。

俺たちペケカ組が布団を一旦離し中央に持ってきたローテーブルで向かい合って遊んでいる間、俺と右手がつながっている真道は広縁側の俺の布団辺りでトランプで遊んでいる。

「あーー東郷UNOって言ってない~~!!」
「政広UNOって言わずに上がれると思わん方がええで、俺たちはいつでもお前の失脚を望んどる」
「ネバネバと嫌がらせだけに長けた雑魚どもがよォ~その大量の手札どうにかしてから言えッッ」

島田くんと右手が繋がった二年生達は玄関側、真道の布団辺りでUNOを使い遊んでいた。

「一応カード少ないのによくクソデッキが作れますね田中様。即興なんですよね?」
「機転だよこういうのは~。実家に行く前に教えてくれてたら正々堂々ガチデッキ一式持ってきてたのに」
「子供達の遊び場に置いてきてしまったな、ダウトだ!」
「そう言うルールではないので」
「今何をしゆーんかちゃんと把握しちょるんか?」

あの学生鞄が恋しい。近所のキッズ達と遊ぶために使い果たしてしまったので今の俺には相棒すら共にいない。
俺だってそれなりに幼少より使い続け環境から陥落しようと好きなカードがあるのだ。別にクソデッキを作る人ではない。

まぁ勝ち負けがつく分好きなカード好きなペケモンで勝てるわけがなく、とはいえ出来る限りその力が発揮できるようくんであるデッキは思い出のものだった。

「そういえば前回の帰省では、カンタ殿が大事にしていたええと……コマ? を取り返してやったとか言っていたな」
「ブイね。換金すれば百万相当の奴だったんだけど~、それ狙って高校生が取り上げてたの~。小学生相手に酷いよねぇ~」

カスデッキとはいえ出オチデッキでもあるので、島田くんと即興で組み直してまたフィールドを整える。

真道がルールをわかっていないなりにUNOといったり上がろうとしたりしながらコチラに話しかけてきたので答える。

「百万のブイって……まさかかつてクルクルコミックの抽選で十人にしか当たらないあのブイですか!?」
「ん、おい島田? なんか様子が」
「性能、見た目、希少性どれもトップクラス! 全ブレーダーの憧れですよ!!」
「まずい、島田は概ねのホビーに目がないんだ! 心にキッズを飼ってるから!」

ブイブレード。ペケカのように世界的人気を誇る競技で、当然世界大会もある。
俺が高校に上がる前にキッズ達に教えたもので、今でも道端とかで遊んでいる様子を見る。

内容としては単純で、自分で改造した『ブイ』と呼ばれるベーゴマのようなものを掛け声とともに場に放ち、相手を吹き飛ばしたり相手より長く回っていたら勝ちだ。

先ほど真道のあげたカンタは俺の教えでブイブレードにハマった一人であり、病床にいた兄から渡されたそのブイを大切にしていたのだが……あいにくその価値を知らず、高校生に脅されて取り上げられてしまったのだ。

「ホビアニかよ」
「そのカンタ、ホビアニやったら主人公やな」

東郷くんと獅童くんが各々それに反応を返す。熱くなっているのは島田くんだけだった。この子俺と趣味合うな。

「ガキの遊び道具奪うらぁてしょうもない奴やねや! どうやって取り返しちゃったんだ?」

よく分かってはいないが義憤に燃えるイブキが首を突っ込んでいる。いつのまにか手元にはカードが2枚になっていた。副会長の手には四枚、真道の手にはいっぱい。イブキまさかこいつ勝つんじゃなかろうか。


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