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密着! 夏休み旅行!

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副会長ってもしかして怖いの無理? いやまさかな、天下の副会長がな……

「馬鹿馬鹿しい……幽霊などというものは存在しません。全て科学的に証明できることです」

ああなるほど、信じてないのか。唐突に面のこと残機みたいに数えるから何だと思った。

古い家系の人でも幽霊や超常現象を信じない人は結構いる。知り合いで言うなら水瀬だ。

水瀬は俺と共に帰省した時『見えないなら居ないのと同じだ』と言い放ち、人の声を発する蚕を『面白い鳴き声もあるもんだな。いいシルクになりそうだ』と楽しそうに世話していた。

「しかし刑部おさかべ、お前の家では盆になれば勝手に開く棚が無かったか?」
「あれはそういうシステムのやつです。日付指定で開くプログラムが組み込まれています」
「中に何も入っていなのに何のために……? しかも戦前に作られた木造のものだろう」
「オーパーツです」

オーパーツだったら淡々としすぎだろ。
しかも結局目的は開示されないわけなのでイタズラのためにオーパーツを使ったことになっている。逆に怖いだろそれは、目的がわからなすぎて。

「少し前からガムテープで蓋をしています」
「お前それは本当にやめておいたほうがいい」
「何がですか?? 幽霊が起こるとでも????」
「いや普通に高いだろうそれ」

戦前の作られた棚、しかも一流のものしか置かない刑部家にあるものが国宝でないわけがない。かちゃかちゃと小刻みにメガネを上下させている副会長はそんなことも頭に入っていない様子で。

まじかーー。

「ふくかいちょー、とんでもないビビり?」
「は?? 全然違いますが?? ただ全てのナゾは科学で説明がつくと事実を語っているだけですが?? お爺様の名にかけて!」
「勝手にかけないだげて~」

まずいな。この町は怖がりにはあまり向いていないのだ。

可愛らしい純喫茶には二股に分かれた尻尾の猫が鎮座してるし、誰も訪れない廃墟で蚕が世話もされずに放置されている。

海の洞窟を抜ければ真っ白な蛇が懐いてきて、海辺の岩で足を食いちぎられればフジツボの代わりに幼児の歯がびっしり生えている。

「……っていう場所なんだけど~、大丈夫?」
「それこそ俺たちの身の安全とかは大丈夫なん??」
「基本害はないから……ああ、強いていうなら遊泳禁止区域で呼ぶ子供の声に応えちゃダメくらい~?」
「なっ、何で……」
「えっシンプルに危険だからだけど……。地元の子ならあそこの波は乗れるんだけど、地形とかに慣れてないと高確率で溺れるんだよね」

遊泳禁止区域には観光客がいないから、みつる達のような活発な子供は泳ぐのだ。

ただまぁ自分たちができるなら大人は当然出来るだろうと大人を誘い込んで、大人が溺れたり怪我したりするのだ。あそこは意外と浅瀬なので。

ちなみに遊泳禁止の理由も景観保護のためらしい。ついでに素人には危険なので禁止されている。

「自分は大丈夫と思っても、万が一溺れたら助けに行きづらいし……何より子供達が外で遊んでくれなくなっちゃうからやめよーねー」
「ものっそ真っ当な理由やった……」

逆に何だと思ったんだ。
ビビリはビビリとして置いておき、ひとまず屋台の位置を話し合う。地図はもう作られてあるのでいない人員を補充しておくのだ。

「ならこのたこ焼き屋にしようかな……」
「ああ、そこのハナさん都会嫌いだよ」
「そうなんですか? じゃあこの隣の……隣の的当て屋で」
「そこのミチさん都会嫌いだよ」
「……斜め前のこの店は」
「キー婆? 都会嫌いだよ~」
「じゃあこの! 真ん中の店!! お面売とかいう怪しい店!!」
「そいつ都会かぶれ」
「どうやって共存してるんですか!?!?」

地元の愉快な老害達である。
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