王道学園のコミュ障ニセチャラ男くん、憧れの会長と同室になったようで

伊月乃鏡

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激動! 体育祭!

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俺が叫んだ時、水瀬は笑った。いつもの飄々としたものじゃなく、それよりずっと人間味のある不恰好な顔で。

そうして水瀬は負けた。早々に道具をしまい、装備を外し戻ってきた水瀬にこう何か、何かしてやりたい気持ちがあって、だがどうすれば良いのかわからない。

「おい、周りを回るな宗介。わかったわかった。はしゃぐんじゃない。散歩直前の犬かお前は。低知能な上に動物へ成り下がったらおしまいだぞ」
「口の悪さは健在なんだ」
「当たり前だろ。そう何もかもが急に変わるかよ」

嘘つけ嬉しいくせに!
水瀬の、最後の一射は偶然じゃない。狙ったように当てたもの。当たると分かって放ったもの。分かるぜ、だって友達だし!

水瀬がイップスであることは知っていた。負けることも予想済みだ。
生徒会役員が固まっている方をチラリと見ると、物言いたげな武藤様の視線とかち合う。

応援席でも不安げな顔をしていたが、わざと負かしたような采配が気になるのだろう。特に今は疑心暗鬼なわけだし。

「ッシ」

ぱん! と両頬を張る。もう一踏ん張り……いや正確にはふた踏ん張りくらいだが、頑張りどころだ。

「次は俺が出る。大将──ってわけでもないけど、代表対決に持ち込みたい」
「……そう上手くいくのかよ?」
「え~? なに、会長さま心配してんの~?」

これに関しては予想ではなく確信だ。生徒会テントのソファでは獅童くんが爆睡しているので──この子閉会式まで起きなさそうだな──武藤さま達はもう一つ運び込んだカウチでくつろがれている。

「安心しなよ~。おれがでてイブキが出てこないなんて、から」

てかくつろぎすぎだろ。テーブルあるしウノ置いてあるし。生徒会役員にいつも通りを貫いてもらわないと困るので、これで良いのだけれども。

「ふむ! ボクからも会長、キミは無粋であると言わざるを得ないね!」
「ハ? んだナルシストテメェ……」
自惚れ屋ナルシスト? 違うね、ボクはボクを正当に評価しているのさ! そして会長、ボクは彼の予想が正しいと確信もしている!」

うーん、レオさま相変わらず自信満々だな。まぁ確かに正当な評価なので自惚れというわけではないのだけれど。

「男の喧嘩に大将が出されて、下っ端で相手できるわけないよね~」
「……ンでそんな確信があんだよ」

やっぱ武藤さまって結構箱入りなんだな。副会長は不思議そうな顔をしているが、レオさまと双子さまはそれぞれ楽しそうにこちらを見ている。治安悪いんだなあの三人。

「え? だってダサいじゃん」
「は?」

めちゃくちゃ困惑されてしまった。

だが実際相手はイブキなわけで。
グラウンドの中央、今日何度も行ったこの場所にまた足を運ぶ。今回こそ誰も連れてこず、正真正銘一対一だった。

「来たか。せめて逃げ出す腑抜けじゃのうて、まぁよかったぜよ」
「アハハ! コチラこそ、獣のくせに美学は会してるみたいで助かった。低知能に合わせるのは大変だからな」
「そう口数増やしなさんなや、まっとう弱って見えるで」

やっぱこいつソリが合わないな。
ともかく、三本勝負──最後の戦いである。
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