王道学園のコミュ障ニセチャラ男くん、憧れの会長と同室になったようで

伊月乃鏡

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激動! 体育祭!

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三本勝負の競技者は前もって開示しておく、勝負の内容はイブキ側が決める、二本先行で勝ち。その辺りを中央で決め終わり、一旦解散ということで生徒会テントに戻って──

「死ぬかと思ったーーーッッッ!!!!!!!!!」

俺は崩れ落ちた。

「いや怖すぎ!! 馬鹿???? 人の胸ぐらを掴むなハムスターだと思って接しろ俺をーーッッ!!!!!!!!! 俺がハムスターだったとしたら胸ぐらとか掴まないだろ!?!?!?!?!?」
「ハムスターの胸ぐらってどこだよ」
「事前に服着せんだよ!!!!!!!」
「その時点でまぁストレスはたまってそうだよな」

いやまじで怖かった。常に死期が見えてた。イブキの背後あたりで死んだひいばあちゃんが手振ってたもん、絡みないのに。
スライディングするように崩れ落ちたため、口の中に引くほど砂入った。
萎え萎えプリン。帰りたいンゴねぇ~

「水瀬ェ、俺今から小さくて可愛いやつになるから……毎日草むしりしてわきどころを見つけてワイワイする生き物になるんだ……」
「ギリギリのことを言うなッッッッ」
「何が? 人としての尊厳が?」

だがこの話題は危なそうである。やめておこう。

おいおいと水瀬に縋りつき、オギャアオギャアと赤子のモノマネをしておく。精神統一である。嘘。もう戻りたくない、高校生に。

「ま~、宗介とは思えんくらい啖呵切ったよな。すげ~よお前」
「ほんまにぃ……?」
「エセ関西弁使うな、敵作るぞ」
「え厳し……飴と鞭じゃないじゃん。世間で言われてる飴と鞭って大体5:5の割合なのにお前1:9なんだよ」

もはやお前が敵になってるじゃん。
でも仕方ない。あんな啖呵切っておいてこの醜態は最悪。俺は使い捨てのガムシロップ。靴にへばりついたガム。飼い主に拾われなかった犬のうんこ……

イブキの迫力、えげつなかった。本能的な恐怖。あんなのとこれから戦うんですか? 終わりですか? 俺は平穏に学園生活を送りたいだけなのにどうしてこんなことに。おおむね俺が首突っ込んでてワロし。

「ハァまじで、どうしよ。何あいつ全然勝てる気せん。友達多くない? あんなのに友達たくさんいて俺は……俺はよぉ!!!!」
「現実見ろ、あんなのよりお前は秀でてないんだ」
「なんでそんな事実言うわけ? 死地に送られる俺に優しさとかない?」
「優しさっつーか……まぁ優しさ……なら優しくしてやるけど」

気分はドナドナである。なんなら直接もう屠畜場に運ばれてゆく気持ちでいる。勝つために頑張るけど勝てるかわかんない勝負っていつも無理にな──

「今、めちゃくちゃ役員揃ってるぜ」

──る……

えっ?

顔を上げる。
生徒会テントの日陰、ソファのあたり。確かに会長、副会長、双子ちゃんにレオさまと勢揃いしていた。
その後ろにいるのも、名だたる委員会の人々。風紀委員長たちもじっとこちらを見ている。

俺はグジュ、と鼻を啜った。瞬きをした拍子にボロボロと涙がこぼれ落ちる。
そりゃそうだ。文字通り水瀬に泣きついていたのだから。

「……これは、これは。意外な一面……というか」
「今の赤ちゃんっ!? すっごい似てたね!」「田中クンおもしろ~い!」
「フ……美しくないね! だが敵の前でその姿を見せない姿勢──marvelous!」
「顔を上げんかッッッ」
「ちょ、委員長いったん怒鳴るのやめましょ? なんかめっちゃ泣いてるし、こんな人だったんスね」

俺を殺せ。誰か。優しく、包み込むように!! 俺に殺したことを感知させずふんわりと一瞬で殺してくれ。

わいわいがやがやと、喧騒を取り戻した──というか俺が感知できるようになった生徒会テントには思ってるより人が勢揃いしていて、まぁ当たり前なんだが、さっき放送で呼ばれたわけだし。

俺はずっと立ち上がり、ズボンについた土埃をサッサッと払う。

「え~酷いなみんな~。揃ってたなら言ってよ~」
「無茶があんだろ」

武藤さままで……!!
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