47 / 200
激動! 体育祭!
15
しおりを挟む
今日はカレーライスを作る、と武藤様が宣言なされた。六時半、委員会活動から帰ってきて泥やら砂やらを落とし、今日の宿題をやっていた時分だった。キッチンに仁王立ちになっている武藤様を見つめ、首をかしげる。
「難易度下げすぎじゃな~い?」
「うるせぇ。良いから来いダメ人間がよ」
「ダメ人間て」
今なんか裏があったような気がするが、まぁ良いか。素直に呼ばれて隣に行くと、子供用包丁が渡された。肉とかがめっちゃ力入れないと切れないやつ。
……えっ、これわざわざ買ってきたの?
「前回、ニシンの血とお前の血が分からなくなったのを覚えてるか? カレーが作れるまで普通の包丁は触らせねぇ」
「そんなに……?」
「てめぇは手を切ったりポカをするとパニックになる。んで血を気にせず流水で洗おうとするとかいう最悪の事しでかすんだよ。雑菌とかしらねぇのか?」
「ぐうの音も出ないね~!」
パニックになったのをどうにか隠そうとして、血をダラダラ出したまま流水で汚れた魚を洗おうとしたのを思い出す。珍しく慌てたような武藤様に腕を掴まれめちゃくちゃ怒られた。
ちなみにこれは塩焼きにして後で食べた。
反論のしようがなかったので素直に子供用包丁を受け取った。今日からお前の名前は『リョウリツクルヤーツ』だ! よろしくな、クルヤーツ。
「まずは具材を切る。今日はルーを使うから、箱通りに作るぞ」
「えっ、スパイスとか入れないの~?」
「は? こういうのは箱通りに作るのが一番うめぇんだよ。素人は黙ってろ」
はい。
まぁ確かに、植物を育てるときも結局は先人の知恵、タネの裏に書いてある説明通りに育てるものだ。料理も似たような事なのだろう。
「あと、てめぇには指示を聞く練習をさせる。何度も何度も切り方をミスりやがって」
「あっはい」
どうやら相当ご立腹らしい。別に聞かないようにして聞いてないわけではない。目の前のことに精一杯だったのだ。だって魚捌くってすごい大変そうじゃない?
「肉は最後に切る。それじゃ切れねぇから、まずにんじん切ってみろ。おらピーラー」
「あい」
流石に野菜の皮くらい剥ける。おぼつかない手つきだが、どうにかこうにか一つ終わる。
終わったのを確認し、遅いと罵ることもなく武藤様は一つ頷いた。
「適当に切ってみろ。猫の手」
「ん……」
輪切りにして、さらにそれを半分にする。にんじんを切るくらいなら実家の手伝いでやったことあるし、特に危なげはなくこなせる。
意外と筋がいいんじゃない?
「おし、次はじゃがいも。芽がありゃとれ」
「どこで買ったのこれ~」
「高校付属のスーパー」
「んじゃ芽とかなくない?」
「万が一食ったらとんでもねぇから言ってんだよ。食品衛生法を理解してないダボはしっかりその頭に刻みつけとけ」
酷い言い草である。俺が武藤様に何言われてもご褒美と捉えるキモい人種じゃなかったら泣いてたぞ。
ただこれでも一応、くだらないこと聞くなと突き放してないだけ優しい方なのである。最近は態度が軟化してきていた。
武藤様が二個きり終わる間に俺は一つ皮を剥き終えて、一口大を指示される。いつも思うけどこの指示わけわかんない。とりあえず切ってみたが、ちょっと大きいかも。まぁ俺の一口ってことで。
「欲張ったな。んで次は玉ねぎ。冷蔵庫から出したやつをぬるくなる前に切る」
「なんで~?」
「玉ねぎの催涙成分は温度が上がると揮発して空気中に分散するからだ。これが揮発する前に切ると際類成分がある程度閉じ込められんだよ」
くわしい。そんな主婦の知恵みたいなとこまで詳しいんだ。流石は武藤様である。俺は感服した。
言われた通り急いで切ってみると全然涙が出てこない。すごい!
猫の手は忘れないように、できるだけ細かくみじん切りに。玉ねぎは溶けてる方が美味しいので……
「次は肉。肉は洗って、具材どかせ。まな板変える」
「生肉は同じ場所で使っちゃダメなんだっけ?」
「そんくらいは流石に知ってたかよ」
武藤様の手際はいい。指示してる割に全部自分でやってた。包丁を取り替えられるが、それも子供用のものだった。
「切る練習すっから、ゆっくりやれ。どうせ切れん」
っダン!
「から」
子供用包丁は切れ味が悪い。
さらに細かくしていこうとすれば、武藤様に腕を掴まれた。
「ゴリラはいいから野生に帰れ……!!」
「なんでぇ!?」
具材を切り終われば全部鍋にぶち込んで炒め始める。中火で玉ねぎがしんなりするまで炒めると言われたが、よく分からん。細かく切りすぎた。
とりあえず良さげかな、と思ったあたりで(何しろ玉ねぎが焦げているので)用意された水を入れる。
「弱火でじっくり煮込む。はちみつ入れっから、二十分くらいか?」
ハチミツがここで投入された。なるほどこれが隠し味。愛情の味なのか。
「なんで強火じゃダメなの? 火が通れば良くな~い?」
「てめぇは文明に親しくないから分からんだろうが、弱火と強火じゃ火の通り方がちげーんだよ」
めちゃくちゃ酷い言い草である。
「難易度下げすぎじゃな~い?」
「うるせぇ。良いから来いダメ人間がよ」
「ダメ人間て」
今なんか裏があったような気がするが、まぁ良いか。素直に呼ばれて隣に行くと、子供用包丁が渡された。肉とかがめっちゃ力入れないと切れないやつ。
……えっ、これわざわざ買ってきたの?
「前回、ニシンの血とお前の血が分からなくなったのを覚えてるか? カレーが作れるまで普通の包丁は触らせねぇ」
「そんなに……?」
「てめぇは手を切ったりポカをするとパニックになる。んで血を気にせず流水で洗おうとするとかいう最悪の事しでかすんだよ。雑菌とかしらねぇのか?」
「ぐうの音も出ないね~!」
パニックになったのをどうにか隠そうとして、血をダラダラ出したまま流水で汚れた魚を洗おうとしたのを思い出す。珍しく慌てたような武藤様に腕を掴まれめちゃくちゃ怒られた。
ちなみにこれは塩焼きにして後で食べた。
反論のしようがなかったので素直に子供用包丁を受け取った。今日からお前の名前は『リョウリツクルヤーツ』だ! よろしくな、クルヤーツ。
「まずは具材を切る。今日はルーを使うから、箱通りに作るぞ」
「えっ、スパイスとか入れないの~?」
「は? こういうのは箱通りに作るのが一番うめぇんだよ。素人は黙ってろ」
はい。
まぁ確かに、植物を育てるときも結局は先人の知恵、タネの裏に書いてある説明通りに育てるものだ。料理も似たような事なのだろう。
「あと、てめぇには指示を聞く練習をさせる。何度も何度も切り方をミスりやがって」
「あっはい」
どうやら相当ご立腹らしい。別に聞かないようにして聞いてないわけではない。目の前のことに精一杯だったのだ。だって魚捌くってすごい大変そうじゃない?
「肉は最後に切る。それじゃ切れねぇから、まずにんじん切ってみろ。おらピーラー」
「あい」
流石に野菜の皮くらい剥ける。おぼつかない手つきだが、どうにかこうにか一つ終わる。
終わったのを確認し、遅いと罵ることもなく武藤様は一つ頷いた。
「適当に切ってみろ。猫の手」
「ん……」
輪切りにして、さらにそれを半分にする。にんじんを切るくらいなら実家の手伝いでやったことあるし、特に危なげはなくこなせる。
意外と筋がいいんじゃない?
「おし、次はじゃがいも。芽がありゃとれ」
「どこで買ったのこれ~」
「高校付属のスーパー」
「んじゃ芽とかなくない?」
「万が一食ったらとんでもねぇから言ってんだよ。食品衛生法を理解してないダボはしっかりその頭に刻みつけとけ」
酷い言い草である。俺が武藤様に何言われてもご褒美と捉えるキモい人種じゃなかったら泣いてたぞ。
ただこれでも一応、くだらないこと聞くなと突き放してないだけ優しい方なのである。最近は態度が軟化してきていた。
武藤様が二個きり終わる間に俺は一つ皮を剥き終えて、一口大を指示される。いつも思うけどこの指示わけわかんない。とりあえず切ってみたが、ちょっと大きいかも。まぁ俺の一口ってことで。
「欲張ったな。んで次は玉ねぎ。冷蔵庫から出したやつをぬるくなる前に切る」
「なんで~?」
「玉ねぎの催涙成分は温度が上がると揮発して空気中に分散するからだ。これが揮発する前に切ると際類成分がある程度閉じ込められんだよ」
くわしい。そんな主婦の知恵みたいなとこまで詳しいんだ。流石は武藤様である。俺は感服した。
言われた通り急いで切ってみると全然涙が出てこない。すごい!
猫の手は忘れないように、できるだけ細かくみじん切りに。玉ねぎは溶けてる方が美味しいので……
「次は肉。肉は洗って、具材どかせ。まな板変える」
「生肉は同じ場所で使っちゃダメなんだっけ?」
「そんくらいは流石に知ってたかよ」
武藤様の手際はいい。指示してる割に全部自分でやってた。包丁を取り替えられるが、それも子供用のものだった。
「切る練習すっから、ゆっくりやれ。どうせ切れん」
っダン!
「から」
子供用包丁は切れ味が悪い。
さらに細かくしていこうとすれば、武藤様に腕を掴まれた。
「ゴリラはいいから野生に帰れ……!!」
「なんでぇ!?」
具材を切り終われば全部鍋にぶち込んで炒め始める。中火で玉ねぎがしんなりするまで炒めると言われたが、よく分からん。細かく切りすぎた。
とりあえず良さげかな、と思ったあたりで(何しろ玉ねぎが焦げているので)用意された水を入れる。
「弱火でじっくり煮込む。はちみつ入れっから、二十分くらいか?」
ハチミツがここで投入された。なるほどこれが隠し味。愛情の味なのか。
「なんで強火じゃダメなの? 火が通れば良くな~い?」
「てめぇは文明に親しくないから分からんだろうが、弱火と強火じゃ火の通り方がちげーんだよ」
めちゃくちゃ酷い言い草である。
95
お気に入りに追加
326
あなたにおすすめの小説
フリーダム!!!~チャラ男の俺が王道学園の生徒会会計になっちゃった話~
いちき
BL
王道学園で起こるアンチ王道気味のBL作品。 女の子大好きなチャラ男会計受け。 生真面目生徒会長、腐男子幼馴染、クール一匹狼等と絡んでいきます。王道的生徒会役員は、王道転入生に夢中。他サイトからの転載です。
※5章からは偶数日の日付が変わる頃に更新します!
※前アカウントで投稿していた同名作品の焼き直しです。
学園の天使は今日も嘘を吐く
まっちゃ
BL
「僕って何で生きてるんだろ、、、?」
家族に幼い頃からずっと暴言を言われ続け自己肯定感が低くなってしまい、生きる希望も持たなくなってしまった水無瀬瑠依(みなせるい)。高校生になり、全寮制の学園に入ると生徒会の会計になったが家族に暴言を言われたのがトラウマになっており素の自分を出すのが怖くなってしまい、嘘を吐くようになる
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初投稿です。文がおかしいところが多々あると思いますが温かい目で見てくれると嬉しいです。

とある金持ち学園に通う脇役の日常~フラグより飯をくれ~
無月陸兎
BL
山奥にある全寮制男子校、桜白峰学園。食べ物目当てで入学した主人公は、学園の権力者『REGAL4』の一人、一条貴春の不興を買い、学園中からハブられることに。美味しい食事さえ楽しめれば問題ないと気にせず過ごしてたが、転入生の扇谷時雨がやってきたことで、彼の日常は波乱に満ちたものとなる──。
自分の親友となった時雨が学園の人気者たちに迫られるのを横目で見つつ、主人公は巻き込まれて恋人のフリをしたり、ゆるく立ちそうな恋愛フラグを避けようと奮闘する物語です。
いとしの生徒会長さま
もりひろ
BL
大好きな親友と楽しい高校生活を送るため、急きょアメリカから帰国した俺だけど、編入した学園は、とんでもなく変わっていた……!
しかも、生徒会長になれとか言われるし。冗談じゃねえっつの!
目立たないでと言われても
みつば
BL
「お願いだから、目立たないで。」
******
山奥にある私立琴森学園。この学園に季節外れの転入生がやってきた。担任に頼まれて転入生の世話をすることになってしまった俺、藤崎湊人。引き受けたはいいけど、この転入生はこの学園の人気者に気に入られてしまって……
25話で本編完結+番外編4話
病んでる僕は、
蒼紫
BL
『特に理由もなく、
この世界が嫌になった。
愛されたい
でも、縛られたくない
寂しいのも
めんどくさいのも
全部嫌なんだ。』
特に取り柄もなく、短気で、我儘で、それでいて臆病で繊細。
そんな少年が王道学園に転校してきた5月7日。
彼が転校してきて何もかもが、少しずつ変わっていく。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
最初のみ三人称 その後は基本一人称です。
お知らせをお読みください。
エブリスタでも投稿してましたがこちらをメインで活動しようと思います。
(エブリスタには改訂前のものしか載せてません)
勇者召喚に巻き込まれて追放されたのに、どうして王子のお前がついてくる。
イコ
BL
魔族と戦争を繰り広げている王国は、人材不足のために勇者召喚を行なった。
力ある勇者たちは優遇され、巻き込まれた主人公は追放される。
だが、そんな主人公に優しく声をかけてくれたのは、召喚した側の第五王子様だった。
イケメンの王子様の領地で一緒に領地経営? えっ、男女どっちでも結婚ができる?
頼りになる俺を手放したくないから結婚してほしい?
俺、男と結婚するのか?

王様は知らない
イケのタコ
BL
他のサイトに載せていた、2018年の作品となります
性格悪な男子高生が俺様先輩に振り回される。
裏庭で昼ご飯を食べようとしていた弟切(主人公)は、ベンチで誰かが寝ているのを発見し、気まぐれで近づいてみると学校の有名人、王様に出会ってしまう。
その偶然の出会いが波乱を巻き起こす。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる