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激動! 体育祭!
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放課後の委員会活動では、リレーの選手に選ばれたという獅童くんが少し遅れてくることになった。あの運動神経だからな。
獅童くんが入ったことによって、園芸委員会のグループはわりと活発化している。曰く二年のみのグループもあるらしい。悪口とか言われてたらやだな~~
「はぁ~、ちょっと遅れちゃった……ん?」
本校舎から旧校舎に向かう坂道に走っていると、目の端に人影をとらえた……気がした。
(水瀬? いや、今日はもう上にいるはず……)
足を止めてじっと街路樹の方を観察するも、誰も見当たらない。
え、もしかしてお化け──と震えるのは三流の仕事。というか旧校舎は七不思議のうち八個くらいある場所なので、お化け程度いまさらである。
「園芸委員会の誰かとか……? だとしたら隠れる必要あんのかな」
トレース台とか、造園を始めるための諸々が旧校舎には揃っているため、時折人がやってくる。
基本的に本校舎の中庭の方が近いし来るのに疲れないので見られているのだけれど。まぁ時々、俺が試験的に育ててる植物を見に来る人なんていないしな。
「……?」
人影の方向に歩いていくと、道に何か落ちているのが見えた。
拾い上げると……小冊子? 何か見たことがあるような──
「あ!」
裏返したら『植物育成キット』の文字。見たことのある文字である。どころかめちゃくちゃ覚えのある。
思い出した、俺が昔クラファンで返礼品に作ってたやつだ。お金をあんまりかけられなかったから、十六ページ綴りのでっかい紙を印刷して折って作ったもの。
「しかし、何でこんなものがここに……? うわー、今見ると拙いなぁ……何年前のものだよ」
手元に冊子は残っていないので、見るのは久しぶりだ。何もかもが拙くて見ていられないが、夜通し出来る限り見やすいようにと書いていた思い出がある。
絵をつけて、文字も平易なものを選んで、いろんな色を使って。
「うわ、決めつけで書くなよな~、今じゃ否定されてるしこのコラム。ああ~デッサン間違ってる。葉脈の形だけ捉えてれば良いと思うなよ……病気の技術が足りんし……」
しかし黒歴史である。文字のテンションが高くて痛々しいし、ドヤ顔で載せたコラムは今の学説では否定されている。恥ずかしすぎる。
けれど。
めくる紙が薄くなっていて、ボロボロで、色褪せている。付箋や罫線、カラーペンでの書き込みが細かく、新しく調べて書いたのだろう。今に合わせて補足をつけられている。大事にされている本の形。
「……いい人に貰われたな」
小冊子なんて誰が喜ぶんだと思わないでもなかったが、ここまで大切にしてもらえていたら作って良かったと思わざるを得ない。
「センパイ!」
「あれ、獅童くん!?」
冊子を読み返していると、遠くからすごい勢いでポメラニアンのような人影が突進してきた。それを難なく受け止め、まろいほっぺを嬉しそうに染めている後輩を迎える。
「なんしょっとですか? こんなとこでぼーっとしてからに! ミナセ先輩が待っとりますよ!」
「いや、ちょっと拾い物……獅童くんこそ、帰ってくるの早いね? 練習は?」
「全員ぶっちぎって帰ってきました!」
「そういう奴じゃないから……」
まぁ、リレー練習って結構名ばかりでガチ競技に発展する事がある。今回はそんな感じだったのだろう。人影の気配はいつの間にか無くなっている。
「あー、冊子返し忘れた……」
「何がです?」
「ン、なんでもない」
まぁ、俺が拾ったのはわかってるだろうし……いつか取り返しに来るだろう。
獅童くんが入ったことによって、園芸委員会のグループはわりと活発化している。曰く二年のみのグループもあるらしい。悪口とか言われてたらやだな~~
「はぁ~、ちょっと遅れちゃった……ん?」
本校舎から旧校舎に向かう坂道に走っていると、目の端に人影をとらえた……気がした。
(水瀬? いや、今日はもう上にいるはず……)
足を止めてじっと街路樹の方を観察するも、誰も見当たらない。
え、もしかしてお化け──と震えるのは三流の仕事。というか旧校舎は七不思議のうち八個くらいある場所なので、お化け程度いまさらである。
「園芸委員会の誰かとか……? だとしたら隠れる必要あんのかな」
トレース台とか、造園を始めるための諸々が旧校舎には揃っているため、時折人がやってくる。
基本的に本校舎の中庭の方が近いし来るのに疲れないので見られているのだけれど。まぁ時々、俺が試験的に育ててる植物を見に来る人なんていないしな。
「……?」
人影の方向に歩いていくと、道に何か落ちているのが見えた。
拾い上げると……小冊子? 何か見たことがあるような──
「あ!」
裏返したら『植物育成キット』の文字。見たことのある文字である。どころかめちゃくちゃ覚えのある。
思い出した、俺が昔クラファンで返礼品に作ってたやつだ。お金をあんまりかけられなかったから、十六ページ綴りのでっかい紙を印刷して折って作ったもの。
「しかし、何でこんなものがここに……? うわー、今見ると拙いなぁ……何年前のものだよ」
手元に冊子は残っていないので、見るのは久しぶりだ。何もかもが拙くて見ていられないが、夜通し出来る限り見やすいようにと書いていた思い出がある。
絵をつけて、文字も平易なものを選んで、いろんな色を使って。
「うわ、決めつけで書くなよな~、今じゃ否定されてるしこのコラム。ああ~デッサン間違ってる。葉脈の形だけ捉えてれば良いと思うなよ……病気の技術が足りんし……」
しかし黒歴史である。文字のテンションが高くて痛々しいし、ドヤ顔で載せたコラムは今の学説では否定されている。恥ずかしすぎる。
けれど。
めくる紙が薄くなっていて、ボロボロで、色褪せている。付箋や罫線、カラーペンでの書き込みが細かく、新しく調べて書いたのだろう。今に合わせて補足をつけられている。大事にされている本の形。
「……いい人に貰われたな」
小冊子なんて誰が喜ぶんだと思わないでもなかったが、ここまで大切にしてもらえていたら作って良かったと思わざるを得ない。
「センパイ!」
「あれ、獅童くん!?」
冊子を読み返していると、遠くからすごい勢いでポメラニアンのような人影が突進してきた。それを難なく受け止め、まろいほっぺを嬉しそうに染めている後輩を迎える。
「なんしょっとですか? こんなとこでぼーっとしてからに! ミナセ先輩が待っとりますよ!」
「いや、ちょっと拾い物……獅童くんこそ、帰ってくるの早いね? 練習は?」
「全員ぶっちぎって帰ってきました!」
「そういう奴じゃないから……」
まぁ、リレー練習って結構名ばかりでガチ競技に発展する事がある。今回はそんな感じだったのだろう。人影の気配はいつの間にか無くなっている。
「あー、冊子返し忘れた……」
「何がです?」
「ン、なんでもない」
まぁ、俺が拾ったのはわかってるだろうし……いつか取り返しに来るだろう。
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