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激動! 体育祭!
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水瀬にハリガネムシをただプレゼントするのも癪なので、何かドッキリを仕掛けたいと思う。
何がいいかな。あいつ虫は得意なんだよな。虫に得意とかないけど、全然驚かない。
というか水瀬は基本的に驚かない。
昔あいつの実家にあるプロジェクタで一世を風靡した伝説級ホラー映画を見た時も、めちゃくちゃ“無”だった。
目の前で主人公が息を詰めて化け物から身を潜めてるのに、普通に音立ててポップコーン食ってた。イカれているんだと思う。
「何か手がありそうなものなんだけど」
今日は応援合戦の練習である。パネルでのパフォーマンスのため、ステージにそれぞれ並び指示通り赤青黄色のパネルを捲る。
これ全体像どうなってんだろ。
「田中さんがご思案されてる……」「コトを起こすつもり……ってぇことか」「Fクラスの奴らにシマを荒らされたこと、もうご存知で!?」「さすが田中さんだぜ」
周囲の喧騒は無視しておく。本当にやめてほしい。シマ荒らされたのは確かに良くないけど自分たちでどうにかしてくれ、怪我はしないでね。
いやでもこれ、俺が止めないと何かやらかすヤツだな。コミュ障は面倒ごとの気配に敏感なのである。特に信者と呼ばれる人らは、解釈次第でとんでもない方向に転換しがちだ。
「ま、今はいっか」
「……!? あいつらの事を見逃すってことか!?」「待て、田中さんにも考えがあんだよ」「今は泳がせる……ってことっすね……!」「何で懐がふけぇんだ、痺れるぜ」
これからはクラスでの言動も要注意だ。
祭り上げられて学校の不良なんて、冗談じゃない。俺は喧嘩が強い訳でもないのだし、殴り合ってわかりあう~なんて文化にもとんと縁がない。平穏に暮らせればそれで良いのだから。
「そこ! 私語するな!」
ヒェ、風紀委員長!
真面目な声で注意が飛ぶ。少し硬いところはあれど、あらゆる武道を嗜んでいる武藤様と渡り合う程度に風気委員長はお強い。伊達にこのカス治安高校で取り締まってきた訳ではないのだ。
……そのためか、血気盛んな我がクラスもきちんとしたがっている。血気盛んというか、獅童くんが何をしたのか下っ端不良みたいな言動が増えてきているのだが。
(俺の話もこのくらいは聞いてくれたらいいんだけど)
ふぅ、とため息を吐く。クラスに安寧がない。
高い笛の音に合わせてパネルを捲る音が静かに響いた。ブロック長が時折止めては全体の確認をしていて、それを休憩時間にとおしゃべりが増える。笛の指示が出ていない間は、そこまで厳しく取り締まられない。
(とはいえ……喋れる相手もいないんだけど……)
また溜め息。友達がいないってしんどい。
仕方がないのでひたすら前を見つめていたら、肩を軽く叩かれる。
何か粗相でもしてたかと慌てて振り返り──
「こうちゃん!」
「ん」
「どしたの……って、そっか! 生徒会!」
すぐ後ろにこうちゃんが座っていた。
そっか、生徒会って出入りあるから端っこの方に固められるもんな。俺も得点板あるから時々出るし。
多分向こうの端には他の役員も居るんだろう。
「良かったぁ、今日話しかけにいっていいのかな~って思ってた!」
「? いつでも良い」
「え~、でも不自然じゃない? こうちゃんテラス席で食べてるしさ」
「どうせ休日に会う……」
「そゆことじゃない、わかるかな~」
この青春感。というかワンオペ嫌って言った割にまだ店員するんだ、こうちゃんってもしかしてひまりさんに弱い?
料理練習してると伝えれば、こうちゃんが微かに笑った。前の方で親衛隊が倒れている。わかる、わかるよ……
「今度こそゲーセンリベンジ! グランドワンとかも行きたい」
「倒れる」
「調べたんだけど~、ちょっとずつ通ったら慣れるかもだって~! なにしろ、ハジメテだったからね~。おすすめゲームある?」
帰って聴覚過敏について調べたが、短時間ずつ長めに通えば慣れることもあるらしい。そうなれば今度こそあのテロンとした猫をとりたい。
「ワールド・オブ・ザ・デッド」
「ゾンビ撃ちまくるヤツ!? 意外~!」
「楽しい」
「エイム良さそ~」
何がいいかな。あいつ虫は得意なんだよな。虫に得意とかないけど、全然驚かない。
というか水瀬は基本的に驚かない。
昔あいつの実家にあるプロジェクタで一世を風靡した伝説級ホラー映画を見た時も、めちゃくちゃ“無”だった。
目の前で主人公が息を詰めて化け物から身を潜めてるのに、普通に音立ててポップコーン食ってた。イカれているんだと思う。
「何か手がありそうなものなんだけど」
今日は応援合戦の練習である。パネルでのパフォーマンスのため、ステージにそれぞれ並び指示通り赤青黄色のパネルを捲る。
これ全体像どうなってんだろ。
「田中さんがご思案されてる……」「コトを起こすつもり……ってぇことか」「Fクラスの奴らにシマを荒らされたこと、もうご存知で!?」「さすが田中さんだぜ」
周囲の喧騒は無視しておく。本当にやめてほしい。シマ荒らされたのは確かに良くないけど自分たちでどうにかしてくれ、怪我はしないでね。
いやでもこれ、俺が止めないと何かやらかすヤツだな。コミュ障は面倒ごとの気配に敏感なのである。特に信者と呼ばれる人らは、解釈次第でとんでもない方向に転換しがちだ。
「ま、今はいっか」
「……!? あいつらの事を見逃すってことか!?」「待て、田中さんにも考えがあんだよ」「今は泳がせる……ってことっすね……!」「何で懐がふけぇんだ、痺れるぜ」
これからはクラスでの言動も要注意だ。
祭り上げられて学校の不良なんて、冗談じゃない。俺は喧嘩が強い訳でもないのだし、殴り合ってわかりあう~なんて文化にもとんと縁がない。平穏に暮らせればそれで良いのだから。
「そこ! 私語するな!」
ヒェ、風紀委員長!
真面目な声で注意が飛ぶ。少し硬いところはあれど、あらゆる武道を嗜んでいる武藤様と渡り合う程度に風気委員長はお強い。伊達にこのカス治安高校で取り締まってきた訳ではないのだ。
……そのためか、血気盛んな我がクラスもきちんとしたがっている。血気盛んというか、獅童くんが何をしたのか下っ端不良みたいな言動が増えてきているのだが。
(俺の話もこのくらいは聞いてくれたらいいんだけど)
ふぅ、とため息を吐く。クラスに安寧がない。
高い笛の音に合わせてパネルを捲る音が静かに響いた。ブロック長が時折止めては全体の確認をしていて、それを休憩時間にとおしゃべりが増える。笛の指示が出ていない間は、そこまで厳しく取り締まられない。
(とはいえ……喋れる相手もいないんだけど……)
また溜め息。友達がいないってしんどい。
仕方がないのでひたすら前を見つめていたら、肩を軽く叩かれる。
何か粗相でもしてたかと慌てて振り返り──
「こうちゃん!」
「ん」
「どしたの……って、そっか! 生徒会!」
すぐ後ろにこうちゃんが座っていた。
そっか、生徒会って出入りあるから端っこの方に固められるもんな。俺も得点板あるから時々出るし。
多分向こうの端には他の役員も居るんだろう。
「良かったぁ、今日話しかけにいっていいのかな~って思ってた!」
「? いつでも良い」
「え~、でも不自然じゃない? こうちゃんテラス席で食べてるしさ」
「どうせ休日に会う……」
「そゆことじゃない、わかるかな~」
この青春感。というかワンオペ嫌って言った割にまだ店員するんだ、こうちゃんってもしかしてひまりさんに弱い?
料理練習してると伝えれば、こうちゃんが微かに笑った。前の方で親衛隊が倒れている。わかる、わかるよ……
「今度こそゲーセンリベンジ! グランドワンとかも行きたい」
「倒れる」
「調べたんだけど~、ちょっとずつ通ったら慣れるかもだって~! なにしろ、ハジメテだったからね~。おすすめゲームある?」
帰って聴覚過敏について調べたが、短時間ずつ長めに通えば慣れることもあるらしい。そうなれば今度こそあのテロンとした猫をとりたい。
「ワールド・オブ・ザ・デッド」
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「楽しい」
「エイム良さそ~」
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