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激動! 体育祭!
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「別に人間自転車とかおれ望んでないからね~? ほら子犬ちゃんたち、ハムだよ。これ食べて帰ってね」
「きゅーん、きゅーん」
「ひゃうーん……」
六人には手持ちのハムをあげて帰ってもらった。武藤様が芋を消費し切ってくれたので、最近はこの高校に入ってるコンビニで好きなものを買って食べられるようになったのだ。
「ほーら、おいしい? おいしいねー授業受けに帰りな~(なんでこの人ら手で受け取らないんだろう……)」
こんなすごい、なんだこれになってしまった彼らも生徒は生徒──しかも同学年──なのでチャラ男として接する。意味あんのかなこれ。人間の言葉理解してなさそうだしな。
これ以上この空間にいたらおかしくなる。逃げるように走り、三年Cクラスの集まりに合流した。
「田中くん、遅いですよッヒ」
「すみません! いや睨むな周囲」
『ウス! すんません!』
こんなことになってもいつも通り叱ってくれる担任は宝である。よれたジャージにメガネのまるでだらしないおじさんだが、いい先生なのだ。
出席番号順なので、あらかじめ開けられていた場所に並ぶ。号令通り前ならえ、右向け右、左向け左、回れ右を順当に素直にこなした。こう言う時は他の生徒もふざけない。こちらをガン見しながら号令に従ってるやつは無視することにする。首どうなってるんだそれ。
「はい、じゃあ聞いてる通り、今日はAクラスと初の合同練習です。例年通り学年含めての合同練習なので大人数ですね。怪我や事故等ないように」
「はーい」
「せんせーめっちゃグラウンド狭いです」
「他二つのグラウンドは使用中ですんで我慢してください」
「人が多い」「なんでいっつもまとめて授業すんの?」「国語とか受けとけよ……」「今他教科の先生めちゃくちゃ暇なんだろうな」
体育祭の組み分けは三つあり、それぞれの運動能力を加味して組み分けられる。
今年はA・Cクラス、B・Dクラス、E・Fクラス。
それぞれコバルトブルーブロック、コチニールレッドブロック、キングフィッシャーブルーブロックだ。青と赤と紫って言え……この並びで紫選ばれるの珍しすぎるだろ。青ブロックと若干名前被ってるし。
「今年赤ブロックって誰いんだっけ。あーでもBの梶本たしかなんかの賞取ってたよな」
「Fクラスの伊東、めちゃくちゃ足速いって」
「アイツね。紫ブロック要注意だな」
普通に訳されちゃってるよ。これ考えたのぜったいレオ様だろ。予想に違わないなあの人は。
「ンンーキミたち! せっかく美しい名を付けてあげたのだから、きちんと呼びたまえよ!」
「長ぇ~」
「放送部ブチギレてたしな」
予想に違わないなこの人は。
三年Aクラスは準備運動が終わったらしく、レオ様が絡みに来ていた。ブロックの名前を正しく言わないとどこからともなく現れるので有名である。
「普通に紫とか青でよくね? なんでダメなん?」
「フッ、いいことを聞いてくれたねモブ谷くん」
「百舌鳥谷な」
すげ~名前。
レオ様は疑念の声にふっと美しく笑い、ふぁさりと髪を掻き上げた。
「──美しくない」
「ウワーーーーーッッ色彩部の部長が暴走し始めたぞ!!」
「アイツは家が印刷会社で色彩に命を掛けてるからな、納得いかなかったんだろう……!」
「抑えろ! 抑えろッどうどう!」
後ろの方でクラスメイトが暴徒化していた。レオ様がそれを気にすることはなく、五月の風に決めポーズをしている。俺は後ろで取り押さえられているクラスメイトが気になって仕方がないが。
いろんな面白いことが起こっているが、仲の良い友達がクラスに一人もいない俺はぽつねんとしていた。クラスメイトも、最近は「田中さんがお一人でいる時に話しかけたら思索の邪魔になる」とか言って話しかけてくれない。
元々話す相手も大していないのだけど。
仕方ないので口元に笑みを浮かべながら少し喧騒から離れ、馬鹿馬鹿しい騒ぎは好きではない気まぐれなチャラ男を演じておいた。
「よーおコミュ障。あんな騒ぎになったのに友達出来んかったんか?」
「み、みなっ、ひろちゃん!」
「わはは」
突然の水瀬。
一瞬チャラ男モードが剥がれ掛け、どうにか仮面を被り直す。危ない危ない。
「大変だな、プライドだけ高く不測の事態に弱く他人の勘違いを修正して失望される勇気のないコミュ障は」
「すごいけなすじゃん……酷い……一番酷いのは全部事実なおれなんだけど」
だがこの事実陳列罪が水瀬って感じだ。最近獅童くんと三人で話すことが多くなってここまでビシバシ言われることも少なくなってきたので、なんだか安心する。エムではない。
「てか、ひろちゃんがAクラスなのいっつも新鮮に意外なんだけど~」
「三年これなのに……? お前わりと状況への適応能力が“無”だよな」
それはそう。基本的に周りの状況が動き、それに驚いて固まっているうちにまた別の状況に陥っている。周囲はそれを適応していると捉えてくれるのだが、いつもしみじみと驚いているだけなので……
「二人三脚の練習するらしいからさっさとペア組んでこい」
「え!? それいつ言ったの……?」
「さっき。もうみんな仲良い奴とペア組んでる」
「うええええ」
なので、こんなふうにおいてかれることが多々ある。水瀬がいて良かった。
……ん? 組んでこい?
「あ、俺はもう部活のやつとペア組むことなってるから。はよ探せ、一人のやつを」
「浮気者!!」
「どっちが。ほらみんなもうペア組んでるから……おーい犬神!! いいとこに! ちょっ来い!」
「え? うそちょっと待って頑張るからちゃんとやるからそんな大物に声かけんでッ」
「こいつペア今いないんだよね。お前もでかいから余ってるんだろ? 組んでやってくれん? こいつも結構背高いしさ……あ、良い? せんきゅ!」
う、裏切り者ーーッッ!!
「きゅーん、きゅーん」
「ひゃうーん……」
六人には手持ちのハムをあげて帰ってもらった。武藤様が芋を消費し切ってくれたので、最近はこの高校に入ってるコンビニで好きなものを買って食べられるようになったのだ。
「ほーら、おいしい? おいしいねー授業受けに帰りな~(なんでこの人ら手で受け取らないんだろう……)」
こんなすごい、なんだこれになってしまった彼らも生徒は生徒──しかも同学年──なのでチャラ男として接する。意味あんのかなこれ。人間の言葉理解してなさそうだしな。
これ以上この空間にいたらおかしくなる。逃げるように走り、三年Cクラスの集まりに合流した。
「田中くん、遅いですよッヒ」
「すみません! いや睨むな周囲」
『ウス! すんません!』
こんなことになってもいつも通り叱ってくれる担任は宝である。よれたジャージにメガネのまるでだらしないおじさんだが、いい先生なのだ。
出席番号順なので、あらかじめ開けられていた場所に並ぶ。号令通り前ならえ、右向け右、左向け左、回れ右を順当に素直にこなした。こう言う時は他の生徒もふざけない。こちらをガン見しながら号令に従ってるやつは無視することにする。首どうなってるんだそれ。
「はい、じゃあ聞いてる通り、今日はAクラスと初の合同練習です。例年通り学年含めての合同練習なので大人数ですね。怪我や事故等ないように」
「はーい」
「せんせーめっちゃグラウンド狭いです」
「他二つのグラウンドは使用中ですんで我慢してください」
「人が多い」「なんでいっつもまとめて授業すんの?」「国語とか受けとけよ……」「今他教科の先生めちゃくちゃ暇なんだろうな」
体育祭の組み分けは三つあり、それぞれの運動能力を加味して組み分けられる。
今年はA・Cクラス、B・Dクラス、E・Fクラス。
それぞれコバルトブルーブロック、コチニールレッドブロック、キングフィッシャーブルーブロックだ。青と赤と紫って言え……この並びで紫選ばれるの珍しすぎるだろ。青ブロックと若干名前被ってるし。
「今年赤ブロックって誰いんだっけ。あーでもBの梶本たしかなんかの賞取ってたよな」
「Fクラスの伊東、めちゃくちゃ足速いって」
「アイツね。紫ブロック要注意だな」
普通に訳されちゃってるよ。これ考えたのぜったいレオ様だろ。予想に違わないなあの人は。
「ンンーキミたち! せっかく美しい名を付けてあげたのだから、きちんと呼びたまえよ!」
「長ぇ~」
「放送部ブチギレてたしな」
予想に違わないなこの人は。
三年Aクラスは準備運動が終わったらしく、レオ様が絡みに来ていた。ブロックの名前を正しく言わないとどこからともなく現れるので有名である。
「普通に紫とか青でよくね? なんでダメなん?」
「フッ、いいことを聞いてくれたねモブ谷くん」
「百舌鳥谷な」
すげ~名前。
レオ様は疑念の声にふっと美しく笑い、ふぁさりと髪を掻き上げた。
「──美しくない」
「ウワーーーーーッッ色彩部の部長が暴走し始めたぞ!!」
「アイツは家が印刷会社で色彩に命を掛けてるからな、納得いかなかったんだろう……!」
「抑えろ! 抑えろッどうどう!」
後ろの方でクラスメイトが暴徒化していた。レオ様がそれを気にすることはなく、五月の風に決めポーズをしている。俺は後ろで取り押さえられているクラスメイトが気になって仕方がないが。
いろんな面白いことが起こっているが、仲の良い友達がクラスに一人もいない俺はぽつねんとしていた。クラスメイトも、最近は「田中さんがお一人でいる時に話しかけたら思索の邪魔になる」とか言って話しかけてくれない。
元々話す相手も大していないのだけど。
仕方ないので口元に笑みを浮かべながら少し喧騒から離れ、馬鹿馬鹿しい騒ぎは好きではない気まぐれなチャラ男を演じておいた。
「よーおコミュ障。あんな騒ぎになったのに友達出来んかったんか?」
「み、みなっ、ひろちゃん!」
「わはは」
突然の水瀬。
一瞬チャラ男モードが剥がれ掛け、どうにか仮面を被り直す。危ない危ない。
「大変だな、プライドだけ高く不測の事態に弱く他人の勘違いを修正して失望される勇気のないコミュ障は」
「すごいけなすじゃん……酷い……一番酷いのは全部事実なおれなんだけど」
だがこの事実陳列罪が水瀬って感じだ。最近獅童くんと三人で話すことが多くなってここまでビシバシ言われることも少なくなってきたので、なんだか安心する。エムではない。
「てか、ひろちゃんがAクラスなのいっつも新鮮に意外なんだけど~」
「三年これなのに……? お前わりと状況への適応能力が“無”だよな」
それはそう。基本的に周りの状況が動き、それに驚いて固まっているうちにまた別の状況に陥っている。周囲はそれを適応していると捉えてくれるのだが、いつもしみじみと驚いているだけなので……
「二人三脚の練習するらしいからさっさとペア組んでこい」
「え!? それいつ言ったの……?」
「さっき。もうみんな仲良い奴とペア組んでる」
「うええええ」
なので、こんなふうにおいてかれることが多々ある。水瀬がいて良かった。
……ん? 組んでこい?
「あ、俺はもう部活のやつとペア組むことなってるから。はよ探せ、一人のやつを」
「浮気者!!」
「どっちが。ほらみんなもうペア組んでるから……おーい犬神!! いいとこに! ちょっ来い!」
「え? うそちょっと待って頑張るからちゃんとやるからそんな大物に声かけんでッ」
「こいつペア今いないんだよね。お前もでかいから余ってるんだろ? 組んでやってくれん? こいつも結構背高いしさ……あ、良い? せんきゅ!」
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