15 / 200
14.俺様生徒会長は〇〇がお好き
しおりを挟む
──ヤベェ。
俺様生徒会長こと武藤瑛一。圧倒的なカリスマに運動勉強ともにトップクラスの実力、抱かれたい男ランキング一位の美貌と経済界を掌握する名家の御曹司。
そんな瑛一は今、たいそう焦っていた。
「うう……何もせずにごはんがたべたい……あんまり働きたくもない……」
原因はコレ。料理が苦手だと叫びそのままソファに沈み込んだ、現在の同居人であり園芸委員長のチャラ男──田中宗介だった。
園芸委員長といえば、一代で旧校舎のビオトープを完成させた緑の手の持ち主。
人好きのする笑顔に柔らかな少し掠れた声、快活だがどこか色気の孕む整った顔立ちは美しいというより危うい。
案外力強く体格も良いが、それも男らしい艶やかさに変換されていながらも態度は軽い。黄金色の髪が自然光に輝き、植物で覆われた旧校舎にいる姿は一種の芸術作品──
そんな評価をされている、生徒会執行部からは警戒対象の男だ。
(園芸委員会は権力こそ弱いが、だからこそ生徒会としての制約も働かない……その上でコイツは、シンパを増やす愛想と見た目も兼ね備えている)
圧倒的な存在である執行部や他役員と違って、田中宗介はフランクかつ近い立ち位置で生徒と関わっている。かと思えば格の違いを見せつけるように離れるのだ。
その気まぐれな態度から熱狂的なシンパも多い。
今日会った転校生もその部類だろう。
その上で生徒会執行部には手を出さない。そうして腹を見せながら虎視眈々と首元を狙っている──そういう賢い男だと。
思われていたのだが。
「でも餃子定食はおれが食べてあげなきゃダメなんだ……」
食堂のナンバーワン不人気定食に依存している男は、本当に田中宗介なのだろうか。
パタパタと男の足元でスリッパが揺れる。100円均一で五百円のスリッパである。
他に三百円のものもあったのに、唯一何故かほんのり高かったやつを買ったのだろうか。
瑛一の脳裏に焦りという文字が高速で浮かんでは消えていく。最悪の音ゲーみたいだった。
背筋に脂汗が伝った──
そのころ、生徒会執行部。
席務の双子と副会長は残って事務処理を行っていた。権力があるのでもちろん仕事も多い。
「しかし、田中宗介……なかなか油断できない相手でしたね」
各々デスクで報告書を作ったり書類にサインをしたりしていた双子が、刑部の言葉に手を止める。そのまますぐ作業に戻りながらも気になるの、と楽しそうに笑った。
「ボク、田中クンってもっとジュージュンだと思ってた!」
「そうかなぁ? ボクはけっこー期待してたけど? 桜は人を信じすぎっ!」
双子は割と意見が割れる。享楽主義の弟、椿と堅実主義の兄、桜とで考え方が違うから。
「同室にしたのは失敗だったでしょうか? 田中宗介は賢い男です──我らが会長が骨抜きにでもされたら、たまらない」
「もうりょーたろーちゃんったら! 会長のこと嫌いなんだからっ」
「コラ椿、刑部は会長を心配してるんだよっ? でもボク、流石に心配はないと思うなぁ?」
双子はそうしてくすくすと笑い合う。椿はともかく、桜には基本悪意がない。その様子に毒気を抜かれて、刑部もふ、と吐息を漏らした。
確かに田中宗介は賢く、立ち回りの上手い男だ。成績もそこそこを維持しながら目立たないようにしており、着実にシンパを増やしている。
「そうですね、だって」
しかしだからこそ、その聡明さが仇になる。
持ちうる手段をうまく使い、どれほど的確にオトそうとしたところで無駄なのだ。
だって──
「生徒会長は、ダメ人間が心の底から好きですからね」
──ということでところ変わって瑛一と田中の部屋である。
瑛一はキッチンの方をチラリと見て、焦りをようやく言語化する。
(ヤベェな、コイツもしかして)
田中はすっかりケロリとして、律儀にじゃがいも四個をふかして晩ごはんにしていた。
別に一気に入れるなと言っただけだが、何をどう勘違いしたのか四個しか食べれないと思っているらしく大事にちまちまと食べている。
しかもまたキッチンで雑に立って食ってるし。ラップを洗い場に運んで剥く短い時間で指先を火傷したらしく、人差し指が変に浮いていた。
(めちゃくちゃダメ人間なんじゃねぇか──)
どうなる同居生活。
俺様生徒会長こと武藤瑛一。圧倒的なカリスマに運動勉強ともにトップクラスの実力、抱かれたい男ランキング一位の美貌と経済界を掌握する名家の御曹司。
そんな瑛一は今、たいそう焦っていた。
「うう……何もせずにごはんがたべたい……あんまり働きたくもない……」
原因はコレ。料理が苦手だと叫びそのままソファに沈み込んだ、現在の同居人であり園芸委員長のチャラ男──田中宗介だった。
園芸委員長といえば、一代で旧校舎のビオトープを完成させた緑の手の持ち主。
人好きのする笑顔に柔らかな少し掠れた声、快活だがどこか色気の孕む整った顔立ちは美しいというより危うい。
案外力強く体格も良いが、それも男らしい艶やかさに変換されていながらも態度は軽い。黄金色の髪が自然光に輝き、植物で覆われた旧校舎にいる姿は一種の芸術作品──
そんな評価をされている、生徒会執行部からは警戒対象の男だ。
(園芸委員会は権力こそ弱いが、だからこそ生徒会としての制約も働かない……その上でコイツは、シンパを増やす愛想と見た目も兼ね備えている)
圧倒的な存在である執行部や他役員と違って、田中宗介はフランクかつ近い立ち位置で生徒と関わっている。かと思えば格の違いを見せつけるように離れるのだ。
その気まぐれな態度から熱狂的なシンパも多い。
今日会った転校生もその部類だろう。
その上で生徒会執行部には手を出さない。そうして腹を見せながら虎視眈々と首元を狙っている──そういう賢い男だと。
思われていたのだが。
「でも餃子定食はおれが食べてあげなきゃダメなんだ……」
食堂のナンバーワン不人気定食に依存している男は、本当に田中宗介なのだろうか。
パタパタと男の足元でスリッパが揺れる。100円均一で五百円のスリッパである。
他に三百円のものもあったのに、唯一何故かほんのり高かったやつを買ったのだろうか。
瑛一の脳裏に焦りという文字が高速で浮かんでは消えていく。最悪の音ゲーみたいだった。
背筋に脂汗が伝った──
そのころ、生徒会執行部。
席務の双子と副会長は残って事務処理を行っていた。権力があるのでもちろん仕事も多い。
「しかし、田中宗介……なかなか油断できない相手でしたね」
各々デスクで報告書を作ったり書類にサインをしたりしていた双子が、刑部の言葉に手を止める。そのまますぐ作業に戻りながらも気になるの、と楽しそうに笑った。
「ボク、田中クンってもっとジュージュンだと思ってた!」
「そうかなぁ? ボクはけっこー期待してたけど? 桜は人を信じすぎっ!」
双子は割と意見が割れる。享楽主義の弟、椿と堅実主義の兄、桜とで考え方が違うから。
「同室にしたのは失敗だったでしょうか? 田中宗介は賢い男です──我らが会長が骨抜きにでもされたら、たまらない」
「もうりょーたろーちゃんったら! 会長のこと嫌いなんだからっ」
「コラ椿、刑部は会長を心配してるんだよっ? でもボク、流石に心配はないと思うなぁ?」
双子はそうしてくすくすと笑い合う。椿はともかく、桜には基本悪意がない。その様子に毒気を抜かれて、刑部もふ、と吐息を漏らした。
確かに田中宗介は賢く、立ち回りの上手い男だ。成績もそこそこを維持しながら目立たないようにしており、着実にシンパを増やしている。
「そうですね、だって」
しかしだからこそ、その聡明さが仇になる。
持ちうる手段をうまく使い、どれほど的確にオトそうとしたところで無駄なのだ。
だって──
「生徒会長は、ダメ人間が心の底から好きですからね」
──ということでところ変わって瑛一と田中の部屋である。
瑛一はキッチンの方をチラリと見て、焦りをようやく言語化する。
(ヤベェな、コイツもしかして)
田中はすっかりケロリとして、律儀にじゃがいも四個をふかして晩ごはんにしていた。
別に一気に入れるなと言っただけだが、何をどう勘違いしたのか四個しか食べれないと思っているらしく大事にちまちまと食べている。
しかもまたキッチンで雑に立って食ってるし。ラップを洗い場に運んで剥く短い時間で指先を火傷したらしく、人差し指が変に浮いていた。
(めちゃくちゃダメ人間なんじゃねぇか──)
どうなる同居生活。
120
お気に入りに追加
315
あなたにおすすめの小説

【完結】テルの異世界転換紀?!転がり落ちたら世界が変わっていた。
カヨワイさつき
BL
小学生の頃両親が蒸発、その後親戚中をたらいまわしにされ住むところも失った田辺輝(たなべ てる)は毎日切り詰めた生活をしていた。複数のバイトしていたある日、コスプレ?した男と出会った。
異世界ファンタジー、そしてちょっぴりすれ違いの恋愛。
ドワーフ族に助けられ家族として過ごす"テル"。本当の両親は……。
そして、コスプレと思っていた男性は……。
フリーダム!!!~チャラ男の俺が王道学園の生徒会会計になっちゃった話~
いちき
BL
王道学園で起こるアンチ王道気味のBL作品。 女の子大好きなチャラ男会計受け。 生真面目生徒会長、腐男子幼馴染、クール一匹狼等と絡んでいきます。王道的生徒会役員は、王道転入生に夢中。他サイトからの転載です。
※5章からは偶数日の日付が変わる頃に更新します!
※前アカウントで投稿していた同名作品の焼き直しです。

とある金持ち学園に通う脇役の日常~フラグより飯をくれ~
無月陸兎
BL
山奥にある全寮制男子校、桜白峰学園。食べ物目当てで入学した主人公は、学園の権力者『REGAL4』の一人、一条貴春の不興を買い、学園中からハブられることに。美味しい食事さえ楽しめれば問題ないと気にせず過ごしてたが、転入生の扇谷時雨がやってきたことで、彼の日常は波乱に満ちたものとなる──。
自分の親友となった時雨が学園の人気者たちに迫られるのを横目で見つつ、主人公は巻き込まれて恋人のフリをしたり、ゆるく立ちそうな恋愛フラグを避けようと奮闘する物語です。
日本一のイケメン俳優に惚れられてしまったんですが
五右衛門
BL
月井晴彦は過去のトラウマから自信を失い、人と距離を置きながら高校生活を送っていた。ある日、帰り道で少女が複数の男子からナンパされている場面に遭遇する。普段は関わりを避ける晴彦だが、僅かばかりの勇気を出して、手が震えながらも必死に少女を助けた。
しかし、その少女は実は美男子俳優の白銀玲央だった。彼は日本一有名な高校生俳優で、高い演技力と美しすぎる美貌も相まって多くの賞を受賞している天才である。玲央は何かお礼がしたいと言うも、晴彦は動揺してしまい逃げるように立ち去る。しかし数日後、体育館に集まった全校生徒の前で現れたのは、あの時の青年だった──

この僕が、いろんな人に詰め寄られまくって困ってます!〜まだ無自覚編〜
小屋瀬 千風
BL
〜まだ無自覚編〜のあらすじ
アニメ・漫画ヲタクの主人公、薄井 凌(うすい りょう)と、幼なじみの金持ち息子の悠斗(ゆうと)、ストーカー気質の天才少年の遊佐(ゆさ)。そしていつもだるーんとしてる担任の幸崎(さいざき)teacher。
主にこれらのメンバーで構成される相関図激ヤバ案件のBL物語。
他にも天才遊佐の事が好きな科学者だったり、悠斗Loveの悠斗の実の兄だったりと個性豊かな人達が出てくるよ☆
〜自覚編〜 のあらすじ(書く予定)
アニメ・漫画をこよなく愛し、スポーツ万能、頭も良い、ヲタク男子&陽キャな主人公、薄井 凌(うすい りょう)には、とある悩みがある。
それは、何人かの同性の人たちに好意を寄せられていることに気づいてしまったからである。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
【超重要】
☆まず、主人公が各キャラからの好意を自覚するまでの間、結構な文字数がかかると思います。(まぁ、「自覚する前」ということを踏まえて呼んでくだせぇ)
また、自覚した後、今まで通りの頻度で物語を書くかどうかは気分次第です。(だって書くの疲れるんだもん)
ですので、それでもいいよって方や、気長に待つよって方、どうぞどうぞ、読んでってくだせぇな!
(まぁ「長編」設定してますもん。)
・女性キャラが出てくることがありますが、主人公との恋愛には発展しません。
・突然そういうシーンが出てくることがあります。ご了承ください。
・気分にもよりますが、3日に1回は新しい話を更新します(3日以内に投稿されない場合もあります。まぁ、そこは善処します。(その時はまた近況ボード等でお知らせすると思います。))。

王様のナミダ
白雨あめ
BL
全寮制男子高校、箱夢学園。 そこで風紀副委員長を努める桜庭篠は、ある夜久しぶりの夢をみた。
端正に整った顔を歪め、大粒の涙を流す綺麗な男。俺様生徒会長が泣いていたのだ。
驚くまもなく、学園に転入してくる王道転校生。彼のはた迷惑な行動から、俺様会長と風紀副委員長の距離は近づいていく。
※会長受けです。
駄文でも大丈夫と言ってくれる方、楽しんでいただけたら嬉しいです。

なんで俺の周りはイケメン高身長が多いんだ!!!!
柑橘
BL
王道詰め合わせ。
ジャンルをお確かめの上お進み下さい。
7/7以降、サブストーリー(土谷虹の隣は決まってる!!!!)を公開しました!!読んでいただけると嬉しいです!
※目線が度々変わります。
※登場人物の紹介が途中から増えるかもです。
※火曜日20:00
金曜日19:00
日曜日17:00更新

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる