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俺が焦っていても事態は進行する。
「……なんだ? てめぇ。退け」
「は? 誰やお前」
おい何っ、何で喧嘩腰なの!?
いつの間にか武藤さまが転校生の至近距離に迫っていて、転校生は武藤さまの発言に怯むことなく睨み返した。ちょっと思ってはいたけどやっぱこいつめっちゃ喧嘩っ早い。
「俺様の進行方向なんだよ。見えねーのか?」
「はぁ? んなもんちょっ避けりゃいいやんけ。都会もんはそんなことも出来んとか?」
「お前が退けよマリモ野郎。ンで俺様がお前に遠慮してやらなきゃいけねーんだ」
「だぁっとけカス。譲り合いの精神、ママに習わんかったんか。食堂の飯やなくて離乳食でも食っとけ」
一触即発の空気感である。転校生、めちゃくちゃ口が悪い。
転校生のビンぞこ眼鏡の奥、好戦的な視線が武藤さまのそれとかち合う。いつの間にか顔が近付いていて、至近距離で。
「ねぇあいつ、生意気じゃない?」
誰かのそんな声が聞こえた瞬間、俺は飛び出していた。
「待って! ストップストップ!」
花道に新たに現れた闖入者に、好奇の視線が突き刺さった。転校生と武藤さま、執行部の皆さまも当然の命知らず野郎に思わず目を向ける。ギィ~コミュ障には視線が痛いぜ……
俺の大声に、武藤さまは顔を顰め転校生は思い切りこちらを向く。
「は? んだよ、おま」
「あーーーーっ!!!!」
瞬間。転校生の顔が明らかに輝いた。
目の色もわからんような眼鏡をかけててもわかる挑発的な顔から、昨日も見た後輩っぽい顔に。
「芋の先輩!!」
「どへえっその言い方やめて~?」
「センパイもここに来とったとですか? 水臭か~教えてくれたら良かったんに」
先程の狂犬みたいな様子から一変、にこにこと駆け寄ってくる姿をほんのり恐怖を覚えながら迎え入れる。俺はあの迫力でレスバされたら泣いて謝る。どっちも怖すぎ。
「……知り合いかよ」
「あははっ! すっかり取られちゃったね!」
「面白い子だと思ったけどなーっ!」
思っていたより執行部の印象は悪くないらしい。この学園は皆彼らに従うので、逆らう人間が珍しいのだろう。
周囲をざっと眺めれば、まだ転校生を睨みつけている集団がいた。
あれは……武藤さま過激派のユニコーンだったか。
にこりと笑いかけてやれば、曲がりなりにも役員の愛想だからか少し気を取られた様子。
「ごめんねぇ~、この子、転校してきたばっかなんだ~。ちゃんと教えておくから、ここは許してくんない?」
「な! センパイが謝らんでも!」
いきりたった転校生の頭をぽすんと押さえつけてぐりぐり撫でる。やけに指に引っかかる髪質だ。転校生は口を噤んで顔をこちらに向けるので、唇に人差し指を当てる。
「フン、テメェの犬くらい躾けておけ」
「おれの犬じゃあないけどね~。ま、ちゃーんと教えておくよ~、先輩として」
だから頼むから許してください武藤さま。笑顔の仮面を作ったまま命乞いをすると、武藤さまはぴくりと眉を顰めてひとつ舌打ちした。
肩を跳ねさせそうになったが、執行部の皆様はにまにまと面白そうにこちらを観察している。
不思議ではあるが……ま、いい。さっさと退散しよう。転校生を連れて戻ろうと踵を返せば、びんぞこ眼鏡がキラキラと輝いていた。
「先輩として責任も果たさんアイツの代わりに、センパイが教えてくれるとですか!?!? 何て優しいんや……さすがセンパイです!」
えっあっそうなってるの!?!?
めちゃくちゃ皮肉じゃんそれ!?!?!?!?!?
「……なんだ? てめぇ。退け」
「は? 誰やお前」
おい何っ、何で喧嘩腰なの!?
いつの間にか武藤さまが転校生の至近距離に迫っていて、転校生は武藤さまの発言に怯むことなく睨み返した。ちょっと思ってはいたけどやっぱこいつめっちゃ喧嘩っ早い。
「俺様の進行方向なんだよ。見えねーのか?」
「はぁ? んなもんちょっ避けりゃいいやんけ。都会もんはそんなことも出来んとか?」
「お前が退けよマリモ野郎。ンで俺様がお前に遠慮してやらなきゃいけねーんだ」
「だぁっとけカス。譲り合いの精神、ママに習わんかったんか。食堂の飯やなくて離乳食でも食っとけ」
一触即発の空気感である。転校生、めちゃくちゃ口が悪い。
転校生のビンぞこ眼鏡の奥、好戦的な視線が武藤さまのそれとかち合う。いつの間にか顔が近付いていて、至近距離で。
「ねぇあいつ、生意気じゃない?」
誰かのそんな声が聞こえた瞬間、俺は飛び出していた。
「待って! ストップストップ!」
花道に新たに現れた闖入者に、好奇の視線が突き刺さった。転校生と武藤さま、執行部の皆さまも当然の命知らず野郎に思わず目を向ける。ギィ~コミュ障には視線が痛いぜ……
俺の大声に、武藤さまは顔を顰め転校生は思い切りこちらを向く。
「は? んだよ、おま」
「あーーーーっ!!!!」
瞬間。転校生の顔が明らかに輝いた。
目の色もわからんような眼鏡をかけててもわかる挑発的な顔から、昨日も見た後輩っぽい顔に。
「芋の先輩!!」
「どへえっその言い方やめて~?」
「センパイもここに来とったとですか? 水臭か~教えてくれたら良かったんに」
先程の狂犬みたいな様子から一変、にこにこと駆け寄ってくる姿をほんのり恐怖を覚えながら迎え入れる。俺はあの迫力でレスバされたら泣いて謝る。どっちも怖すぎ。
「……知り合いかよ」
「あははっ! すっかり取られちゃったね!」
「面白い子だと思ったけどなーっ!」
思っていたより執行部の印象は悪くないらしい。この学園は皆彼らに従うので、逆らう人間が珍しいのだろう。
周囲をざっと眺めれば、まだ転校生を睨みつけている集団がいた。
あれは……武藤さま過激派のユニコーンだったか。
にこりと笑いかけてやれば、曲がりなりにも役員の愛想だからか少し気を取られた様子。
「ごめんねぇ~、この子、転校してきたばっかなんだ~。ちゃんと教えておくから、ここは許してくんない?」
「な! センパイが謝らんでも!」
いきりたった転校生の頭をぽすんと押さえつけてぐりぐり撫でる。やけに指に引っかかる髪質だ。転校生は口を噤んで顔をこちらに向けるので、唇に人差し指を当てる。
「フン、テメェの犬くらい躾けておけ」
「おれの犬じゃあないけどね~。ま、ちゃーんと教えておくよ~、先輩として」
だから頼むから許してください武藤さま。笑顔の仮面を作ったまま命乞いをすると、武藤さまはぴくりと眉を顰めてひとつ舌打ちした。
肩を跳ねさせそうになったが、執行部の皆様はにまにまと面白そうにこちらを観察している。
不思議ではあるが……ま、いい。さっさと退散しよう。転校生を連れて戻ろうと踵を返せば、びんぞこ眼鏡がキラキラと輝いていた。
「先輩として責任も果たさんアイツの代わりに、センパイが教えてくれるとですか!?!? 何て優しいんや……さすがセンパイです!」
えっあっそうなってるの!?!?
めちゃくちゃ皮肉じゃんそれ!?!?!?!?!?
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