王道学園のコミュ障ニセチャラ男くん、憧れの会長と同室になったようで

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流されるまま転校生を教務課に送り、委員会の届出の書き方を教える。

「急いでたっぽいのに良かったん？　俺としては今許諾出せば良いから助かるけども」
「あ！　そうそう、今日一限目に挨拶こいち言われとりまして……電車ば逃したんで、車で走ってきたとですよ」
「もう放課後だが！」

教職員ブチギレ案件である。俺より少し目線下のウニ坊主が、思いのほか綺麗な文字で園芸委員会と記入したのをひったくり、すぐ田中とサインした。

「出しとくから！　誰に呼ばれてんの？」
「えっと、大御門おおみかど……」
「理事長～～～～！！」

理事長の意向で転校してきたというのは本当らしい。
この学園の理事長は顔面のいい他の生徒に引けを取らず顔が良く、そのクールな性格と渋く甘い声で生徒の心を多く掴んでいる。

「はよ言え～～？　遅刻させたの俺って言わないようにね！」

理事長室の地図をメモに書いて渡した。

「だんだん重ね重ねありがとうございます！　このご恩は一生忘れ、」

言葉の途中でぐぎゅるる、と豪快な音。俺ではない。現在胃の中は芋でぱんぱんである。
ため息を吐いて、懐からまだ温かい芋をいくつか取り出した。

「理事長室遠いし、道中で食いな」
「え！　良かとですか！　センパイの夕飯やないんです？」
「いや」

仕送りでもらって余ってるから──と言いかけ、口をつぐむ。高校三年生になっておいてふかしたいもしか作れない先輩とは、威厳があるのかという命題に。

（相手は農家の息子だし、芋余らせたとか聞いたら好感度下がるとか……？）

というかこういうのあまり物を押し付けたみたいで心象が良くないのでは？　人に差し入れしたことないけどなんかそういうのってわざわざ作ってくる奴じゃない？　二年間も一人暮らししてたくせに食堂頼りの先輩ってもしかしてダサい？

「…………こういうこともあろうかと！」
「すげー！！」

あなんか正解っぽい！

「やっぱ俺ほどの先輩ともなればね、飢えてる後輩を探して三千里、芋を分け与えてるわけで、」
「ありがとぉございました芋のセンパイ！　このご恩は必ずーー！！」
「あ全然聞いてない！　良いけど大嘘だし……芋の先輩ではない……」

しばらく懐を芋で温めることにはなるのだけども。
一応チャラ男なので、芋の先輩とか外で呼ばれると困るな。メッセージしとこう。
胸ポケットからスマホを取り出し、アプリを起動して気づく。

「……ID交換してない……」

メッセージアプリの通知の最上位は、三日前に来た企業からのクーポンだった。スタンプ欲しさに友達登録した企業ってなんか消せないよね……絶対使わない広告とかが溜まってくだけなのに……