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第6章 王宮生活<帰還編>
103、動かす言葉<後>
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「オレが……カッコ悪い?
そして……見苦しい?」
シルヴィス様は呆然と呟かれた。
それもそうだ……僕はあまりシルヴィス様のことを存じ上げなかったが、弟のライから「王族に生まれ、王族として相応しくあるよう常に努力している方で、あらゆる世代の方から慕われている」と常々聞かされていた。
だからシルヴィス様にとって、今まで聞いたこともない評価だろう。
「えぇ、今のシルヴィス様には、全然、惹かれません」
いっそのこと、ハッキリと僕は申し上げた。
シルヴィス様はとうとう絶句され、僕らを取り囲んでいる騎士からも「不敬な!」という声が複数挙がる。
だけどこれから伝える言葉が、どうかシルヴィス様にとって1つのきっかけになれば……と思い、僕は言葉を紡ぎ続けた。
「シルヴィス様、僕らは番になり、当初の懸念事項だった生命の危機を、無事乗り越えることができました。
残ったのは、『運命の番』という名のもとに引き合わせられた、シルヴィス様と僕だけ。
しかも僕は、意識がない年月と先の戦争によりお会いできない日々が長すぎて、シルヴィス様の人となりを、ほぼ存じ上げません」
「これから知っていけば良い!」
僕の告白に、我に返ったシルヴィス様から、すぐ返事がきた。
「でも知った上で、お互い惹かれ合わなかったら?」
僕はシルヴィス様へ問い続ける。
「まずはレンがオレと番ってくれ、命を救ってくれたことに深く感謝する。
オレは本能が強いせいか、出会った時から、そしてそなたが目を覚まさなかった3年間、さらに会えなかった2年間でさえ、レンのことが愛おしくてたまらなかった。
この気持ちが、心の底から込み上げてくるものだと自覚している。
だからこそレンに対する愛しさは、思い込みの類ではなく、本物だと確信しているのだ。
そもそも誰かを愛おしいと思う気持ちに、理由は必要なのか?」
シルヴィス様から問い返されて、僕はひと時、口を閉じて考えをまとめ、答えを返した。
「僕はシルヴィス様より本能が弱いせいか、あまり理由なしで好ましいとは思いません。
僕が惹かれるのは……」
ふと脳裏に浮かんだ姿を懐かしく思い、つい言葉が止まってしまう……結果的にそれが良い方向に導いたわけなのだが。
「レンはどういう人物に惹かれるのだ?」
シルヴィス様の静かな問いかけに、僕は懐かしい日々に浸っていた意識と視線が引き戻される。
「公私混同せず、ひたむきに仕事する方……ですかね。
僕は小さいながらも領地を治めてきて、仕事をすることが好きなせいか……職務に真面目に取り組まれ、遂行される方に好感を抱きます。
もちろん、全てにおいて誠実さを持ち合わせている人が前提でして、仕事だけできて、他には不誠実な人には惹かれませんけどね。
弟のライから、軍服姿で職務に邁進されるシルヴィス様は、特別に輝いてみえると、伺っておりました。
どうかその姿をぜひ僕に見せ、僕の運命はこの方で間違いないと、確信させていただけませんか?」
そう……未だ揺れ動く僕の心を奪って欲しい
自分勝手で言葉にできない気持ちを目に託し、つい僕は、まるでシルヴィス様の心までを射抜くかのように熱心に見つめてしまった。
シルヴィス様は目を見開いたまま、身動きひとつされず、返事もされない。
そして、やっと僕の意図が通じたのか……僕の真後ろで剣を下げる動きがあり、それに合わせて親衛隊全員が木刀を下ろした。
誰もが物音1つ立てず、シルヴィス様の返答を待っている。
シルヴィス様は、グルリと騎士たちの顔をひとりひとりゆっくりと見渡した後、僕に向かって力強く宣言された。
「分かった。
これから全力で職務に取り組み、やっと意識が戻ったレンの心を、オレだけに向けさせてみせる」
そう言って、何かが吹っ切れたように笑ったシルヴィス様は、恐ろしいほど男気が溢れ……僕の心臓が思わずドキッと跳ねる。
その効果は僕だけではなく部下にも及び、僕らの会話を伺っていた騎士たちからも大歓声が上がった。
「シルヴィス様、一生ついていきます!」
「シルヴィス様は、どんな時もオレたちの誇りです!」
「お前たちに言ってない!
レンに言ったんだ!」
すかさずシルヴィス様はそう言い返されていたが、すごく嬉しそうだった。
そんな光景をやっと安堵のため息をついて見つめていた僕だったが、突然少し離れた場所から、パンパンパンパンという拍手の音と共に、声がかけられる。
「さすがだな、レンヤード」
その方の登場と共に人垣が割れ、ゆっくりとこちらへ歩いてくる姿を認めた騎士たちは、順次跪く。
「アルフ様!」
僕は思わず声を上げ、シルヴィス様と共に慌てて礼を取った。
そして……見苦しい?」
シルヴィス様は呆然と呟かれた。
それもそうだ……僕はあまりシルヴィス様のことを存じ上げなかったが、弟のライから「王族に生まれ、王族として相応しくあるよう常に努力している方で、あらゆる世代の方から慕われている」と常々聞かされていた。
だからシルヴィス様にとって、今まで聞いたこともない評価だろう。
「えぇ、今のシルヴィス様には、全然、惹かれません」
いっそのこと、ハッキリと僕は申し上げた。
シルヴィス様はとうとう絶句され、僕らを取り囲んでいる騎士からも「不敬な!」という声が複数挙がる。
だけどこれから伝える言葉が、どうかシルヴィス様にとって1つのきっかけになれば……と思い、僕は言葉を紡ぎ続けた。
「シルヴィス様、僕らは番になり、当初の懸念事項だった生命の危機を、無事乗り越えることができました。
残ったのは、『運命の番』という名のもとに引き合わせられた、シルヴィス様と僕だけ。
しかも僕は、意識がない年月と先の戦争によりお会いできない日々が長すぎて、シルヴィス様の人となりを、ほぼ存じ上げません」
「これから知っていけば良い!」
僕の告白に、我に返ったシルヴィス様から、すぐ返事がきた。
「でも知った上で、お互い惹かれ合わなかったら?」
僕はシルヴィス様へ問い続ける。
「まずはレンがオレと番ってくれ、命を救ってくれたことに深く感謝する。
オレは本能が強いせいか、出会った時から、そしてそなたが目を覚まさなかった3年間、さらに会えなかった2年間でさえ、レンのことが愛おしくてたまらなかった。
この気持ちが、心の底から込み上げてくるものだと自覚している。
だからこそレンに対する愛しさは、思い込みの類ではなく、本物だと確信しているのだ。
そもそも誰かを愛おしいと思う気持ちに、理由は必要なのか?」
シルヴィス様から問い返されて、僕はひと時、口を閉じて考えをまとめ、答えを返した。
「僕はシルヴィス様より本能が弱いせいか、あまり理由なしで好ましいとは思いません。
僕が惹かれるのは……」
ふと脳裏に浮かんだ姿を懐かしく思い、つい言葉が止まってしまう……結果的にそれが良い方向に導いたわけなのだが。
「レンはどういう人物に惹かれるのだ?」
シルヴィス様の静かな問いかけに、僕は懐かしい日々に浸っていた意識と視線が引き戻される。
「公私混同せず、ひたむきに仕事する方……ですかね。
僕は小さいながらも領地を治めてきて、仕事をすることが好きなせいか……職務に真面目に取り組まれ、遂行される方に好感を抱きます。
もちろん、全てにおいて誠実さを持ち合わせている人が前提でして、仕事だけできて、他には不誠実な人には惹かれませんけどね。
弟のライから、軍服姿で職務に邁進されるシルヴィス様は、特別に輝いてみえると、伺っておりました。
どうかその姿をぜひ僕に見せ、僕の運命はこの方で間違いないと、確信させていただけませんか?」
そう……未だ揺れ動く僕の心を奪って欲しい
自分勝手で言葉にできない気持ちを目に託し、つい僕は、まるでシルヴィス様の心までを射抜くかのように熱心に見つめてしまった。
シルヴィス様は目を見開いたまま、身動きひとつされず、返事もされない。
そして、やっと僕の意図が通じたのか……僕の真後ろで剣を下げる動きがあり、それに合わせて親衛隊全員が木刀を下ろした。
誰もが物音1つ立てず、シルヴィス様の返答を待っている。
シルヴィス様は、グルリと騎士たちの顔をひとりひとりゆっくりと見渡した後、僕に向かって力強く宣言された。
「分かった。
これから全力で職務に取り組み、やっと意識が戻ったレンの心を、オレだけに向けさせてみせる」
そう言って、何かが吹っ切れたように笑ったシルヴィス様は、恐ろしいほど男気が溢れ……僕の心臓が思わずドキッと跳ねる。
その効果は僕だけではなく部下にも及び、僕らの会話を伺っていた騎士たちからも大歓声が上がった。
「シルヴィス様、一生ついていきます!」
「シルヴィス様は、どんな時もオレたちの誇りです!」
「お前たちに言ってない!
レンに言ったんだ!」
すかさずシルヴィス様はそう言い返されていたが、すごく嬉しそうだった。
そんな光景をやっと安堵のため息をついて見つめていた僕だったが、突然少し離れた場所から、パンパンパンパンという拍手の音と共に、声がかけられる。
「さすがだな、レンヤード」
その方の登場と共に人垣が割れ、ゆっくりとこちらへ歩いてくる姿を認めた騎士たちは、順次跪く。
「アルフ様!」
僕は思わず声を上げ、シルヴィス様と共に慌てて礼を取った。
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