「運命の番」だと胸を張って言えるまで

黎明まりあ

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第4章 王宮生活<大祭準備編>

56、教会からの依頼<前>

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 近くのいてる部屋に、ロイさんによって押し込まれた僕は、扉が閉まるなり、ロイさんに謝った。

「ロイさん、僕のせいで皆さんを足止あしどめさせ、廊下の通行をさまたげてしまったこと、大変申し訳ありませんでした」

 僕がそう話を切り出すと、なぜかロイさんは、大きなため息を1つ、ついた。

「レンヤード様、謝る観点かんてんが間違ってます」

「えっ?その件じゃないとするなら、どの点がご迷惑めいわくでしたか?」

 僕は困惑こんわくしながら、ロイさんに問い返す。

「まず、私のことは、レンヤード様との身分の関係上、ロイと呼びててください。

 迷惑めいわくとは思いませんでしたが、レンヤード様の存在は、一部の者をのぞき、まだ他の神官たちに紹介しておりません。

 それなのに、いきなりレンヤード様が、皆の前で神力しんりょくを使われたので驚きましたし、目撃もくげきした者たちが興奮こうふんして、大げさにさわぎ出しそうな予兆よちょうを感じましたので、強制的にこの部屋へ、隔離かくりさせていただきました。

 こちらこそ、何ら説明もなく、無断むだんで行ってしまい、大変申し訳ありませんでした。

 しかし、レンヤード様……いつから祝福しゅくふくができるようになったのですか?」

 ロイは近くのソファセットに僕に座るよう手でしめしながら、僕に問いかけ続ける。

 なので、僕も遠慮えんりょなくソファに座らせてもらいながら、正直に答えた。

「あの時、頭に浮かんできた言葉を、言っただけです」

 僕の答えを聞いたロイは、一瞬だまり込み……そのまま無言むごんで、片手で自身のこめかみをみながら、僕の対面たいめんにゆっくりと腰掛こしかける。

「レンヤード様もセリム様と同様、規格外きかくがいの方だというのが、よく分かりました。

 それで、レンヤード様、神力しんりょくを使われたようですが、体調はいかがでしょうか?」

 ロイが何をもって僕を規格外きかくがいと言ったのかは後で聞くことにして、それよりも僕はロイに見せたいものがあった。

「今のところ、何ともありませんので、大丈夫です。

 突然押しかけてきて申し訳ないのですが、まずはこれを見てください」

 僕はそう言って、サラから受け取った用紙をロイに差し出す。

拝見はいけんします……こっ、これは!」

「王妃様からの依頼で、供物くもつの管理担当に、このたび僕がなりまして……この用紙は、前任者ぜんにんしゃから引きいだものですが、今回の大祭たいさいで用意する供物くもつの数がしるされています。

 ごらんのように……今回は招待客を増やすということでしたので、この数では全く足りないのです。

 これは、一大事いちだいじだと思い、教会で唯一ゆいいつ、僕の知り合いであるセリム様に、まず相談しようと思いました。

 ですが、クローネに聞いたところ、今はご不在ふざいだとか。

 それでも、早くこの事実を伝えなければと思い、クローネの助言じょげんにより、副官であるロイに、面会を申し込みました」

 ここまで言い終えて、僕はようやく、肩で息をついた。

「セリム様と私も、もちろん大祭たいさいに関わりますので、いち早くお話が聞けて良かったです。

 それにしても、この数……これは、多分、例年の数量のままです。

 確かに、今回は地方からも多数たすう、招待されていますので……少なくとも、この倍の数は必要かと」

 ロイは、あごに手を掛けながら、うなり出すように口にした。

「倍っ!本当ですか?
 どうしよう……今から調達ちょうたつできるのかなぁ」

 僕は目の前が暗くなったような気して、顔を両手でおおった。

 その時、ロイから、朗報ろうほうがもたらされる。

供物くもつ調達りょうたつに関しては、ご安心ください。
 すでに用意してあります」

「本当?!」

「はい、実はこういったことは、過去にもありまして……」

 ロイは少し言いにくそうに口籠くちごもっていたけど、今後もこのようなことはあっては困るので、思い切って僕は教えてもらうことにした。
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