48 / 112
第4章 王宮生活<大祭準備編>
47、王妃の挨拶
しおりを挟む
「先にも申したが、今回は特別な神祭と、まずは認識してほしい」
王妃カメリーア様は、グルリと部屋全体を見渡しながら、まるで宣言されるかのごとく、力強く言い切られた。
なぜ、部屋全体を見渡されたのだ?
僕の脳裏に突如として、疑問が過ぎる。
しばらくの間、考えても答えが出なかったので、王妃様の真似をして僕もコッソリと部屋全体を見渡すと、自ずと正解が見えてきた。
僕の考え方が異端なだけだが、通常、妃と呼ばれる立場となると、王妃様付きのリリー、ローサ付きのサラと言ったように、何名かの専属の侍女たちが、妃と行動を共にする。
そして背筋を伸ばしてこの部屋をグルリと見渡すと、僕たちが座っている場所から、あからさまには見えないが、家具の陰などに、侍女たちが着用している服の裾がチラチラと見え隠れしている。
つまり侍女たちは、必要ならいつでもすぐに仕えられるよう、物陰に控えているのだ。
妃だけがテーブル席に座っているが、この部屋の中には王妃様と妃付きの、それぞれの専属侍女たちがおり……つまり王妃様は、今回の大祭準備に中心的となって関わるであろう、全員に向けて発言しているのである。
そういう視点からすると、これは茶会という名を借りた、関係者の全体会議の場であることが判明する。
それを意識した瞬間、とてつもない緊張感が一気に押し寄せてきて、僕の体温を急激に奪った挙句、視界も瞬く間に霞んできた。
僕は慌てて、静かに深呼吸を繰り返して身体に酸素を送り込み、意識を明瞭化させる。
なおも王妃様は、言葉を続けられた。
「今回は、現王が王位を継承され、初めて臨まれる大祭である。
この大祭が滞りなく行われることで、王の治世の安定にも繋がると考えられる。
だから私は、何としてでも、この大祭を成功させたい」
一度、王妃様は言葉を切って、席を立たれた。
「今回は神祭なので、肝心な儀式は国教会が執り行う。
儀式では、供物の提供要請を除いて、私たちが関わることはない。
むしろ重要なのは、儀式前後における、諸侯への応対である。
今回はいつもの王都周辺を治めているものに加えて、以前から王との面会を求めていた、あらゆる地方の諸侯も招待され、かつてない規模の参加者となっている。
皆は、常日頃から、私たちによく尽くしてくれており、そのことには大変感謝している。
更なる負担をかけることになり、申し訳なくも思うが、このまま気を抜くことなく、大祭を成功で終わらせるよう、協力を頼む」
そう述べ終わると王妃様は、この部屋に集結した皆に向かって、綺麗な一礼をされた。
すかさず全ての侍女たちから、一糸乱れることもなく、忠誠を誓う言葉が返ってくる。
「「「「「かしこまりました、王妃様」」」」」
僕も遅れながら、礼を取って、同じ言葉を口にする。
「ありがとう、皆の働きに期待している」
王妃様は、幾分ホッとしたかのように、軽く頷かれて、再び着席された。
それを合図にしたかのように、王妃様付きの侍女たちが動き出し、茶器にお茶が注がれる。
妃たちがひと口飲んだところで、ローサが王妃様へ話しかけた。
「王妃様、私に1つ提案がございます」
「さっそくか……さすがローサだ。
今回は本当にそなたに助けられている。
ぜひ聞かせてもらいたい」
王妃様は声を弾ませて、ローサに発言を促した。
「もちろんですわ、王妃様」
ローサは、一度僕にチラリと視線を送ってから、王妃様に向かって満面の笑みを浮かべた。
王妃カメリーア様は、グルリと部屋全体を見渡しながら、まるで宣言されるかのごとく、力強く言い切られた。
なぜ、部屋全体を見渡されたのだ?
僕の脳裏に突如として、疑問が過ぎる。
しばらくの間、考えても答えが出なかったので、王妃様の真似をして僕もコッソリと部屋全体を見渡すと、自ずと正解が見えてきた。
僕の考え方が異端なだけだが、通常、妃と呼ばれる立場となると、王妃様付きのリリー、ローサ付きのサラと言ったように、何名かの専属の侍女たちが、妃と行動を共にする。
そして背筋を伸ばしてこの部屋をグルリと見渡すと、僕たちが座っている場所から、あからさまには見えないが、家具の陰などに、侍女たちが着用している服の裾がチラチラと見え隠れしている。
つまり侍女たちは、必要ならいつでもすぐに仕えられるよう、物陰に控えているのだ。
妃だけがテーブル席に座っているが、この部屋の中には王妃様と妃付きの、それぞれの専属侍女たちがおり……つまり王妃様は、今回の大祭準備に中心的となって関わるであろう、全員に向けて発言しているのである。
そういう視点からすると、これは茶会という名を借りた、関係者の全体会議の場であることが判明する。
それを意識した瞬間、とてつもない緊張感が一気に押し寄せてきて、僕の体温を急激に奪った挙句、視界も瞬く間に霞んできた。
僕は慌てて、静かに深呼吸を繰り返して身体に酸素を送り込み、意識を明瞭化させる。
なおも王妃様は、言葉を続けられた。
「今回は、現王が王位を継承され、初めて臨まれる大祭である。
この大祭が滞りなく行われることで、王の治世の安定にも繋がると考えられる。
だから私は、何としてでも、この大祭を成功させたい」
一度、王妃様は言葉を切って、席を立たれた。
「今回は神祭なので、肝心な儀式は国教会が執り行う。
儀式では、供物の提供要請を除いて、私たちが関わることはない。
むしろ重要なのは、儀式前後における、諸侯への応対である。
今回はいつもの王都周辺を治めているものに加えて、以前から王との面会を求めていた、あらゆる地方の諸侯も招待され、かつてない規模の参加者となっている。
皆は、常日頃から、私たちによく尽くしてくれており、そのことには大変感謝している。
更なる負担をかけることになり、申し訳なくも思うが、このまま気を抜くことなく、大祭を成功で終わらせるよう、協力を頼む」
そう述べ終わると王妃様は、この部屋に集結した皆に向かって、綺麗な一礼をされた。
すかさず全ての侍女たちから、一糸乱れることもなく、忠誠を誓う言葉が返ってくる。
「「「「「かしこまりました、王妃様」」」」」
僕も遅れながら、礼を取って、同じ言葉を口にする。
「ありがとう、皆の働きに期待している」
王妃様は、幾分ホッとしたかのように、軽く頷かれて、再び着席された。
それを合図にしたかのように、王妃様付きの侍女たちが動き出し、茶器にお茶が注がれる。
妃たちがひと口飲んだところで、ローサが王妃様へ話しかけた。
「王妃様、私に1つ提案がございます」
「さっそくか……さすがローサだ。
今回は本当にそなたに助けられている。
ぜひ聞かせてもらいたい」
王妃様は声を弾ませて、ローサに発言を促した。
「もちろんですわ、王妃様」
ローサは、一度僕にチラリと視線を送ってから、王妃様に向かって満面の笑みを浮かべた。
254
お気に入りに追加
1,190
あなたにおすすめの小説


王子のこと大好きでした。僕が居なくてもこの国の平和、守ってくださいますよね?
人生1919回血迷った人
BL
Ωにしか見えない一途なαが婚約破棄され失恋する話。聖女となり、国を豊かにする為に一人苦しみと戦ってきた彼は性格の悪さを理由に婚約破棄を言い渡される。しかしそれは歴代最年少で聖女になった弊害で仕方のないことだった。
・五話完結予定です。
※オメガバースでαが受けっぽいです。

巻き戻りした悪役令息は最愛の人から離れて生きていく
藍沢真啓/庚あき
BL
婚約者ユリウスから断罪をされたアリステルは、ボロボロになった状態で廃教会で命を終えた……はずだった。
目覚めた時はユリウスと婚約したばかりの頃で、それならばとアリステルは自らユリウスと距離を置くことに決める。だが、なぜかユリウスはアリステルに構うようになり……
巻き戻りから人生をやり直す悪役令息の物語。
【感想のお返事について】
感想をくださりありがとうございます。
執筆を最優先させていただきますので、お返事についてはご容赦願います。
大切に読ませていただいてます。執筆の活力になっていますので、今後も感想いただければ幸いです。
他サイトでも公開中

勘弁してください、僕はあなたの婚約者ではありません
りまり
BL
公爵家の5人いる兄弟の末っ子に生まれた私は、優秀で見目麗しい兄弟がいるので自由だった。
自由とは名ばかりの放置子だ。
兄弟たちのように見目が良ければいいがこれまた普通以下で高位貴族とは思えないような容姿だったためさらに放置に繋がったのだが……両親は兎も角兄弟たちは口が悪いだけでなんだかんだとかまってくれる。
色々あったが学園に通うようになるとやった覚えのないことで悪役呼ばわりされ孤立してしまった。
それでも勉強できるからと学園に通っていたが、上級生の卒業パーティーでいきなり断罪され婚約破棄されてしまい挙句に学園を退学させられるが、後から知ったのだけど僕には弟がいたんだってそれも僕そっくりな、その子は両親からも兄弟からもかわいがられ甘やかされて育ったので色々な所でやらかしたので顔がそっくりな僕にすべての罪をきせ追放したって、優しいと思っていた兄たちが笑いながら言っていたっけ、国外追放なので二度と合わない僕に最後の追い打ちをかけて去っていった。
隣国でも噂を聞いたと言っていわれのないことで暴行を受けるが頑張って生き抜く話です
あなたは僕の運命の番 出会えた奇跡に祝福を
羽兎里
BL
本編完結いたしました。覗きに来て下さった方々。本当にありがとうございました。
番外編を開始しました。
優秀なαの兄達といつも比べられていたΩの僕。
αの父様にも厄介者だと言われていたけど、それは仕方がない事だった。
そんな僕でもようやく家の役に立つ時が来た。
αであるマティアス様の下に嫁ぐことが決まったんだ。
たとえ運命の番でなくても僕をもらってくれると言う優しいマティアス様。
ところが式まであとわずかというある日、マティアス様の前に運命の番が現れてしまった。
僕はもういらないんだね。
その場からそっと僕は立ち去った。
ちょっと切ないけれど、とても優しい作品だと思っています。
他サイトにも公開中。もう一つのサイトにも女性版の始めてしまいました。(今の所シリアスですが、どうやらギャグ要素満載になりそうです。)

【完結】可愛いあの子は番にされて、もうオレの手は届かない
天田れおぽん
BL
劣性アルファであるオズワルドは、劣性オメガの幼馴染リアンを伴侶に娶りたいと考えていた。
ある日、仕えている王太子から名前も知らないオメガのうなじを噛んだと告白される。
運命の番と王太子の言う相手が落としていったという髪飾りに、オズワルドは見覚えがあった――――
※他サイトにも掲載中
★⌒*+*⌒★ ☆宣伝☆ ★⌒*+*⌒★
「婚約破棄された不遇令嬢ですが、イケオジ辺境伯と幸せになります!」
が、レジーナブックスさまより発売中です。
どうぞよろしくお願いいたします。m(_ _)m
オメガの復讐
riiko
BL
幸せな結婚式、二人のこれからを祝福するかのように参列者からは祝いの声。
しかしこの結婚式にはとてつもない野望が隠されていた。
とっても短いお話ですが、物語お楽しみいただけたら幸いです☆

5回も婚約破棄されたんで、もう関わりたくありません
くるむ
BL
進化により男も子を産め、同性婚が当たり前となった世界で、
ノエル・モンゴメリー侯爵令息はルーク・クラーク公爵令息と婚約するが、本命の伯爵令嬢を諦められないからと破棄をされてしまう。その後辛い日々を送り若くして死んでしまうが、なぜかいつも婚約破棄をされる朝に巻き戻ってしまう。しかも5回も。
だが6回目に巻き戻った時、婚約破棄当時ではなく、ルークと婚約する前まで巻き戻っていた。
今度こそ、自分が不幸になる切っ掛けとなるルークに近づかないようにと決意するノエルだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる