41 / 111
第3章 王宮生活<始動編>
40、癒しのチカラ<前>
しおりを挟む
先に話されたのは、セリム様だった。
「レンヤード、私もその事に興味がある。
アルフに行う前に、先に、私にしてくれないか?」
「わかりました。
ただ、姉以外に試したことがなくて……もし、著しい効果がなくても、お咎めなしにしていただけると有難いのですが……」
「もちろんだ、気楽にするがよい」
なぜか、僕のお願いに答えてくれたのは、セリム様ではなくアルフ様だったが、セリム様もアルフ様の言葉に頷いていたので、僕は先にセリム様へ行うことにした。
それに僕の勝手な想像だが、神力が高そうなセリム様だと、もし万が一、僕がしていることが良くないものだった場合、すぐに止めてくださるだろうと思ったからだ。
僕は席を立ち、座っているセリム様の傍らまで近づくと跪いた。
「あの……お手を拝借しても構いませんか?」
「構わないが、どうするのだ?」
セリム様が、不思議そうな表情で、首を傾げられた。
その表情が、まるで幼な子の純真さに重なり……不躾ながら、僕は、年上であろうセリム様に、ちょっとした可愛さを感じてしまった。
ダメだ……ニマニマ笑っては!
セリム様がじっと待っていたので、僕はエヘン、エヘンと誤魔化すように咳払いをして、真面目な顔を作り、セリム様に答えた。
「手の甲を、私の額につけて祈りたいのです。
根拠はございませんが、いつもその形を取らせていただいているので、私が集中できますし、効果があるような気がするだけなのですが……」
「いいだろう」
そう言ってセリム様は、素直に片手を差し出してくれた。
セリム様の差し出された片手を、僕は両手で捧げ持ち、そのままゆっくりと自分の額に当て……目を閉じ、静かに祈る。
どうか、セリム様の憂いが浄化されますように
しばらくすると、いつものように、僕の額がじんわりと熱くなり、その熱がススっーと、セリム様の手に移行したように感じた。
「これは……」
ゴクリとセリム様が息を呑み込む音が、やけに響き渡る。
「レンヤード、これは……」
セリム様から熱心に見つめられるのが気恥ずかしくなった僕は、不敬にもセリム様が言いかけた言葉に被せるように、やや俯きながら、セリム様へ問いかけた。
「どうでしたか?
別に肉体を癒すといったような派手なものではないのですが、少し気分がスッキリしたような感じがしませんか?」
「あぁ……そうだな、久しぶりにとても爽やかな気分だ。
感謝する、レンヤード」
「どういうことだ?セリム?」
早く説明しろとばかりに、アルフ様がセリム様へ話しかけた。
「説明は後だ。
アルフ、これは、お前が一番求めていたものだ。
レンヤードに不調が見られないなら、ぜひ、お前もやってもらえ」
セリム様は、アルフ様に向かってそう話されると、今度は僕を気遣ってくれる。
「レンヤード、体調はどうだ?
身体がふらついたり、頭が割れるような痛さを感じないか?」
僕は無事に成功した嬉しさで、ニッコリ笑ってセリム様へ返事をした。
「はい、何ともございません。
あの……本当にアルフ様にも、同じことを行ってもよいのでしょうか?」
「そなたの体調に何も問題がないなら、ぜひお願いしたい。
ただ、決して無理はするな」
僕の体調をしきりに心配してくださるセリム様のお心遣いに、僕はジーンと感動してしまった。
「はい、大丈夫です」
僕はそう答えると、向かいに座っているアルフ様の元へ行き、先ほどと同じように、アルフ様の足元へ跪いた。
「すまないが、よろしく頼むよ」
これから自身へ起こるであろう出来事に、湧いてくる好奇心が隠せないのか、混じり気のない綺麗なアクアマリンの瞳を輝かせて、アルフ様から見つめられる。
僕は、アルフ様の少年のような心意気に、思わずクスッと笑ってしまった。
同じくニッコリと笑われ、差し出されたアルフ様の手を、セリム様の時と同じように、捧げ持ち、ゆっくりと額に当てて、目を閉じて祈る。
どうか、アルフ様の憂いが浄化されますように
セリム様の時より、はるかに熱い光が僕の額から生まれ、アルフ様の手を介して、アルフ様の身体全体に移っていく感覚が伝わってきた。
「おおっ……これは!」
アルフ様は絶句され、しばらくの間、部屋はシーンと静まり返った。
「レンヤード、私もその事に興味がある。
アルフに行う前に、先に、私にしてくれないか?」
「わかりました。
ただ、姉以外に試したことがなくて……もし、著しい効果がなくても、お咎めなしにしていただけると有難いのですが……」
「もちろんだ、気楽にするがよい」
なぜか、僕のお願いに答えてくれたのは、セリム様ではなくアルフ様だったが、セリム様もアルフ様の言葉に頷いていたので、僕は先にセリム様へ行うことにした。
それに僕の勝手な想像だが、神力が高そうなセリム様だと、もし万が一、僕がしていることが良くないものだった場合、すぐに止めてくださるだろうと思ったからだ。
僕は席を立ち、座っているセリム様の傍らまで近づくと跪いた。
「あの……お手を拝借しても構いませんか?」
「構わないが、どうするのだ?」
セリム様が、不思議そうな表情で、首を傾げられた。
その表情が、まるで幼な子の純真さに重なり……不躾ながら、僕は、年上であろうセリム様に、ちょっとした可愛さを感じてしまった。
ダメだ……ニマニマ笑っては!
セリム様がじっと待っていたので、僕はエヘン、エヘンと誤魔化すように咳払いをして、真面目な顔を作り、セリム様に答えた。
「手の甲を、私の額につけて祈りたいのです。
根拠はございませんが、いつもその形を取らせていただいているので、私が集中できますし、効果があるような気がするだけなのですが……」
「いいだろう」
そう言ってセリム様は、素直に片手を差し出してくれた。
セリム様の差し出された片手を、僕は両手で捧げ持ち、そのままゆっくりと自分の額に当て……目を閉じ、静かに祈る。
どうか、セリム様の憂いが浄化されますように
しばらくすると、いつものように、僕の額がじんわりと熱くなり、その熱がススっーと、セリム様の手に移行したように感じた。
「これは……」
ゴクリとセリム様が息を呑み込む音が、やけに響き渡る。
「レンヤード、これは……」
セリム様から熱心に見つめられるのが気恥ずかしくなった僕は、不敬にもセリム様が言いかけた言葉に被せるように、やや俯きながら、セリム様へ問いかけた。
「どうでしたか?
別に肉体を癒すといったような派手なものではないのですが、少し気分がスッキリしたような感じがしませんか?」
「あぁ……そうだな、久しぶりにとても爽やかな気分だ。
感謝する、レンヤード」
「どういうことだ?セリム?」
早く説明しろとばかりに、アルフ様がセリム様へ話しかけた。
「説明は後だ。
アルフ、これは、お前が一番求めていたものだ。
レンヤードに不調が見られないなら、ぜひ、お前もやってもらえ」
セリム様は、アルフ様に向かってそう話されると、今度は僕を気遣ってくれる。
「レンヤード、体調はどうだ?
身体がふらついたり、頭が割れるような痛さを感じないか?」
僕は無事に成功した嬉しさで、ニッコリ笑ってセリム様へ返事をした。
「はい、何ともございません。
あの……本当にアルフ様にも、同じことを行ってもよいのでしょうか?」
「そなたの体調に何も問題がないなら、ぜひお願いしたい。
ただ、決して無理はするな」
僕の体調をしきりに心配してくださるセリム様のお心遣いに、僕はジーンと感動してしまった。
「はい、大丈夫です」
僕はそう答えると、向かいに座っているアルフ様の元へ行き、先ほどと同じように、アルフ様の足元へ跪いた。
「すまないが、よろしく頼むよ」
これから自身へ起こるであろう出来事に、湧いてくる好奇心が隠せないのか、混じり気のない綺麗なアクアマリンの瞳を輝かせて、アルフ様から見つめられる。
僕は、アルフ様の少年のような心意気に、思わずクスッと笑ってしまった。
同じくニッコリと笑われ、差し出されたアルフ様の手を、セリム様の時と同じように、捧げ持ち、ゆっくりと額に当てて、目を閉じて祈る。
どうか、アルフ様の憂いが浄化されますように
セリム様の時より、はるかに熱い光が僕の額から生まれ、アルフ様の手を介して、アルフ様の身体全体に移っていく感覚が伝わってきた。
「おおっ……これは!」
アルフ様は絶句され、しばらくの間、部屋はシーンと静まり返った。
178
お気に入りに追加
1,184
あなたにおすすめの小説
国を救った英雄と一つ屋根の下とか聞いてない!
古森きり
BL
第8回BL小説大賞、奨励賞ありがとうございます!
7/15よりレンタル切り替えとなります。
紙書籍版もよろしくお願いします!
妾の子であり、『Ω型』として生まれてきて風当たりが強く、居心地の悪い思いをして生きてきた第五王子のシオン。
成人年齢である十八歳の誕生日に王位継承権を破棄して、王都で念願の冒険者酒場宿を開店させた!
これからはお城に呼び出されていびられる事もない、幸せな生活が待っている……はずだった。
「なんで国の英雄と一緒に酒場宿をやらなきゃいけないの!」
「それはもちろん『Ω型』のシオン様お一人で生活出来るはずもない、と国王陛下よりお世話を仰せつかったからです」
「んもおおおっ!」
どうなる、俺の一人暮らし!
いや、従業員もいるから元々一人暮らしじゃないけど!
※読み直しナッシング書き溜め。
※飛び飛びで書いてるから矛盾点とか出ても見逃して欲しい。
嵌められた悪役令息の行く末は、
珈琲きの子
BL
【書籍化します◆アンダルシュノベルズ様より刊行】
公爵令息エミール・ダイヤモンドは婚約相手の第二王子から婚約破棄を言い渡される。同時に学内で起きた一連の事件の責任を取らされ、牢獄へと収容された。
一ヶ月も経たずに相手を挿げ替えて行われた第二王子の結婚式。他国からの参列者は首をかしげる。その中でも帝国の皇太子シグヴァルトはエミールの姿が見えないことに不信感を抱いた。そして皇太子は祝いの席でこう問うた。
「殿下の横においでになるのはどなたですか?」と。
帝国皇太子のシグヴァルトと、悪役令息に仕立て上げられたエミールのこれからについて。
【タンザナイト王国編】完結
【アレクサンドライト帝国編】完結
【精霊使い編】連載中
※web連載時と書籍では多少設定が変わっている点があります。

【完結】可愛いあの子は番にされて、もうオレの手は届かない
天田れおぽん
BL
劣性アルファであるオズワルドは、劣性オメガの幼馴染リアンを伴侶に娶りたいと考えていた。
ある日、仕えている王太子から名前も知らないオメガのうなじを噛んだと告白される。
運命の番と王太子の言う相手が落としていったという髪飾りに、オズワルドは見覚えがあった――――
※他サイトにも掲載中
★⌒*+*⌒★ ☆宣伝☆ ★⌒*+*⌒★
「婚約破棄された不遇令嬢ですが、イケオジ辺境伯と幸せになります!」
が、レジーナブックスさまより発売中です。
どうぞよろしくお願いいたします。m(_ _)m
あなたは僕の運命の番 出会えた奇跡に祝福を
羽兎里
BL
本編完結いたしました。覗きに来て下さった方々。本当にありがとうございました。
番外編を開始しました。
優秀なαの兄達といつも比べられていたΩの僕。
αの父様にも厄介者だと言われていたけど、それは仕方がない事だった。
そんな僕でもようやく家の役に立つ時が来た。
αであるマティアス様の下に嫁ぐことが決まったんだ。
たとえ運命の番でなくても僕をもらってくれると言う優しいマティアス様。
ところが式まであとわずかというある日、マティアス様の前に運命の番が現れてしまった。
僕はもういらないんだね。
その場からそっと僕は立ち去った。
ちょっと切ないけれど、とても優しい作品だと思っています。
他サイトにも公開中。もう一つのサイトにも女性版の始めてしまいました。(今の所シリアスですが、どうやらギャグ要素満載になりそうです。)
転生したら嫌われ者No.01のザコキャラだった 〜引き篭もりニートは落ちぶれ王族に転生しました〜
隍沸喰(隍沸かゆ)
BL
引き篭もりニートの俺は大人にも子供にも人気の話題のゲーム『WoRLD oF SHiSUTo』の次回作を遂に手に入れたが、その直後に死亡してしまった。
目覚めたらその世界で最も嫌われ、前世でも嫌われ続けていたあの落ちぶれた元王族《ヴァントリア・オルテイル》になっていた。
同じ檻に入っていた子供を看病したのに殺されかけ、王である兄には冷たくされ…………それでもめげずに頑張ります!
俺を襲ったことで連れて行かれた子供を助けるために、まずは脱獄からだ!
重複投稿:小説家になろう(ムーンライトノベルズ)
注意:
残酷な描写あり
表紙は力不足な自作イラスト
誤字脱字が多いです!
お気に入り・感想ありがとうございます。
皆さんありがとうございました!
BLランキング1位(2021/8/1 20:02)
HOTランキング15位(2021/8/1 20:02)
他サイト日間BLランキング2位(2019/2/21 20:00)
ツンデレ、執着キャラ、おバカ主人公、魔法、主人公嫌われ→愛されです。
いらないと思いますが感想・ファンアート?などのSNSタグは #嫌01 です。私も宣伝や時々描くイラストに使っています。利用していただいて構いません!
元ベータ後天性オメガ
桜 晴樹
BL
懲りずにオメガバースです。
ベータだった主人公がある日を境にオメガになってしまう。
主人公(受)
17歳男子高校生。黒髪平凡顔。身長170cm。
ベータからオメガに。後天性の性(バース)転換。
藤宮春樹(ふじみやはるき)
友人兼ライバル(攻)
金髪イケメン身長182cm
ベータを偽っているアルファ
名前決まりました(1月26日)
決まるまではナナシくん‥。
大上礼央(おおかみれお)
名前の由来、狼とライオン(レオ)から‥
⭐︎コメント受付中
前作の"番なんて要らない"は、編集作業につき、更新停滞中です。
宜しければ其方も読んで頂ければ喜びます。

巻き戻りした悪役令息は最愛の人から離れて生きていく
藍沢真啓/庚あき
BL
婚約者ユリウスから断罪をされたアリステルは、ボロボロになった状態で廃教会で命を終えた……はずだった。
目覚めた時はユリウスと婚約したばかりの頃で、それならばとアリステルは自らユリウスと距離を置くことに決める。だが、なぜかユリウスはアリステルに構うようになり……
巻き戻りから人生をやり直す悪役令息の物語。
【感想のお返事について】
感想をくださりありがとうございます。
執筆を最優先させていただきますので、お返事についてはご容赦願います。
大切に読ませていただいてます。執筆の活力になっていますので、今後も感想いただければ幸いです。
他サイトでも公開中
回帰したシリルの見る夢は
riiko
BL
公爵令息シリルは幼い頃より王太子の婚約者として、彼と番になる未来を夢見てきた。
しかし王太子は婚約者の自分には冷たい。どうやら彼には恋人がいるのだと知った日、物語は動き出した。
嫉妬に狂い断罪されたシリルは、何故だかきっかけの日に回帰した。そして回帰前には見えなかったことが少しずつ見えてきて、本当に望む夢が何かを徐々に思い出す。
執着をやめた途端、執着される側になったオメガが、次こそ間違えないようにと、可愛くも真面目に奮闘する物語!
執着アルファ×回帰オメガ
本編では明かされなかった、回帰前の出来事は外伝に掲載しております。
性描写が入るシーンは
※マークをタイトルにつけます。
物語お楽しみいただけたら幸いです。
***
2022.12.26「第10回BL小説大賞」で奨励賞をいただきました!
応援してくれた皆様のお陰です。
ご投票いただけた方、お読みくださった方、本当にありがとうございました!!
☆☆☆
2024.3.13 書籍発売&レンタル開始いたしました!!!!
応援してくださった読者さまのお陰でございます。本当にありがとうございます。書籍化にあたり連載時よりも読みやすく書き直しました。お楽しみいただけたら幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる