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第3章 王宮生活<始動編>
38、奇妙なお茶会<中>
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「なんだ、なんだ、知り合いなのか?」
僕がクスクス笑っていると、金髪の男性から興味深げに声をかけられてしまった。
僕は慌てて体格の良い神官様から、目の前の男性へ視線を向け、簡単に経緯を説明した。
「以前、天気の良い日にブラっと散歩してた時に、あちらの庭園に水遣りの仕事をいただいた、ご縁がありまして……」
そう僕は答えると、ここのガラス窓からよく見える、見事な庭園を指差した。
僕の指先に誘われるように、皆が庭園へ一斉に目を向ける。
「最近、一段と輝いて見えるので、誰が手入れしているのかと気になってはいたのだが……そうか、そなただったのか」
感慨深げに、金髪の男性に言われるので、僕は嬉しさが込み上げてきて……誤魔化すように、へへへっと笑ってしまった。
一方、セリム様は、ちょっと意外そうに、体格の良い神官様へ話しかけられる。
「ロイ、お前が?」
「申し訳ありません。
あの時は地方から来たばかりの新入りだと、勘違いしており……一方的に命じてしまったのです」
ロイと呼ばれた神官様が、大きな身体を目いっぱい小さくして、心底申し訳なさそうに言うので、僕は急いで、お二人の会話へ入り込んで説明した。
「いえ、いいんです、侍女にも注意されたんですが、動きやすそうなこの服のデザインを僕が気に入ってしまい……ワガママを通して作ってもらったのが、勘違いさせてしまった原因でしょう。
それに、最近やっと体調が回復して元気になったのですが、何もやることがなく、少々暇を持て余しておりましたので、仕事をいただいて、逆に嬉しかったです。
ありがとうございました、ロイ様」
僕はそう言い終えると、ロイ様に向かって頭を下げた。
「そっ、そんな私ごときに……頭をお上げください」
ロイ様からそう言われると同時に、セリム様からも注意を受けた。
「ロイは私の副官だから、敬称は不要だ、レンヤード」
えっ、そうなの?
僕は慌てて、言い添える。
「申し訳ありません、私は、ずっと長らく病で伏せっておりまして……恥ずかしながら、宮中のことなど、何も存じ上げないのです」
そう、まずはセリム様がどういう方か知らないんだけど……このロイさんが部下だから……それなりに偉い方だよね?
ついでに、目の前にいる金髪の男性も、誰なのか気になるんだけど……今さら質問しにくい!
どうしよう?
色んな思いが脳内を駆け巡り……こめかみに汗が流れるのを気にしつつ、僕は正直に申し上げると、僕の心中を読んだかのように、目の前の男性から質問された。
「では、私のことも?」
「恐れながら……はい……存じ上げません」
僕は……もう……頭を下げつづけるしかない。
「はははははっ……だから、先ほど、私の茶の誘いを無視したのか!」
大笑いする男性に、これ以上誤解されないよう、僕は一度頭を上げ、必死に弁解した。
「あっ……あの……そのぉ……無視したのではなく……会話されていたのがセリム様だったので……面識がない私が同席するのも……不敬かと思い……」
軽くパニックを起こしている僕は、真っ赤になるやら、真っ青になるやらで、言葉もすんなり出てこない。
「ふっ……不敬だと……」
僕の言葉のどれがツボに入ったのか分からないが、金髪の男性は身体を折り曲げ、さらにクククッと笑い続ける。
「レンヤード様……この方は」
見かねたロイさんが、僕に声をかけようとした時、空気が急変した。
「言うな……このままでよい」
一瞬でピーンと緊張感が張り詰める。
まるで支配者の一声だ……もしかして……この方もアルファ?
僕の顔色がガラリと変化したのを見られて、張り詰めた空気が、すぐ緩められた。
何事もなかったように……それと意識されてだろうか、幾分声のトーンが楽しげなものに変わり、僕は男性から再び、声をかけられた。
「では、起きてる時には、初めましてだな。
私はアルフという。
先ほど無意識に覇気を出してしまい……申し訳なかった。
多分、そなたには感じ取れたと思うが……私はアルファだ。
だが、安心しろ、既に番である妻もいるし、かわいい子もいる」
「はぁ」
なんとも間抜けだが、僕はそう返事するしかなかった。
僕がクスクス笑っていると、金髪の男性から興味深げに声をかけられてしまった。
僕は慌てて体格の良い神官様から、目の前の男性へ視線を向け、簡単に経緯を説明した。
「以前、天気の良い日にブラっと散歩してた時に、あちらの庭園に水遣りの仕事をいただいた、ご縁がありまして……」
そう僕は答えると、ここのガラス窓からよく見える、見事な庭園を指差した。
僕の指先に誘われるように、皆が庭園へ一斉に目を向ける。
「最近、一段と輝いて見えるので、誰が手入れしているのかと気になってはいたのだが……そうか、そなただったのか」
感慨深げに、金髪の男性に言われるので、僕は嬉しさが込み上げてきて……誤魔化すように、へへへっと笑ってしまった。
一方、セリム様は、ちょっと意外そうに、体格の良い神官様へ話しかけられる。
「ロイ、お前が?」
「申し訳ありません。
あの時は地方から来たばかりの新入りだと、勘違いしており……一方的に命じてしまったのです」
ロイと呼ばれた神官様が、大きな身体を目いっぱい小さくして、心底申し訳なさそうに言うので、僕は急いで、お二人の会話へ入り込んで説明した。
「いえ、いいんです、侍女にも注意されたんですが、動きやすそうなこの服のデザインを僕が気に入ってしまい……ワガママを通して作ってもらったのが、勘違いさせてしまった原因でしょう。
それに、最近やっと体調が回復して元気になったのですが、何もやることがなく、少々暇を持て余しておりましたので、仕事をいただいて、逆に嬉しかったです。
ありがとうございました、ロイ様」
僕はそう言い終えると、ロイ様に向かって頭を下げた。
「そっ、そんな私ごときに……頭をお上げください」
ロイ様からそう言われると同時に、セリム様からも注意を受けた。
「ロイは私の副官だから、敬称は不要だ、レンヤード」
えっ、そうなの?
僕は慌てて、言い添える。
「申し訳ありません、私は、ずっと長らく病で伏せっておりまして……恥ずかしながら、宮中のことなど、何も存じ上げないのです」
そう、まずはセリム様がどういう方か知らないんだけど……このロイさんが部下だから……それなりに偉い方だよね?
ついでに、目の前にいる金髪の男性も、誰なのか気になるんだけど……今さら質問しにくい!
どうしよう?
色んな思いが脳内を駆け巡り……こめかみに汗が流れるのを気にしつつ、僕は正直に申し上げると、僕の心中を読んだかのように、目の前の男性から質問された。
「では、私のことも?」
「恐れながら……はい……存じ上げません」
僕は……もう……頭を下げつづけるしかない。
「はははははっ……だから、先ほど、私の茶の誘いを無視したのか!」
大笑いする男性に、これ以上誤解されないよう、僕は一度頭を上げ、必死に弁解した。
「あっ……あの……そのぉ……無視したのではなく……会話されていたのがセリム様だったので……面識がない私が同席するのも……不敬かと思い……」
軽くパニックを起こしている僕は、真っ赤になるやら、真っ青になるやらで、言葉もすんなり出てこない。
「ふっ……不敬だと……」
僕の言葉のどれがツボに入ったのか分からないが、金髪の男性は身体を折り曲げ、さらにクククッと笑い続ける。
「レンヤード様……この方は」
見かねたロイさんが、僕に声をかけようとした時、空気が急変した。
「言うな……このままでよい」
一瞬でピーンと緊張感が張り詰める。
まるで支配者の一声だ……もしかして……この方もアルファ?
僕の顔色がガラリと変化したのを見られて、張り詰めた空気が、すぐ緩められた。
何事もなかったように……それと意識されてだろうか、幾分声のトーンが楽しげなものに変わり、僕は男性から再び、声をかけられた。
「では、起きてる時には、初めましてだな。
私はアルフという。
先ほど無意識に覇気を出してしまい……申し訳なかった。
多分、そなたには感じ取れたと思うが……私はアルファだ。
だが、安心しろ、既に番である妻もいるし、かわいい子もいる」
「はぁ」
なんとも間抜けだが、僕はそう返事するしかなかった。
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