「運命の番」だと胸を張って言えるまで

第1章 番(つがい)になるまで

18、逃さないための刻印(しるし) <前> ※

「気持ち良さそうだな」

　繊細せんさいかつ統制とうせいされた動きをし、中指一本で僕を快楽の海に沈しずめているシルヴィス様は、すごく冷静に見えた。

「シル……ヴィ……さまっ。
　余裕よゆう……っで。
　くっ……悔くやしい」

　そう、僕だけがこんなに、ぐちゃぐちゃになってて、ズルいと思った。

「ふっ……オレが余裕よゆう？
　全く違うぞ。
　今回は大事な用があるからな。

　次回からは間違まちがいなくレンに溺おぼれる。
　なぁ、レン、もう少しだけ乱みだれてくれ」

　シルヴィス様はそう言うと、孔あなへ指をもう一本増やして、前より少し早いリズムで抜ぬき差さしを繰くり返す。

　加くわえて、もう片方の手で僕のものを軽く握にぎり締しめた。

　親指の腹はらの部分で、トロリトロリと透明な液えきを垂たれ流している先端せんたん部分を、強つよすぎず弱よわすぎない絶妙ぜつみょうな力加減かげんでクリクリと撫なで回される。

　さらにシルヴィス様は、長い舌を突つき出して、僕の乳首をレロリレロリと、軽くなぞってきた。

「うわぁっ……ナニ……これっ。
　はっ……なし……て。
　なんか……くっるぅ……こわい」

　3箇所かしょも同時どうじに攻せめ立てられ、固く瞑つぶった目の裏うらに、チカチカと閃光せんこうが走る。

「怖こわくない……レン。
　一度いちどイクがいい」

　僕は、手元てもとにあった乱みだれたシーツを縋すがるように握にぎり締しめた。

　足の指が丸まり、脹脛ふくらはぎがピーンと伸のびる。

「あっ……んぁ……あっ。
　うああぁぁぁ」

　ほどなく、ビュビュビューっと、白濁はくだくの液体が、勢いきおいよく飛とび出した。

「ハッ、ハッ、ハッ、ハッ」

　一気に弛緩しかんした身体を投なげ出し、僕は息を整ととのえる。

　なので、次の対応が一拍いっぱく遅れた。

　シルヴィス様は、ちょうど力が抜ぬけていた僕の脚あしを、素早すばやく抱かかえ上げる。

　ごく自然に僕の孔あなへご自身を当てられ、そのまま腰こしを進められた。

　ヌプリとスムーズに先端せんたんが入る。

「ああっ……イヤっ。
　ぬいて…んっ」

　シルヴィス様は有無うむを言わさず、中に入った先端せんたんを小刻こきざみに前後ぜんごさせ、着実ちゃくじつに僕の隘路あいろを攻略こうりゃくしていく。

　だが、3分の2ほど僕の中にシルヴィス様が入った所で、コツンと何かに当たって動きが止まった。

「何かあるな……もう少しだけ進みたいんだが」

　そう言いながらも、シルヴィス様は無理には進もうとせず、そのまま腰を前後ぜんごにゆっくりと揺ゆらし続ける。

　初めて味あじわう圧迫感あっぱくかんで、いっぱいいっぱいだった僕の身体に、一定いっていの整ととのった挿入そうにゅうリズムが、快感を生うみ出した。

　もはや、様々さまざまな身体の変化に心がついていけず、僕の恐怖感は増ますばかり。

　ダメだと思いながらも、これまであらゆるものから守ってくれた者の名を無意識むいしきに出してしまった。

「うぅっ……テオぉ」

　もう体力的にも限界げんかいを迎むかえている僕は、声にも力が入らず、弱々よわよわしい呟つぶやきとなってしまう。

　それでもシルヴィス様の耳には届いたようだ。

「レンの運命の番つがいはオレだ！
　だから、テオとやらの運命は、レンではなく別のものがいるはずだ」

　僕は、ハッと息を飲んだ。

　そうだった……口では否定するが、もはや無駄むだな抵抗ていこうというばかりに身体はシルヴィス様を求めている。

　僕の番つがいはシルヴィス様に違いない。

　ということは、テオの運命の相手は、シルヴィス様が言う通りに、僕ではない、誰かということだ。

　当たり前の事実に今更いまさら気がつくが、快感に支配された頭は上手く回らない。

　ただ、胸の奥がズキンと痛んで、呆然ぼうぜんとしてしまう。

　またもや、その隙すきをシルヴィス様から狙ねらわれ、力強い一撃ストロークが僕の孔あなへとバチンと突つきつけられた。

　ぐぽっ

　お腹の中心がジーンと蠢うごめいて、グワっと熱くなる。

「あああっ……うわっ……あっん」

　僕は思わず、大声で叫さけんでしまった。

「全部……入ったぞ、レン……いい子だ」

　耳元みみもとで額ひたいから汗を垂たらすシルヴィス様にそう囁ささやかれ、僕は身震みぶるいする。

　容赦ようしゃなく奥を抉えぐられ、時々ときどき、ビリリッと体感たいかんする場所スポットを何度も連続して突つかれるので、声を上げ続けてしまった。

「あっ……うっ……あぁ」

　舌が激はげしく絡からみ取られ、歯列しれつをゆっくりとなぞられる。

　上顎うわあごの裏うらをレロレロと大きな舌でくすぐられ、再ふたたび僕の舌は、深く吸すわれた。

　気持ち良すぎて……息が止まりそうだった。