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第3章 ウワサの行方(ゆくえ)

27、まさかの心当たり

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 腕の中から見上げた、この角度でもため息がでるほど、美しい容貌ようぼう

 きたえられた筋肉で隆起りゅうきしているため、思わず突き出した手の平でもつかめてしまう、見事な雄っぱい!!

 もしかして、この人は!!!

 マーガレットがヒィッと息を吸い込んで、ある結論をみちびき出そうとした瞬間。

 ベリベリベリリィッ

 すさまじい勢いで、マーガレットの身体からだと、鷲掴わしづかみにしたままのお胸様を引き離すほどの、強い衝撃しょうげきを受けた。

 何が起きたの?

 茫然ぼうぜんとしながらもマーガレットが確認したところ、誰かの両腕が、はたからみたら、抱きしめあった状態のマーガレットとエドワード様を左右に引きいていたのであった。

「だっ……大先輩……」

 驚きのあまり、マーガレットは思わず、その両腕の持ち主めいつぶやいてしまう。

「ドサクサにまぎれて何やってるの?
 マーガレット?」

 大先輩の目は、嫉妬しっとの炎でメラメラ燃え上がっており、ただちにマーガレットは詰問きつもんされた。

 その憤怒ふんぬまとった大先輩のあまりの迫力はくりょくに、マーガレットはおびえ、恐怖のあまり、言葉が出てこない。

 代わりに、何らかの意図を持った行動ではないことをアピールするため、またしてもブンブンと首を左右に振った。

「そう……ね、コレは不幸な事故よね?
 だけど……」

 大先輩は自分に言い聞かすようにそうつぶやくと、クルリとエドワード様に向き合い、こう宣言した。

「うちのマーガレットが、エドワード様のお身体からだれるという、大失態しったいおかしてしまい、大変申し訳ありません。

 エドワード様のお礼の言葉は、私が代わりに受け取りまして、本人には後から伝えますので、失礼を働いたマーガレットを、一旦いったん、退室させますわね」

 大先輩は、エドワード様にそうなめらかに申し出ると、マーガレットの襟首えりくびおもむろつかむ。

 この時、マーガレットの視界のすみには、呆気あっけに取られた表情で、両腕を前に差し出したままのエドワード様が見えた。

 だが、マーガレットは身動き一つ、取れなかった。

 なぜなら、大先輩の指先はさりげに、マーガレットの首筋の太い血管まで、押さえていたからだ。

 さすが大先輩、そこ急所!

 異様いような状況にも関わらず、マーガレットは、まず先輩の手グセに感動した。

 なるほど……エドワード様にれるのは、大先輩からしてみると、犯罪にあたるのね

 マーガレットは首元をつかまれたまま、大先輩の行動を分析ぶんせきしていると、何かさっするものがあったのか、大先輩はマーガレットの身体を、後方こうほうへズリっと押し下げた。

 大先輩にされるがまま、大人しく身をまかせていたマーガレットだったが、目だけは、何故だかせられたかのように、エドワード様を追ってしまう。

 そのエドワード様も、ようやく状況を受け入れたのか、両腕を下ろしはしたが、うるわしの眼光がんこうは、まだマーガレットを熱く見つめたままだった。

 そのことにマーガレットが意識した瞬間、マーガレットの胸はドキンと震え……呼吸が乱れる。

 そしてやはりあの考えが、脳裏のうりよみがえった。

 まさか、やっぱり……あの朝のお身体からだは、エドワード様なの?

 マーガレットが1人で大混乱こんらんおちいっている中、大先輩は容赦ようしゃなく命令を発する。

「退室を!」

 大先輩のその一言で、音も無く静かに数人がマーガレットの背後はいごに忍び寄り、マーガレットの両腕をガッツリ拘束こうそくしたまま、そのまますみやかに出入口扉へ連行れんこうしていく。

「待て!」

 あわてた声でエドワード様が呼び止めたような気がしたが、それをき消すかのような、大先輩のオホホホホ~ッという甲高かんだかい笑い声がひびき渡り……やがて、パタンと衣装部の扉がマーガレットの目の前で、思いっきり閉められた。

 そうだった、確か大先輩、エドワード様ファンクラブの幹部かんぶだった!
 ということは、この連行れんこうしている方々も、衣装部のエドワード様ファンクラブ会員なのよね!!

 マーガレットは遠い目をしながら、会員の方々にしたがった。

 その後、別室にてしばらく軟禁なんきんされていたマーガレットだったが、エドワード様への対応を終え、入室してきた大先輩に、今後、エドワード様にれることのないように!との厳重げんじゅう注意を、懇々こんこんと聞かされる。

 それから、今回のマーガレットのやらかしに対して、大先輩のパシリを3回つとめるというペナルティを有無うむを言わさず了承りょうしょうさせられた後、ようやく解放された。

 急ぎの仕事に取り掛かるため、マーガレットはすぐに部署ぶしょに戻ったが、そのさいすでに自分の仕事に取り掛かっている、皆んなのするど一瞥いちべつびた。

 思わず、一瞬、入室を躊躇ためらったマーガレットだったが、それ以上のことはなかったので、ホッと胸をで下ろし、そそくさと元の自分の席に座る。

 さっそくやりかけた仕事を手に取りながら、マーガレットは、もう一度、強く心に誓った。

 やっぱり今後、エドワード様には、決して近寄らないと!
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