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あなたのことが好き
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リエルは頭が混乱している。
どう返答すべきか悩んだが、これだけは言えるだろうと思うことを口にした。
「偽の婚約者になれというのも、嘘なの?」
「あのとき告白しても、君は俺を受け入れないだろう」
「そうね。あのときそうしていたら、まるで傷心につけ込んでいると思うでしょうね」
「だから、形だけそうしてもらった。だが……」
グレンは一度ひと呼吸して、ふたたび堂々と告げた。
「あのときキスをしたいと言ったのは本心だ」
リエルは頭から首まで真っ赤になって絶句した。
あのときを思い出す。
恋人のふりをするためにハグくらいまでは許すと言った。
しかし冗談でキスでもしとくかと言ってきたグレンに「バカ!」とリエルは返した。
「それからずっと、君に好意を示してきたつもりだよ」
リエルは以前エマが冗談めいて言った言葉を思い出す。
『絶対リエルさまに好意を持っていると思いますよ』
あれはまだアランの婚約者だったときのことだ。
(あんなの冗談だとばかり思って……)
グレンはフォークを静かに置いて、立ち上がった。
そして、ゆっくりとリエルの席まで歩いてくる。
リエルはどきりとして身構えてしまった。
グレンはテーブルに手をついて、リエルを斜め上から見下ろした。
なんだか今夜はいつもより、グレンの金髪が眩しく見える。
金の耳飾りがきらめく。
前髪から覗く美しい翠眼はリエルをまっすぐ捕らえていた。
リエルは真っ赤になって狼狽える。
「ち、近いわ……」
「いや?」
「待って。少し心を整理したいの」
(いきなり好きだなんて言われても、私はどうすればいいのよ?)
グレンは少し離れて真面目な顔で話す。
「わかった。じゃあ、心の整理ができたら俺の部屋に来て」
「どうしてそうなるのよ!」
「どちらでもいいよ。いやなら無視すればいいし、リエルの気持ちを大事にしたい」
リエルは驚いた顔でグレンをじっと見つめる。
(いやじゃないわ。むしろ……でも、いきなりそんな……)
リエルの胸中は大混乱である。
「と、とにかく、今は食事をしましょう」
「ああ、そうだね」
グレンはにっこりと笑って自分の席に戻った。
その後、食事を再開したが、リエルは味を感じる余裕がなかった。
その夜、リエルは寝つけずにベッドの中で何度も寝返りを打った。
あれからずっとドキドキして落ち着かないのだ。
(眠れるわけがないわ。もう、グレンのせいよ)
リエルは起き上がってベッドから出た。
テーブルにある水差しを持ち、グラスに水を注いで一気に飲み干す。
それからソファに座って考え込んだ。
(心の整理だなんて、どういう意味なの? 私にどうしろと……)
グレンと出会ってからのことを思い起こす。
アランとの婚約披露パーティの3日前に、グレンはリエルの部屋に侵入した。
あのとき、話し合って国を出ることを決意した。
グレンに婚約者のふりをしてくれと言われ、冗談でキスを迫られたとき。
(いやじゃなかったわ)
それに皇宮主催のパーティのとき、あの事件のあとでグレンに抱きしめられたときの安心感は本物だった。
頭を撫でられたときも、抱きしめられたときも悪い気はしなかった。
(むしろ、心地よかったくらい……)
それよりも、一番意識したのはあのときだろう。
公爵家でのパーティで、まだ世間に婚約者と発表していなかったときのことだ。
リエルにとってグレンはあまりにも遠い存在に見えた。
胸が痛くなった。
他の令嬢たちに笑顔を向けるグレンを見て、嫉妬した。
毎日充実しているはずなのに、とても空虚な気持ちになった。
(ああ、もう答えは出ていたんだわ)
どう返答すべきか悩んだが、これだけは言えるだろうと思うことを口にした。
「偽の婚約者になれというのも、嘘なの?」
「あのとき告白しても、君は俺を受け入れないだろう」
「そうね。あのときそうしていたら、まるで傷心につけ込んでいると思うでしょうね」
「だから、形だけそうしてもらった。だが……」
グレンは一度ひと呼吸して、ふたたび堂々と告げた。
「あのときキスをしたいと言ったのは本心だ」
リエルは頭から首まで真っ赤になって絶句した。
あのときを思い出す。
恋人のふりをするためにハグくらいまでは許すと言った。
しかし冗談でキスでもしとくかと言ってきたグレンに「バカ!」とリエルは返した。
「それからずっと、君に好意を示してきたつもりだよ」
リエルは以前エマが冗談めいて言った言葉を思い出す。
『絶対リエルさまに好意を持っていると思いますよ』
あれはまだアランの婚約者だったときのことだ。
(あんなの冗談だとばかり思って……)
グレンはフォークを静かに置いて、立ち上がった。
そして、ゆっくりとリエルの席まで歩いてくる。
リエルはどきりとして身構えてしまった。
グレンはテーブルに手をついて、リエルを斜め上から見下ろした。
なんだか今夜はいつもより、グレンの金髪が眩しく見える。
金の耳飾りがきらめく。
前髪から覗く美しい翠眼はリエルをまっすぐ捕らえていた。
リエルは真っ赤になって狼狽える。
「ち、近いわ……」
「いや?」
「待って。少し心を整理したいの」
(いきなり好きだなんて言われても、私はどうすればいいのよ?)
グレンは少し離れて真面目な顔で話す。
「わかった。じゃあ、心の整理ができたら俺の部屋に来て」
「どうしてそうなるのよ!」
「どちらでもいいよ。いやなら無視すればいいし、リエルの気持ちを大事にしたい」
リエルは驚いた顔でグレンをじっと見つめる。
(いやじゃないわ。むしろ……でも、いきなりそんな……)
リエルの胸中は大混乱である。
「と、とにかく、今は食事をしましょう」
「ああ、そうだね」
グレンはにっこりと笑って自分の席に戻った。
その後、食事を再開したが、リエルは味を感じる余裕がなかった。
その夜、リエルは寝つけずにベッドの中で何度も寝返りを打った。
あれからずっとドキドキして落ち着かないのだ。
(眠れるわけがないわ。もう、グレンのせいよ)
リエルは起き上がってベッドから出た。
テーブルにある水差しを持ち、グラスに水を注いで一気に飲み干す。
それからソファに座って考え込んだ。
(心の整理だなんて、どういう意味なの? 私にどうしろと……)
グレンと出会ってからのことを思い起こす。
アランとの婚約披露パーティの3日前に、グレンはリエルの部屋に侵入した。
あのとき、話し合って国を出ることを決意した。
グレンに婚約者のふりをしてくれと言われ、冗談でキスを迫られたとき。
(いやじゃなかったわ)
それに皇宮主催のパーティのとき、あの事件のあとでグレンに抱きしめられたときの安心感は本物だった。
頭を撫でられたときも、抱きしめられたときも悪い気はしなかった。
(むしろ、心地よかったくらい……)
それよりも、一番意識したのはあのときだろう。
公爵家でのパーティで、まだ世間に婚約者と発表していなかったときのことだ。
リエルにとってグレンはあまりにも遠い存在に見えた。
胸が痛くなった。
他の令嬢たちに笑顔を向けるグレンを見て、嫉妬した。
毎日充実しているはずなのに、とても空虚な気持ちになった。
(ああ、もう答えは出ていたんだわ)
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