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彼らの最後②【アラン&ノエラ】
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「そもそも俺がこうなってしまった原因は何だ? お前だろう、ノエラ。お前が王宮に来てリエルの悪い噂を流した。俺を誘惑した。リエルの信用を失わせるように俺に仕向けた」
アランは微笑を浮かべながら言い放つ。
「お前がすべてを狂わせたんだ。死んで償え」
「そ、そんな……殿下……あたくし」
ノエラが助けを求めるように血で染まる手を伸ばすと、アランはそれを振り払った。
「汚い手で触るな。お前はもう俺の女じゃない」
「ど、どうして……あたくし、殿下のために……」
「はははっ、俺のためにめずらしい毒薬を手に入れたのか。役に立ったよ、ノエラ」
ノエラはふと気づいて疑問を口にする。
「あの薬を、飲んでいたのにどうして……」
解毒効果のあるラグレンスの薬を毎日紅茶に入れて飲んでいたはずだ。
混乱するノエラに向かって、アランがその疑問に答える。
「お前が飲んでいたのは、俺が偽装したただの水だ」
「え……そん、な……まさか……」
「ああ、そうだ。俺はあのときからお前を殺す予定だった」
つまりアランのために渡した毒薬は、ノエラ自身に使われてしまったということだ。
アランが王位を継承して安定した生活を手に入れるためにしたことなのに。
アランにとっての邪魔者をすべて排除するために。
そうしてやっと気づくのだ。
自分がアランにとっての邪魔者となっていたことに。
ノエラはショックとともに意識が薄れ、もはや言葉を発することができなくなった。
「殿下、医者が参りました」
「ああっ! ノエラ! なんてことだ! ノエラ、死なないでくれ!」
アランはわざと妻を心配する夫の姿を周囲に見せつけた。
そして命令する。
「この料理をすべて調べるんだ! 関わった人間すべてを調査して拷問しろ!」
この料理には毒が含まれている。
つまりこれを調理した人間に責任転嫁すればすべて片付く。
ノエラは意識を失う瞬間、リエルの笑顔が頭に浮かんだ。
(リエル……あたしを、笑っているの? ふんっ……生意気だわ)
ノエラは口もとに笑みを浮かべながら、ぱたりと動かなくなった。
王宮内は毒殺事件で大騒ぎとなった。
アランは事件の犯人に仕立て上げた者たちを次々と牢獄へぶち込んでしまった。
彼らは無罪を主張したが、アランは聞く耳を持たなかった。というよりはアラン自身がノエラ殺害の罪を彼らになすりつけたのだから。
そしてノエラの父であるメイゼル伯爵もアランに詰め寄った。
「殿下、なぜノエラを……あなたのために我がメイゼル家はすべてを捧げてきたというのに」
「黙れ!」
アランは掴みかかってくる伯爵を振り払った。
伯爵は信じられないという顔でアランを凝視している。
アランは険しい顔つきで伯爵を見据えて言った。
「王族に毒をもたらしたお前も同罪だ」
「あれは、殿下のために命をかけて……」
「だったら、今ここでその命を捧げろ」
アランの命じた騎士たちによって、伯爵は無理やり連れていかれる。
向かう先は牢獄だ。
「お前は拷問の末、見せしめの処刑とする」
「殿下! そんな! お慈悲を!」
伯爵の喚く声を冷静に聞きながら、アランはにやりと笑った。
(これで邪魔者はいなくなった)
国王はもうすぐ死ぬ。
そしてユリウスもノエラと同じ料理を食べたはずだ。
(今頃ユリウスも自室で死んでいる頃だろう)
アランは自室で解毒薬の瓶を手に持ち、にやけていた。
しかし次の瞬間、ユリウス率いる騎士たちがアランの部屋へ押し入ってきた。
アランは驚愕し、瓶を落としてしまった。
「兄上」
「ユリウス、お前どうして?」
その質問に、ユリウスは冷静に返答する。
「どうして毒の入った料理を食べて死んでいないのか、ですか? 兄上」
「なっ……!」
「やはり犯人は兄上でしたか」
「ユリウス、お前……!」
アランはユリウスの騎士たちに捕らえ、抵抗できないように床に体を押さえ込まれた。
「放せ! 俺は王太子だぞ! 次の国王だぞ!」
必死にもがきながら怒号するアランの姿を見て、ユリウスは悲観的な表情で言った。
「あなたはどうして、こうなってしまったのですか?」
アランは血眼になりながら、必死にユリウスを見上げて叫ぶ。
「うるさい! 俺をそんな目で見るな! だいたい、お前が生まれてきたから悪いんだ。お前がいなければ俺はお前と比較されることはなかった。お前がいなければ……!」
ユリウスは残念そうな顔で騎士に命じた。
「連れて行ってください」
アランは騎士たちに無理やり引きずられながら連れ出される。
だが、彼はなおも抵抗した。
「ユリウス! 兄に向かってこんなことをして、ただで済むと思うなよ! ユリウス!」
ユリウスはアランに背を向けたまま黙り込む。
やがて、ばたんと扉が閉まり部屋が静かになると、侍従がユリウスに声をかけた。
「ユリウス殿下、メイゼル伯爵はいかがいたしましょう?」
ユリウスは淡々と答える。
「処刑は待って。とりあえず、すべて自供させて」
「承知しました」
侍従が退室したあと、ユリウスはしばらくアランの部屋でひとり立ち尽くしていた。
アランは微笑を浮かべながら言い放つ。
「お前がすべてを狂わせたんだ。死んで償え」
「そ、そんな……殿下……あたくし」
ノエラが助けを求めるように血で染まる手を伸ばすと、アランはそれを振り払った。
「汚い手で触るな。お前はもう俺の女じゃない」
「ど、どうして……あたくし、殿下のために……」
「はははっ、俺のためにめずらしい毒薬を手に入れたのか。役に立ったよ、ノエラ」
ノエラはふと気づいて疑問を口にする。
「あの薬を、飲んでいたのにどうして……」
解毒効果のあるラグレンスの薬を毎日紅茶に入れて飲んでいたはずだ。
混乱するノエラに向かって、アランがその疑問に答える。
「お前が飲んでいたのは、俺が偽装したただの水だ」
「え……そん、な……まさか……」
「ああ、そうだ。俺はあのときからお前を殺す予定だった」
つまりアランのために渡した毒薬は、ノエラ自身に使われてしまったということだ。
アランが王位を継承して安定した生活を手に入れるためにしたことなのに。
アランにとっての邪魔者をすべて排除するために。
そうしてやっと気づくのだ。
自分がアランにとっての邪魔者となっていたことに。
ノエラはショックとともに意識が薄れ、もはや言葉を発することができなくなった。
「殿下、医者が参りました」
「ああっ! ノエラ! なんてことだ! ノエラ、死なないでくれ!」
アランはわざと妻を心配する夫の姿を周囲に見せつけた。
そして命令する。
「この料理をすべて調べるんだ! 関わった人間すべてを調査して拷問しろ!」
この料理には毒が含まれている。
つまりこれを調理した人間に責任転嫁すればすべて片付く。
ノエラは意識を失う瞬間、リエルの笑顔が頭に浮かんだ。
(リエル……あたしを、笑っているの? ふんっ……生意気だわ)
ノエラは口もとに笑みを浮かべながら、ぱたりと動かなくなった。
王宮内は毒殺事件で大騒ぎとなった。
アランは事件の犯人に仕立て上げた者たちを次々と牢獄へぶち込んでしまった。
彼らは無罪を主張したが、アランは聞く耳を持たなかった。というよりはアラン自身がノエラ殺害の罪を彼らになすりつけたのだから。
そしてノエラの父であるメイゼル伯爵もアランに詰め寄った。
「殿下、なぜノエラを……あなたのために我がメイゼル家はすべてを捧げてきたというのに」
「黙れ!」
アランは掴みかかってくる伯爵を振り払った。
伯爵は信じられないという顔でアランを凝視している。
アランは険しい顔つきで伯爵を見据えて言った。
「王族に毒をもたらしたお前も同罪だ」
「あれは、殿下のために命をかけて……」
「だったら、今ここでその命を捧げろ」
アランの命じた騎士たちによって、伯爵は無理やり連れていかれる。
向かう先は牢獄だ。
「お前は拷問の末、見せしめの処刑とする」
「殿下! そんな! お慈悲を!」
伯爵の喚く声を冷静に聞きながら、アランはにやりと笑った。
(これで邪魔者はいなくなった)
国王はもうすぐ死ぬ。
そしてユリウスもノエラと同じ料理を食べたはずだ。
(今頃ユリウスも自室で死んでいる頃だろう)
アランは自室で解毒薬の瓶を手に持ち、にやけていた。
しかし次の瞬間、ユリウス率いる騎士たちがアランの部屋へ押し入ってきた。
アランは驚愕し、瓶を落としてしまった。
「兄上」
「ユリウス、お前どうして?」
その質問に、ユリウスは冷静に返答する。
「どうして毒の入った料理を食べて死んでいないのか、ですか? 兄上」
「なっ……!」
「やはり犯人は兄上でしたか」
「ユリウス、お前……!」
アランはユリウスの騎士たちに捕らえ、抵抗できないように床に体を押さえ込まれた。
「放せ! 俺は王太子だぞ! 次の国王だぞ!」
必死にもがきながら怒号するアランの姿を見て、ユリウスは悲観的な表情で言った。
「あなたはどうして、こうなってしまったのですか?」
アランは血眼になりながら、必死にユリウスを見上げて叫ぶ。
「うるさい! 俺をそんな目で見るな! だいたい、お前が生まれてきたから悪いんだ。お前がいなければ俺はお前と比較されることはなかった。お前がいなければ……!」
ユリウスは残念そうな顔で騎士に命じた。
「連れて行ってください」
アランは騎士たちに無理やり引きずられながら連れ出される。
だが、彼はなおも抵抗した。
「ユリウス! 兄に向かってこんなことをして、ただで済むと思うなよ! ユリウス!」
ユリウスはアランに背を向けたまま黙り込む。
やがて、ばたんと扉が閉まり部屋が静かになると、侍従がユリウスに声をかけた。
「ユリウス殿下、メイゼル伯爵はいかがいたしましょう?」
ユリウスは淡々と答える。
「処刑は待って。とりあえず、すべて自供させて」
「承知しました」
侍従が退室したあと、ユリウスはしばらくアランの部屋でひとり立ち尽くしていた。
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