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壊れていく王太子①【アラン】
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アランは執務が多すぎて書類を手にパニックになっていた。
そんなときに限って、次々と問題事が飛び込んでくるのだ。
「殿下、アストレア帝国から罪人の引き渡し要請が来ています」
「うるさい。それくらいお前が何とかしろ!」
「……かしこまりました」
報告をした侍従は渋々頭を下げて退出した。
その後すぐに騎士がやって来た。
「またルカンの民が暴動を起こしていますが処理していいですよね?」
「わかっているならいちいち俺に訊くな!」
「承知しました。今後は報告だけ上げます」
騎士が立ち去ると、今度は深刻な顔をした大臣がやって来た。
「マークイン公爵閣下から嘆願書が届いています」
「確認しておけ。どうせろくでもないことだ」
「……かしこまりました」
大臣はおずおずと立ち去った。
その後、ノエラの新しい専属侍女がおどおどしながらやって来た。
「殿下、ノエラ妃殿下よりいつお越しになられるのかと」
「忙しいんだ! ノエラにかまっていられるか!」
「ひっ! か、かしこまりました!」
侍女はアランに怯えて逃げるように退出した。
「こんなときにノエラの相手などできるか!」
全員が出て行ったあと、アランはひとり執務室をうろうろした。
「やってもやっても仕事が終わらん。何なんだこの量は!」
アランは執務机の大量の書類を見てげんなりした。
ふと思い出すのはこの前再会したリエルの姿だ。
(リエルさえいればこんな面倒なことをする必要もないのに)
ふとグレンのことが頭によぎり、アランは無性に苛立った。
(あいつ、皇太子はいつも俺の邪魔をする。昔から、俺より乗馬も狩りも計算も何もかもうまくやって、失敗する俺を見下していやがった。あんな性格の悪い奴は存在するだけで罪だ)
アランはうっかりグレンの笑顔を思い出してしまい、ぶち切れた。
「笑うな! 俺のことを笑うな!」
怒り狂ったアランは扉に向かって書類の束を投げつけた。
書類はバラバラに散らばって床に落ちる。
部屋の外ではユリウスが扉をノックしようとしていたが、大きな物音とアランの怒声を聞いて入室を躊躇した。
「出直そう。今は何を言っても聞き入れてくれなさそうだ」
ユリウスは呆れ顔で帰ってしまった。
王宮内は以前にも増してアランとノエラの悪い噂ばかりが目立った。
使用人たちは不安な感情を共有するようにお互いに胸の内を吐露する。
「最近、アラン殿下のお顔を見た? 別人みたいに怖い顔をしていらっしゃるわよ」
「ええ、本当に。以前はもっとお優しそうな顔つきだったのに。最近はご機嫌が悪いのか八つ当たりばかりされるわ」
「ノエラ妃殿下のわがままも酷いわ。これなら愛想がなくてもカーレン令嬢のほうがまだよかったわよ」
使用人たちは周囲を警戒しながらひそひそと話す。
一方、大臣たちも困惑している様子で話していた。
「アラン殿下はまったく仕事をなさらない。困ったものだ」
「最近はノエラ妃殿下ともお過ごしにならないようだ」
「いろんな意味で不安だな」
さらにはこんな話も広まっている。
「そういえば、カーレン令嬢は殿下の執務までこなしていたっていう話よ」
「ええ? じゃあ、殿下が最近苛立っておられるのは仕事が自分に降りかかっているからなの?」
「賢そうなお方だと思ったのに、口先だけだったのかしら」
「口を慎みなさい。いつどこで聞かれているかわからないわ。最近の殿下は気に入らなければすぐ私たちを解雇されるから」
彼らのアランに関する噂話は瞬く間に王宮へ広がり、当然アラン本人の耳にも入ることとなった。
そんなときに限って、次々と問題事が飛び込んでくるのだ。
「殿下、アストレア帝国から罪人の引き渡し要請が来ています」
「うるさい。それくらいお前が何とかしろ!」
「……かしこまりました」
報告をした侍従は渋々頭を下げて退出した。
その後すぐに騎士がやって来た。
「またルカンの民が暴動を起こしていますが処理していいですよね?」
「わかっているならいちいち俺に訊くな!」
「承知しました。今後は報告だけ上げます」
騎士が立ち去ると、今度は深刻な顔をした大臣がやって来た。
「マークイン公爵閣下から嘆願書が届いています」
「確認しておけ。どうせろくでもないことだ」
「……かしこまりました」
大臣はおずおずと立ち去った。
その後、ノエラの新しい専属侍女がおどおどしながらやって来た。
「殿下、ノエラ妃殿下よりいつお越しになられるのかと」
「忙しいんだ! ノエラにかまっていられるか!」
「ひっ! か、かしこまりました!」
侍女はアランに怯えて逃げるように退出した。
「こんなときにノエラの相手などできるか!」
全員が出て行ったあと、アランはひとり執務室をうろうろした。
「やってもやっても仕事が終わらん。何なんだこの量は!」
アランは執務机の大量の書類を見てげんなりした。
ふと思い出すのはこの前再会したリエルの姿だ。
(リエルさえいればこんな面倒なことをする必要もないのに)
ふとグレンのことが頭によぎり、アランは無性に苛立った。
(あいつ、皇太子はいつも俺の邪魔をする。昔から、俺より乗馬も狩りも計算も何もかもうまくやって、失敗する俺を見下していやがった。あんな性格の悪い奴は存在するだけで罪だ)
アランはうっかりグレンの笑顔を思い出してしまい、ぶち切れた。
「笑うな! 俺のことを笑うな!」
怒り狂ったアランは扉に向かって書類の束を投げつけた。
書類はバラバラに散らばって床に落ちる。
部屋の外ではユリウスが扉をノックしようとしていたが、大きな物音とアランの怒声を聞いて入室を躊躇した。
「出直そう。今は何を言っても聞き入れてくれなさそうだ」
ユリウスは呆れ顔で帰ってしまった。
王宮内は以前にも増してアランとノエラの悪い噂ばかりが目立った。
使用人たちは不安な感情を共有するようにお互いに胸の内を吐露する。
「最近、アラン殿下のお顔を見た? 別人みたいに怖い顔をしていらっしゃるわよ」
「ええ、本当に。以前はもっとお優しそうな顔つきだったのに。最近はご機嫌が悪いのか八つ当たりばかりされるわ」
「ノエラ妃殿下のわがままも酷いわ。これなら愛想がなくてもカーレン令嬢のほうがまだよかったわよ」
使用人たちは周囲を警戒しながらひそひそと話す。
一方、大臣たちも困惑している様子で話していた。
「アラン殿下はまったく仕事をなさらない。困ったものだ」
「最近はノエラ妃殿下ともお過ごしにならないようだ」
「いろんな意味で不安だな」
さらにはこんな話も広まっている。
「そういえば、カーレン令嬢は殿下の執務までこなしていたっていう話よ」
「ええ? じゃあ、殿下が最近苛立っておられるのは仕事が自分に降りかかっているからなの?」
「賢そうなお方だと思ったのに、口先だけだったのかしら」
「口を慎みなさい。いつどこで聞かれているかわからないわ。最近の殿下は気に入らなければすぐ私たちを解雇されるから」
彼らのアランに関する噂話は瞬く間に王宮へ広がり、当然アラン本人の耳にも入ることとなった。
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