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崩壊の影【アラン&ノエラ】
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アランはリエルの使っていた妃の部屋をノエラに与えた。
それはつまり、ノエラを正妻にすると認めたようなものだ。
ふたりはソファにとなり合って座り、ぴったりくっついて話した。
「結婚式はどのようにされるのですか?」
「ああ、そうだな。盛大に挙げるつもりだ。君に似合う最高級のドレスを仕立て屋にオーダーしよう」
「まあ、嬉しいですわ。あたくし最高に幸せな花嫁ですわね」
大喜びのノエラを見て、アランは満足げに笑いながら話を進める。
「ああ、そうだ。披露宴には多くの家門を招待する。君には家門の名をすべて覚えてもらうことになるが、それほど苦ではないから心配しなくていい」
「えっ……?」
ノエラは口を開けたまま呆気にとられた。
アランはノエラの様子に気づかず続ける。
「王太子妃になると貴族への挨拶とパーティのあとの返礼が仕事になる。だが、君ならできるだろう?」
「え、ええ……もちろんですわ」
ノエラは表情を引きつらせながら、何とか笑みを浮かべる。
「この部屋は歴代の妃が使っていた。となりの妃専用の書庫にはやるべきことが書かれた書物があるはずだ。それを読んで勉強しておくといい」
笑顔でそう話すアランに、ノエラはますます口もとが歪んだ。
「……勉強、でございますか?」
「案ずるな。難しいことなど何もない。君はとりあえず結婚式までに家門の名を記憶しておけばいいだけだ。返礼のことなら侍女か誰かに命じてやらせてもいいぞ」
「まあ、それならきっと大丈夫ですわ」
ノエラは何とか笑顔を取り繕う。
アランはノエラを抱き寄せてぼそりと言った。
「俺にはもうノエラしかいないんだ。愛しているよ」
「嬉しい。あたくしは国で一番幸せな女ですわ」
ノエラは極上の微笑みをアランに向けたあと、そっと彼の胸の中に顔をうずめた。そして、にやりと笑う。
(妃の仕事なんて面倒だけど、家門の名前くらいすぐ覚えられるでしょ)
ノエラは考えることをやめた。
とりあえず、今はアランと一緒にいることに酔いしれていた。
それはつまり、ノエラを正妻にすると認めたようなものだ。
ふたりはソファにとなり合って座り、ぴったりくっついて話した。
「結婚式はどのようにされるのですか?」
「ああ、そうだな。盛大に挙げるつもりだ。君に似合う最高級のドレスを仕立て屋にオーダーしよう」
「まあ、嬉しいですわ。あたくし最高に幸せな花嫁ですわね」
大喜びのノエラを見て、アランは満足げに笑いながら話を進める。
「ああ、そうだ。披露宴には多くの家門を招待する。君には家門の名をすべて覚えてもらうことになるが、それほど苦ではないから心配しなくていい」
「えっ……?」
ノエラは口を開けたまま呆気にとられた。
アランはノエラの様子に気づかず続ける。
「王太子妃になると貴族への挨拶とパーティのあとの返礼が仕事になる。だが、君ならできるだろう?」
「え、ええ……もちろんですわ」
ノエラは表情を引きつらせながら、何とか笑みを浮かべる。
「この部屋は歴代の妃が使っていた。となりの妃専用の書庫にはやるべきことが書かれた書物があるはずだ。それを読んで勉強しておくといい」
笑顔でそう話すアランに、ノエラはますます口もとが歪んだ。
「……勉強、でございますか?」
「案ずるな。難しいことなど何もない。君はとりあえず結婚式までに家門の名を記憶しておけばいいだけだ。返礼のことなら侍女か誰かに命じてやらせてもいいぞ」
「まあ、それならきっと大丈夫ですわ」
ノエラは何とか笑顔を取り繕う。
アランはノエラを抱き寄せてぼそりと言った。
「俺にはもうノエラしかいないんだ。愛しているよ」
「嬉しい。あたくしは国で一番幸せな女ですわ」
ノエラは極上の微笑みをアランに向けたあと、そっと彼の胸の中に顔をうずめた。そして、にやりと笑う。
(妃の仕事なんて面倒だけど、家門の名前くらいすぐ覚えられるでしょ)
ノエラは考えることをやめた。
とりあえず、今はアランと一緒にいることに酔いしれていた。
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