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婚約破棄の成立
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一方、アランは思い悩んでいた。
ノエラがそっと彼に優しく声をかける。
「殿下、こんなことになってしまったのは誰のせいですか?」
「それは……」
「せっかく殿下が開催したパーティを台無しにしてしまったのは誰なのでしょう?」
アランはぐっと拳を強く握りしめる。
(そうだ。すべてリエルのせいだ。あいつが王宮へ来てからろくなことがない)
アランは歯を食いしばり、リエルを睨みつけた。
(愛想がなく女らしさの欠片もない。妃教育を受けて来たとは思えないほど下品だ)
アランにはリエルが生意気な女に見える。
(俺の命令も聞かず、逆らうことばかり。あんな生意気な女が俺の妻になるだと?)
リエルがだんだん悪女に見えてきた。
(リエルは俺にふさわしい女ではない!)
アランはリエルを睨んだまま、胸中で叫ぶ。
*
(……って思っているのでしょうね、きっと。顔に出てるわ)
とリエルはアランの胸中を見破った。
おそらくこれ以上アランは怒りを抑えることはできないだろう。
リエルはじっと、そのときを待った。
「リエル、お前とは婚約を破棄する」
アランはパーティ会場全体に聞こえるように、声高に宣言した。
それを聞いたノエラはとなりで歓喜の表情を浮かべる。
アランは続けた。
「裏切り者のカーレン令嬢を我が国から追放する!」
その瞬間「おおおっ!」と会場内からアランを鼓舞する歓声が上がった。
「出ていけーっ! 出ていけーっ! 出ていけーっ!」
誰かの声に続いて一斉にリエルを追放する声が上がる。
あまりの非難の大きさにリエルは少々萎縮した。
すると、グレンがリエルの肩を抱いて、守るようにしながら、ふたりは会場を出ていった。
周囲から好奇の目にさらされながらパーティ会場を出ると、リエルの両親が追いかけてきた。
「お前は何てことをしてくれたんだ。カーレン家は終わりだ。もう王宮への出入りもできないだろう」
リエルの父は怒りの形相で詰め寄った。
「本当に憎らしい子だわ。息子に何の怨みがあると言うの?」
リエルは複雑な表情で継母を見つめる。
継母にとって何の罪もない跡継ぎの息子がリエルのせいで肩身の狭い思いをすることに腹を立てているのだろう。
リエルは何と答えていいかわからなかった。
するとグレンが笑顔で、リエルの両親に向かってとんでもないことを言い放った。
「ああ、そうだ。結婚式には招待しますよ」
リエルと両親は驚いて呆気にとられた。
にこにこ笑顔を振りまくグレンに、リエルの両親が激怒した。
「ふざけないでいただきたい!」
「噂どおりの最低な人だわ!」
グレンはリエルを連れてそそくさと立ち去る。
その際、彼はぼそりと言った。
「俺なりの気遣いのつもりだったんだけどなあ」
「どこが? 火に油を注いだわよ」
リエルは横目でグレンを睨んだ。
ノエラがそっと彼に優しく声をかける。
「殿下、こんなことになってしまったのは誰のせいですか?」
「それは……」
「せっかく殿下が開催したパーティを台無しにしてしまったのは誰なのでしょう?」
アランはぐっと拳を強く握りしめる。
(そうだ。すべてリエルのせいだ。あいつが王宮へ来てからろくなことがない)
アランは歯を食いしばり、リエルを睨みつけた。
(愛想がなく女らしさの欠片もない。妃教育を受けて来たとは思えないほど下品だ)
アランにはリエルが生意気な女に見える。
(俺の命令も聞かず、逆らうことばかり。あんな生意気な女が俺の妻になるだと?)
リエルがだんだん悪女に見えてきた。
(リエルは俺にふさわしい女ではない!)
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(……って思っているのでしょうね、きっと。顔に出てるわ)
とリエルはアランの胸中を見破った。
おそらくこれ以上アランは怒りを抑えることはできないだろう。
リエルはじっと、そのときを待った。
「リエル、お前とは婚約を破棄する」
アランはパーティ会場全体に聞こえるように、声高に宣言した。
それを聞いたノエラはとなりで歓喜の表情を浮かべる。
アランは続けた。
「裏切り者のカーレン令嬢を我が国から追放する!」
その瞬間「おおおっ!」と会場内からアランを鼓舞する歓声が上がった。
「出ていけーっ! 出ていけーっ! 出ていけーっ!」
誰かの声に続いて一斉にリエルを追放する声が上がる。
あまりの非難の大きさにリエルは少々萎縮した。
すると、グレンがリエルの肩を抱いて、守るようにしながら、ふたりは会場を出ていった。
周囲から好奇の目にさらされながらパーティ会場を出ると、リエルの両親が追いかけてきた。
「お前は何てことをしてくれたんだ。カーレン家は終わりだ。もう王宮への出入りもできないだろう」
リエルの父は怒りの形相で詰め寄った。
「本当に憎らしい子だわ。息子に何の怨みがあると言うの?」
リエルは複雑な表情で継母を見つめる。
継母にとって何の罪もない跡継ぎの息子がリエルのせいで肩身の狭い思いをすることに腹を立てているのだろう。
リエルは何と答えていいかわからなかった。
するとグレンが笑顔で、リエルの両親に向かってとんでもないことを言い放った。
「ああ、そうだ。結婚式には招待しますよ」
リエルと両親は驚いて呆気にとられた。
にこにこ笑顔を振りまくグレンに、リエルの両親が激怒した。
「ふざけないでいただきたい!」
「噂どおりの最低な人だわ!」
グレンはリエルを連れてそそくさと立ち去る。
その際、彼はぼそりと言った。
「俺なりの気遣いのつもりだったんだけどなあ」
「どこが? 火に油を注いだわよ」
リエルは横目でグレンを睨んだ。
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