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本当に滑稽な人たちね
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この状況を見たノエラは、チャンスとばかりにアランのとなりでわざとらしく声を上げた。
「まあ、リエル。ひどいわ! 将来はこの国の王妃となるべき女がよその国の殿方と不貞を働くなんて!」
(ノエラ、余計なことを!)
アランはとなりを睨んで舌打ちする。
一方のリエルは笑みを浮かべている。
(いいわ。もっと言ってやりなさい、ノエラ。あなたが私を非難すればするほど、私にとって有利に働くの)
会場内はノエラの言葉によってますますリエルの非難が高まっていく。
「なんとおぞましい女だ!」
「本当に、王太子妃にふさわしいとは思えないわ」
「噂通りの悪女だったな!」
「殿下がお気の毒でならないわ」
「これは破談で決まりだろう」
アランは周囲をきょろきょろしながら狼狽える。
(違う! 違う違う違う! こんなはずではない!)
計画が総崩れとなったアランはパニックになっていた。
アランは全員の前でリエルを辱めてから寛大な心で彼女を受け入れ、周囲から同情と称賛を受けるはずだったのに、まさかリエルから不貞を肯定されるとは思わなかったのだ。
(くそっ! 計画が……)
しかしアランはすぐに思いついて、にやりと笑みを浮かべた。
そしてリエルに言い放つ。
「君は今、皆の前で醜態をさらしていることを恥じないのか? 君だけじゃない。君の家門にも傷をつけることになるぞ」
アランは余裕の笑みを浮かべながらリエルを見下ろした。
リエルはこれまで妃教育を受け、侯爵家の令嬢としての誇りを持っている。
貴族の令嬢であれば誰でも家門を背負って嫁入りすることになる。
アランはそれにつけ込んだのだ。
「君のせいでカーレン侯爵家は王宮での立場を失う。君の父である侯爵がどうなってもいいのか?」
リエルはアランをまっすぐ見据えて冷静に言い放つ。
「ええ、結構ですわ」
「はっ……?」
ふたたび意外すぎる返答を受け、アランは開いた口が塞がらなかった。
そんなとき、リエルの父である侯爵が他の貴族たちのあいだをかいくぐって躍り出た。
そしてリエルに向かって怒号を飛ばす。
「リエル、お前は何をやっているんだ? ふざけるんじゃない! カーレン家の名を汚す気か!」
父のとなりには継母がいる。
ふたりとも怒りの形相でリエルを睨んでいる。
「本当にろくでもない娘だわ! お前の母そっくりで品性の欠片もないわ!」
いつものように母を侮辱されて怒りにわいたリエルはふたりに言い放った。
「あなたたちの奴隷になるなんてまっぴらよ!」
リエルの両親は真っ赤な顔で怒り狂う。
「謝れ、リエル。殿下に頭を下げろ! ここにいる全員の前で謝罪しろ!」
「そうしないとあなたは二度と家に帰れないわよ。あなたにはどこにも行く場所がないのだから困るでしょう? さあ、早く謝罪しなさい!」
アランはにやりと笑みを浮かべた。
リエルの両親がうまく丸め込んでくれれば、リエルが謝ったときに寛大な心を持つ夫として全員の前で許してやろうと考えたのだ。
(さあ、リエル。さっさと謝罪するんだ。でなければ君はこの国で生きていくことはできない)
アランは今度こそうまくいくと思ったのだが。
リエルの返答とは別のところで声が響いた。
「必要ないよ。だって、彼女はこの国を出ていくから」
突然のグレンの登場に周囲がざわついた。
「まあ、リエル。ひどいわ! 将来はこの国の王妃となるべき女がよその国の殿方と不貞を働くなんて!」
(ノエラ、余計なことを!)
アランはとなりを睨んで舌打ちする。
一方のリエルは笑みを浮かべている。
(いいわ。もっと言ってやりなさい、ノエラ。あなたが私を非難すればするほど、私にとって有利に働くの)
会場内はノエラの言葉によってますますリエルの非難が高まっていく。
「なんとおぞましい女だ!」
「本当に、王太子妃にふさわしいとは思えないわ」
「噂通りの悪女だったな!」
「殿下がお気の毒でならないわ」
「これは破談で決まりだろう」
アランは周囲をきょろきょろしながら狼狽える。
(違う! 違う違う違う! こんなはずではない!)
計画が総崩れとなったアランはパニックになっていた。
アランは全員の前でリエルを辱めてから寛大な心で彼女を受け入れ、周囲から同情と称賛を受けるはずだったのに、まさかリエルから不貞を肯定されるとは思わなかったのだ。
(くそっ! 計画が……)
しかしアランはすぐに思いついて、にやりと笑みを浮かべた。
そしてリエルに言い放つ。
「君は今、皆の前で醜態をさらしていることを恥じないのか? 君だけじゃない。君の家門にも傷をつけることになるぞ」
アランは余裕の笑みを浮かべながらリエルを見下ろした。
リエルはこれまで妃教育を受け、侯爵家の令嬢としての誇りを持っている。
貴族の令嬢であれば誰でも家門を背負って嫁入りすることになる。
アランはそれにつけ込んだのだ。
「君のせいでカーレン侯爵家は王宮での立場を失う。君の父である侯爵がどうなってもいいのか?」
リエルはアランをまっすぐ見据えて冷静に言い放つ。
「ええ、結構ですわ」
「はっ……?」
ふたたび意外すぎる返答を受け、アランは開いた口が塞がらなかった。
そんなとき、リエルの父である侯爵が他の貴族たちのあいだをかいくぐって躍り出た。
そしてリエルに向かって怒号を飛ばす。
「リエル、お前は何をやっているんだ? ふざけるんじゃない! カーレン家の名を汚す気か!」
父のとなりには継母がいる。
ふたりとも怒りの形相でリエルを睨んでいる。
「本当にろくでもない娘だわ! お前の母そっくりで品性の欠片もないわ!」
いつものように母を侮辱されて怒りにわいたリエルはふたりに言い放った。
「あなたたちの奴隷になるなんてまっぴらよ!」
リエルの両親は真っ赤な顔で怒り狂う。
「謝れ、リエル。殿下に頭を下げろ! ここにいる全員の前で謝罪しろ!」
「そうしないとあなたは二度と家に帰れないわよ。あなたにはどこにも行く場所がないのだから困るでしょう? さあ、早く謝罪しなさい!」
アランはにやりと笑みを浮かべた。
リエルの両親がうまく丸め込んでくれれば、リエルが謝ったときに寛大な心を持つ夫として全員の前で許してやろうと考えたのだ。
(さあ、リエル。さっさと謝罪するんだ。でなければ君はこの国で生きていくことはできない)
アランは今度こそうまくいくと思ったのだが。
リエルの返答とは別のところで声が響いた。
「必要ないよ。だって、彼女はこの国を出ていくから」
突然のグレンの登場に周囲がざわついた。
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