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恥をかくのはどちらかしら?
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アランはリエルを睨んだあと、となりのノエラに優しく声をかけた。
「少しみんなに挨拶をするから、君は待っていてくれるか?」
「殿下……」
「大丈夫だ。あとで君のこともきちんと全員の前で披露する。心配ない。すでに君の評判は上々だ」
「ええ、お待ちしておりますわ」
お互いに笑顔で見つめ合うふたりの様子を、リエルは真顔で見つめた。
やがてアランはリエルに向き直り、ふたたび険しい顔になる。
アランはリエルに手を差し出し、命令した。
「俺の手を取れ」
「お断りします」
「何!?」
突然のリエルの反抗的な態度に、アランは怪訝な表情をした。
リエルは冷静な表情をアランに向ける。
「私は殿下にお話したいことがございます」
周囲はざわつき、アランは動揺した。
「い、今はそんなことはどうでもいい。ただでさえ、君の遅刻でパーティの雰囲気が悪くなっている。まずは全員に挨拶をすべきだろう?」
「その必要はございませんわ。だって私は殿下にふさわしい令嬢ではありませんから」
「……はっ!?」
アランは呆気にとられた。
アランのとなりでノエラも驚いた顔をしている。
リエルの態度に周囲が不信感を抱き始めた。
「なんて生意気な女なのかしら」
「噂通りだったわね」
アランはわけがわからず混乱する。
しかし、すぐににやりと笑った。
「リエル、全員が君のことを不審に思っているぞ。俺が君をみんなの前で許してやるから感謝して俺の手を取れ」
アランはそう言ってふたたび手を差し出す。
しかしリエルは微動だにせず、堂々とアランに言い放つ。
「恐れながら申し上げます。私には他に手を取りたい方がおりますので」
アランは手を差し出したまま驚愕の表情で固まった。
ノエラは呆気にとられている。
周囲の目に耐えられなくなったアランは慌て出した。
「な、何を言っているんだ? 君は、頭がおかしくなったのか?」
「私は正気ですわ」
「君は俺の婚約者だぞ」
となりで見ていたノエラはにんまり笑った。
これはチャンスとばかりにノエラは声を上げる。
「リエル、もしかして噂は本当だったの? あなたが帝国の皇太子と深い仲であるという噂よ」
リエルは静かに笑みを浮かべた。
(ノエラ、あなたのその言葉を待っていたわ)
リエルは呼吸を整え、堂々と言い放った。
「その通りです。私はグレイアム皇太子殿下と恋仲にあります」
周囲がどっとざわめいた。
ますますリエルに対する非難が高まっていく。
ノエラはひっそりほくそ笑み、アランは狼狽えた。
「なんてことだ。婚約披露の場で王太子殿下の婚約者が不貞を認めたぞ」
「こんなこと、前代未聞だわ」
周囲の声に焦ったアランはリエルを睨みつけながら苛立ちをぶつけた。
「リエル、ふざけるのも大概にしろ。公式の場だぞ」
「ですが、私はもう他の殿方と関係を持った身です。殿下に嫁入りできる清い身体ではございません」
「な、なっ……何ぃっ!?」
アランは怒りのあまり表情を歪ませた。
「なんということだ! こんな女が王太子妃などあり得ない!」
「そうだ。破談だ。殿下、婚約破棄を!」
周囲が一斉にリエルの婚約破棄を叫び出す。
アランは慌ててリエルを許す寛大な男を演じようとした。
「リエル、どれほど君の悪い噂が流れようと、俺は君を信じて……」
「噂ではなく事実です」
「なっ……!」
あまりに堂々としたリエルの姿にアランは驚愕する。
(なぜだ? リエルはこの城に味方などいないはずだ)
アランは焦りと怒りが表情に現れている
(どうして俺に泣きついてこない? それとも、本当に皇太子と関係があるというのか?)
一方のリエルはアランを見据えて平静を保っていた。
(私が泣きついてくるとでも思っていたのでしょうね。でも、もうあなたに翻弄されて殺されるなんてごめんよ!)
「少しみんなに挨拶をするから、君は待っていてくれるか?」
「殿下……」
「大丈夫だ。あとで君のこともきちんと全員の前で披露する。心配ない。すでに君の評判は上々だ」
「ええ、お待ちしておりますわ」
お互いに笑顔で見つめ合うふたりの様子を、リエルは真顔で見つめた。
やがてアランはリエルに向き直り、ふたたび険しい顔になる。
アランはリエルに手を差し出し、命令した。
「俺の手を取れ」
「お断りします」
「何!?」
突然のリエルの反抗的な態度に、アランは怪訝な表情をした。
リエルは冷静な表情をアランに向ける。
「私は殿下にお話したいことがございます」
周囲はざわつき、アランは動揺した。
「い、今はそんなことはどうでもいい。ただでさえ、君の遅刻でパーティの雰囲気が悪くなっている。まずは全員に挨拶をすべきだろう?」
「その必要はございませんわ。だって私は殿下にふさわしい令嬢ではありませんから」
「……はっ!?」
アランは呆気にとられた。
アランのとなりでノエラも驚いた顔をしている。
リエルの態度に周囲が不信感を抱き始めた。
「なんて生意気な女なのかしら」
「噂通りだったわね」
アランはわけがわからず混乱する。
しかし、すぐににやりと笑った。
「リエル、全員が君のことを不審に思っているぞ。俺が君をみんなの前で許してやるから感謝して俺の手を取れ」
アランはそう言ってふたたび手を差し出す。
しかしリエルは微動だにせず、堂々とアランに言い放つ。
「恐れながら申し上げます。私には他に手を取りたい方がおりますので」
アランは手を差し出したまま驚愕の表情で固まった。
ノエラは呆気にとられている。
周囲の目に耐えられなくなったアランは慌て出した。
「な、何を言っているんだ? 君は、頭がおかしくなったのか?」
「私は正気ですわ」
「君は俺の婚約者だぞ」
となりで見ていたノエラはにんまり笑った。
これはチャンスとばかりにノエラは声を上げる。
「リエル、もしかして噂は本当だったの? あなたが帝国の皇太子と深い仲であるという噂よ」
リエルは静かに笑みを浮かべた。
(ノエラ、あなたのその言葉を待っていたわ)
リエルは呼吸を整え、堂々と言い放った。
「その通りです。私はグレイアム皇太子殿下と恋仲にあります」
周囲がどっとざわめいた。
ますますリエルに対する非難が高まっていく。
ノエラはひっそりほくそ笑み、アランは狼狽えた。
「なんてことだ。婚約披露の場で王太子殿下の婚約者が不貞を認めたぞ」
「こんなこと、前代未聞だわ」
周囲の声に焦ったアランはリエルを睨みつけながら苛立ちをぶつけた。
「リエル、ふざけるのも大概にしろ。公式の場だぞ」
「ですが、私はもう他の殿方と関係を持った身です。殿下に嫁入りできる清い身体ではございません」
「な、なっ……何ぃっ!?」
アランは怒りのあまり表情を歪ませた。
「なんということだ! こんな女が王太子妃などあり得ない!」
「そうだ。破談だ。殿下、婚約破棄を!」
周囲が一斉にリエルの婚約破棄を叫び出す。
アランは慌ててリエルを許す寛大な男を演じようとした。
「リエル、どれほど君の悪い噂が流れようと、俺は君を信じて……」
「噂ではなく事実です」
「なっ……!」
あまりに堂々としたリエルの姿にアランは驚愕する。
(なぜだ? リエルはこの城に味方などいないはずだ)
アランは焦りと怒りが表情に現れている
(どうして俺に泣きついてこない? それとも、本当に皇太子と関係があるというのか?)
一方のリエルはアランを見据えて平静を保っていた。
(私が泣きついてくるとでも思っていたのでしょうね。でも、もうあなたに翻弄されて殺されるなんてごめんよ!)
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