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あなたを信じるわ
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ふたりはソファに並んで座り、パーティ当日のことを話し合った。
リエルは今後どうしたいかも、きちんと彼に伝えた。
するとグレンはすべて了承し、あらためてリエルに気持ちを訊ねた。
「確認しておきたいことがある。君は本当に未練はないね?」
「……ないわ」
「家族や友人とも二度と会えないかもしれないよ?」
自分に冷たい父と継母、口も利かない弟。そしてノエラ。
家族や友人などと言われても、リエルに好意的な人などいない。
「私の家族は亡くなったお母さまだけよ」
リエルは力強くそう言い切った。
「でも、あなたに迷惑がかかってしまうわ。妙な噂が広がってしまう」
「そもそもいい噂はないから、これ以上ひどくはならないね」
グレンは軽い口調でそんなことを言う。
そのことについてリエルは知りたいが、訊きづらい。
しかしそれを察してか、グレンが補足した。
「君も知っているだろ? 俺が何人もの愛人を持ち、飽きたら捨てる冷酷非道な男だという噂」
リエルは呆気にとられた。
「まさかあなた、それ自分で流しているの?」
「こうしておくと周囲は油断するだろう。東の島国にこんな言葉がある。能ある鷹は爪を隠すってね」
リエルは驚いた顔で感嘆のため息を洩らした。
しかしすぐに半眼で睨みつける。
「自分で能力があるなんて言って恥ずかしいわよ」
「君の前でしか言わないよ」
グレンは笑顔でそう言うと、おもむろに立ち上がった。
「さて。夜が明ける前に戻るか」
「そうね。衛兵にバレたら瞬く間に噂が真実になるわ」
「本当はこのまま君と一緒に寝てもかまわないんだけど」
グレンはわざわざリエルの手を取り、笑みを浮かべて言った。
うっかり頬を赤らめてしまったリエルは、グレンの手をさっと払いのけた。
「あなたに何人も愛人がいる話、実は本当かもしれないって思う自分もいるわ」
半眼で疑うようにグレンを見やる。
「そんなに軽い男に見える?」
「見えるわ」
あまりにはっきりとそう言ったせいか、グレンは複雑な表情で苦笑した。
彼は一度リエルに背を向けて、ふたたび振り返る。
「俺は遊びで女と付き合ったことはないよ」
「……そう」
リエルはそっけない返事をした。
グレンがバルコニーに出て行くのを確認すると、リエルは少し遅れてその背中を追った。
しかし、バルコニーにはすでに彼の姿はなかった。
リエルが手すりから身を乗り出して周囲をきょろきょろすると、左側の斜め下の階のバルコニーにグレンの姿があった。
彼はリエルに向かって手を振っている。
驚きを通り越して、もう笑ってしまった。
「本当、変な人ね」
リエルは肩をすくめながらそんなことを言ったものの、その胸中はとても穏やかだった。
リエルは今後どうしたいかも、きちんと彼に伝えた。
するとグレンはすべて了承し、あらためてリエルに気持ちを訊ねた。
「確認しておきたいことがある。君は本当に未練はないね?」
「……ないわ」
「家族や友人とも二度と会えないかもしれないよ?」
自分に冷たい父と継母、口も利かない弟。そしてノエラ。
家族や友人などと言われても、リエルに好意的な人などいない。
「私の家族は亡くなったお母さまだけよ」
リエルは力強くそう言い切った。
「でも、あなたに迷惑がかかってしまうわ。妙な噂が広がってしまう」
「そもそもいい噂はないから、これ以上ひどくはならないね」
グレンは軽い口調でそんなことを言う。
そのことについてリエルは知りたいが、訊きづらい。
しかしそれを察してか、グレンが補足した。
「君も知っているだろ? 俺が何人もの愛人を持ち、飽きたら捨てる冷酷非道な男だという噂」
リエルは呆気にとられた。
「まさかあなた、それ自分で流しているの?」
「こうしておくと周囲は油断するだろう。東の島国にこんな言葉がある。能ある鷹は爪を隠すってね」
リエルは驚いた顔で感嘆のため息を洩らした。
しかしすぐに半眼で睨みつける。
「自分で能力があるなんて言って恥ずかしいわよ」
「君の前でしか言わないよ」
グレンは笑顔でそう言うと、おもむろに立ち上がった。
「さて。夜が明ける前に戻るか」
「そうね。衛兵にバレたら瞬く間に噂が真実になるわ」
「本当はこのまま君と一緒に寝てもかまわないんだけど」
グレンはわざわざリエルの手を取り、笑みを浮かべて言った。
うっかり頬を赤らめてしまったリエルは、グレンの手をさっと払いのけた。
「あなたに何人も愛人がいる話、実は本当かもしれないって思う自分もいるわ」
半眼で疑うようにグレンを見やる。
「そんなに軽い男に見える?」
「見えるわ」
あまりにはっきりとそう言ったせいか、グレンは複雑な表情で苦笑した。
彼は一度リエルに背を向けて、ふたたび振り返る。
「俺は遊びで女と付き合ったことはないよ」
「……そう」
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グレンがバルコニーに出て行くのを確認すると、リエルは少し遅れてその背中を追った。
しかし、バルコニーにはすでに彼の姿はなかった。
リエルが手すりから身を乗り出して周囲をきょろきょろすると、左側の斜め下の階のバルコニーにグレンの姿があった。
彼はリエルに向かって手を振っている。
驚きを通り越して、もう笑ってしまった。
「本当、変な人ね」
リエルは肩をすくめながらそんなことを言ったものの、その胸中はとても穏やかだった。
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