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焦る王太子②
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リエルは少しの沈黙のあと、にっこり笑って返答した。
「大丈夫ですわ。私は愛人を持つことはおろか、堂々と他の者の前で愛人の存在をひけらかしたりいたしませんから」
「なっ……君は、俺のことを侮辱するのか!」
リエルはわざとらしく驚いた顔をしてみせる。
「あら、私は殿下のことだなんてひとことも申しておりませんが」
アランはカッと顔を赤くして慌て出した。
「王となる者は王妃の他に側妃を何人も置く。昔から王族はそうして血筋を繋いできたのだ。しかも、ノエラは君の親友だろう? 妃になれば君も安心できるのではないか?」
リエルはナイフとフォークを置き、アランにまっすぐ目線を向けて言い放つ。
「殿下、わざわざ言いわけをされなくても結構です。私は殿下が何人妻を娶ろうと、まったく気にしておりませんので」
「気に、していないだと?」
「はい。興味がございません」
「興味がない? 俺のことに興味がないと言っているのか?」
アランは苛立ちを顔に出し、拳でテーブルを叩きつける。
ガチャンと食器の跳ねる音が響いた。
リエルは黙ってアランを見据える。
(屈辱でしょうね。これまで女の視線はすべて自分に向いていると思い込んできたのでしょうから)
そんなリエルも回帰前はどんなにひどいことを言われようとアランに執心だった。
(ほんとバカね)
リエルは胸中で呟く。
そしてアランをまっすぐ見据えて堂々と言い放った。
「ご気分を害されたなら謝罪いたします。しかし、私は王太子妃になるのです。殿下とともに政務に関わることになります。私生活の小さなことを気にしている余裕などございません。そうでしょう? 国のことを一番に考えなければならない。殿下がそうおっしゃったではありませんか」
呆気にとられるアランに、リエルは笑みを向ける。
「民のために、命ある限り、殿下は何でもすると」
わざわざ言葉を強調しながら告げてやった。
ついこのあいだ、アランが臣下や使用人たちの前で言い放った言葉だ。
アランは返す言葉が見つからないのか歯を食いしばっている。
リエルは笑顔のまま、アランにやんわりトドメを刺す。
「私は殿下の力強いご意志に感動いたしました。ですから私も小さなことは気にせず、国のために精一杯働くつもりですわ」
アランはぐうの音も出ないようだ。
「もういい。気分をそがれた」
そう言って立ち上がり、さっさとダイニングルームを出ていった。
(人形のように冷たい女だと言ったのはあなたなのにね)
残されたリエルは目の前のデザートのケーキを見てにっこり笑う。
(私はしっかり美味しくいただくわ)
リエルはにこにこしながらデザートをすべて平らげた。
「大丈夫ですわ。私は愛人を持つことはおろか、堂々と他の者の前で愛人の存在をひけらかしたりいたしませんから」
「なっ……君は、俺のことを侮辱するのか!」
リエルはわざとらしく驚いた顔をしてみせる。
「あら、私は殿下のことだなんてひとことも申しておりませんが」
アランはカッと顔を赤くして慌て出した。
「王となる者は王妃の他に側妃を何人も置く。昔から王族はそうして血筋を繋いできたのだ。しかも、ノエラは君の親友だろう? 妃になれば君も安心できるのではないか?」
リエルはナイフとフォークを置き、アランにまっすぐ目線を向けて言い放つ。
「殿下、わざわざ言いわけをされなくても結構です。私は殿下が何人妻を娶ろうと、まったく気にしておりませんので」
「気に、していないだと?」
「はい。興味がございません」
「興味がない? 俺のことに興味がないと言っているのか?」
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ガチャンと食器の跳ねる音が響いた。
リエルは黙ってアランを見据える。
(屈辱でしょうね。これまで女の視線はすべて自分に向いていると思い込んできたのでしょうから)
そんなリエルも回帰前はどんなにひどいことを言われようとアランに執心だった。
(ほんとバカね)
リエルは胸中で呟く。
そしてアランをまっすぐ見据えて堂々と言い放った。
「ご気分を害されたなら謝罪いたします。しかし、私は王太子妃になるのです。殿下とともに政務に関わることになります。私生活の小さなことを気にしている余裕などございません。そうでしょう? 国のことを一番に考えなければならない。殿下がそうおっしゃったではありませんか」
呆気にとられるアランに、リエルは笑みを向ける。
「民のために、命ある限り、殿下は何でもすると」
わざわざ言葉を強調しながら告げてやった。
ついこのあいだ、アランが臣下や使用人たちの前で言い放った言葉だ。
アランは返す言葉が見つからないのか歯を食いしばっている。
リエルは笑顔のまま、アランにやんわりトドメを刺す。
「私は殿下の力強いご意志に感動いたしました。ですから私も小さなことは気にせず、国のために精一杯働くつもりですわ」
アランはぐうの音も出ないようだ。
「もういい。気分をそがれた」
そう言って立ち上がり、さっさとダイニングルームを出ていった。
(人形のように冷たい女だと言ったのはあなたなのにね)
残されたリエルは目の前のデザートのケーキを見てにっこり笑う。
(私はしっかり美味しくいただくわ)
リエルはにこにこしながらデザートをすべて平らげた。
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