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弟王子との再会

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 そこはリエルに与えられた書庫だった。
 背後には壁に沿って本棚が並び、執務机には大量の書類の山だ。
 リエルはそれらすべてに目を通し、淡々と作業をこなしていた。
 しばらくするとエマがお茶を淹れて持ってきた。

「こんなに大量の仕事を押しつけられるなんて」
「平気よ。今日の分はすでに終わっているから」
「ええっ? この量を半日でですか!?」

 エマは積み上がった書類の山を見て驚愕した。

(初めてのときはわからないことが多くて時間がかかったけれど、2回目ともなれば楽だわ)

 リエル背伸びをすると、紅茶をひと口飲んだ。

「エマ、休憩がてら庭園を散歩したいわ」
「はい。では一度お部屋に戻って着替えられますか?」
「いいわ。このまま行きましょう。獲物さかなは泳がせておかなくちゃ」
「……はい?」

 リエルはふっと笑みを浮かべた。


 その頃リエルの部屋では使用人がひとり雑巾とバケツを持ってこっそり入室した。
 彼女はキョロキョロと辺りを見まわし、誰もいないことを確認。
 雑巾とバケツを床に放置して、鏡台ドレッサーの引き出しにある宝石箱を取り出した。
 使用人はにやりと笑みを浮かべて、箱から指輪とネックレスを取り出し、こっそりと自分のポケットに入れた。
 そして、他にも金目の物がないか探してまわった。


 *


 一方、リエルは王宮庭園でエマと散歩をしていた。
 青空の下、美しい花が咲き、風も心地いい。
 しかし上機嫌のエマとは対照的にリエルは神妙な面持ちをしていた。
 しばらく歩いたあと、リエルは突如立ち止まった。

「エマ、部屋へ戻るわ」
「え? 今来たばかりですよ。もう少しゆっくりなさっても……」
「少し気分が優れないの」
「大変! すぐに帰りましょう!」

 エマはくるりと向きを変え、リエルの様子をうかがいながら来た道を戻る。
 リエルは少し速足になった。

(一番最初に盗難騒ぎがあったのは今日だわ。だとしたら、そろそろ犯人は証拠を持ったまま私の部屋へいるはず)


 少々急ぎ足で部屋へ戻っていたところ、突然背後から呼び止められてしまった。

「これは、義姉上あねうえではありませんか」

 その声にどきりとして、リエルは立ち止まった。
 振り向くとそこにいたのは、アランの弟であるユリウスだ。

 リエルに苦い記憶がよみがえる。
 それは血まみれで倒れるユリウスの姿だ。

 回帰前、処刑される直前のことだった。ともにお茶を飲んでいたユリウスがいきなり吐血して倒れたのだ。
 ユリウスは瞬く間に顔面蒼白になり、アランとノエラが駆けつけてきたときには絶命していた。

 何が起こったのかリエルにはわからなかった。
 ただ、彼と同じ紅茶を飲んだリエルには何の症状もなかった。
 状況的にリエルが犯人とされてしまったのだ。

 笑顔のユリウスを見ていると、リエルは急激に回帰前の記憶がよみがえって眩暈がした。


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