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逆行後②
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リエルは鏡台の前に座り、自分の姿を見つめる。
くすんだ茶髪に碧い瞳。地味な顔立ちだが、それでも生きていることをあらためて実感する。
いつも通りの自分の顔だ。
そして、鏡越しに背後にいる使用人を見つめた。
まだ若い新人のようで少し緊張しているのか、おずおずとリエルの様子をうかがっている。
「あなた、名前は?」
「エマでございます」
声をかけるとエマは慌てて返答した。
リエルはなるべく優しく話をする。
「エマ、出かけるから支度を手伝ってちょうだい」
「かしこまりました」
エマは新人だが手慣れているのかリエルの髪を丁寧に梳き、化粧をしっかり施した。
そして、リエルは地味な色のドレスを着る。
せっかく戻ったのに、縁談を回避することができなかった。
それなら、何としてもアランに婚約破棄してもらうしかない。
同じことを繰り返して殺されるなどごめんだ。
(あと、ノエラの本性はしっかり暴いてやるわ)
リエルは固く決意した。
ディアナ王国は土地の多くが荒地で作物が育ちにくく、他国からの交易に頼っている。
貧富の差が激しく、王都は豊かだが貧民街が多く犯罪も多い。
まさに今、リエルが足を運んだ場所は、そういった治安の悪い地域だった。
ここを訪れたのには理由がある。
1年前の今頃、新聞で報じられていた酒屋の客が毒にやられた事件。
数人が死亡、十数人が意識不明という非常に痛ましい事件だった。
この店では麻薬を密輸しており、たまたまそこに遅効性の毒の粉末が紛れ込んでいて、店主が料理に使ってしまい、それを食べた客たちが次々苦しみながら倒れた。
その密輸集団は隣国アストレア帝国の人間だった。
(そのせいでアストレア帝国とちょっとした外交問題になったのよね)
リエルは試してみたかった。
その事件を回避することができれば、もしかしたら未来が変えられるかもしれない。
「エマ、あの店に行くわよ」
「え? リエルさま、お酒を飲まれるのですか?」
「興味本位よ」
リエルは古い酒屋へと足を向けた。
店内は古い内装でテーブルがところ狭しと並び、客たちがぎゅうぎゅうに詰め込まれている。
筋肉質の男たちが酒を煽り、痩せた男たちは隅でカードゲームをしている。
しかしリエルが店の中へ入ると、男たちの視線が集まった。
「リエルさま、このようなところに……」
怯えるエマと対照的にリエルは堂々としている。
すると、男のひとりがリエルに声をかけてきた。
「おい、嬢ちゃん。女やガキが来るところじゃねぇぞ」
びくっと怯えるエマと違い、リエルは冷静だ。
男の存在を完全に無視して、視線を別のところへ向ける。
(たしか、のちに捕まった犯人は痩せ型で眼鏡をかけていて右目の下に泣きぼくろがあったわね)
リエルは店の隅でカードゲームをしている集団の中にその人物を見つけた。
そちらへ向かおうとしたら、男にがしっと男に肩を掴まれた。
「おい、俺を無視するな!」
エマが「ひっ……!」と悲鳴を上げた。
しかし、リエルは冷静に男を見上げて睨み据える。
「断りもなく女に触るのは失礼よ」
「この……生意気な!」
男がリエルに向かって手を振り上げた。
エマは「きゃあっ!」と悲鳴を上げ、リエルは殴られる覚悟をしたが。
まったく別の何者かがそれを阻止した。
くすんだ茶髪に碧い瞳。地味な顔立ちだが、それでも生きていることをあらためて実感する。
いつも通りの自分の顔だ。
そして、鏡越しに背後にいる使用人を見つめた。
まだ若い新人のようで少し緊張しているのか、おずおずとリエルの様子をうかがっている。
「あなた、名前は?」
「エマでございます」
声をかけるとエマは慌てて返答した。
リエルはなるべく優しく話をする。
「エマ、出かけるから支度を手伝ってちょうだい」
「かしこまりました」
エマは新人だが手慣れているのかリエルの髪を丁寧に梳き、化粧をしっかり施した。
そして、リエルは地味な色のドレスを着る。
せっかく戻ったのに、縁談を回避することができなかった。
それなら、何としてもアランに婚約破棄してもらうしかない。
同じことを繰り返して殺されるなどごめんだ。
(あと、ノエラの本性はしっかり暴いてやるわ)
リエルは固く決意した。
ディアナ王国は土地の多くが荒地で作物が育ちにくく、他国からの交易に頼っている。
貧富の差が激しく、王都は豊かだが貧民街が多く犯罪も多い。
まさに今、リエルが足を運んだ場所は、そういった治安の悪い地域だった。
ここを訪れたのには理由がある。
1年前の今頃、新聞で報じられていた酒屋の客が毒にやられた事件。
数人が死亡、十数人が意識不明という非常に痛ましい事件だった。
この店では麻薬を密輸しており、たまたまそこに遅効性の毒の粉末が紛れ込んでいて、店主が料理に使ってしまい、それを食べた客たちが次々苦しみながら倒れた。
その密輸集団は隣国アストレア帝国の人間だった。
(そのせいでアストレア帝国とちょっとした外交問題になったのよね)
リエルは試してみたかった。
その事件を回避することができれば、もしかしたら未来が変えられるかもしれない。
「エマ、あの店に行くわよ」
「え? リエルさま、お酒を飲まれるのですか?」
「興味本位よ」
リエルは古い酒屋へと足を向けた。
店内は古い内装でテーブルがところ狭しと並び、客たちがぎゅうぎゅうに詰め込まれている。
筋肉質の男たちが酒を煽り、痩せた男たちは隅でカードゲームをしている。
しかしリエルが店の中へ入ると、男たちの視線が集まった。
「リエルさま、このようなところに……」
怯えるエマと対照的にリエルは堂々としている。
すると、男のひとりがリエルに声をかけてきた。
「おい、嬢ちゃん。女やガキが来るところじゃねぇぞ」
びくっと怯えるエマと違い、リエルは冷静だ。
男の存在を完全に無視して、視線を別のところへ向ける。
(たしか、のちに捕まった犯人は痩せ型で眼鏡をかけていて右目の下に泣きぼくろがあったわね)
リエルは店の隅でカードゲームをしている集団の中にその人物を見つけた。
そちらへ向かおうとしたら、男にがしっと男に肩を掴まれた。
「おい、俺を無視するな!」
エマが「ひっ……!」と悲鳴を上げた。
しかし、リエルは冷静に男を見上げて睨み据える。
「断りもなく女に触るのは失礼よ」
「この……生意気な!」
男がリエルに向かって手を振り上げた。
エマは「きゃあっ!」と悲鳴を上げ、リエルは殴られる覚悟をしたが。
まったく別の何者かがそれを阻止した。
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