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夫と親友の裏切り③
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貴族学院時代にともに学んだノエラ。
いつも一緒にいた彼女はふんわりと優しい笑顔にあふれていた。
気さくで男子たちに大変人気で、勉強だけが取り柄で人と接するのが苦手なリエルはうらやましく思ったものだ。
そして、尊敬もしていた。
ノエラはリエルの悩みをよく聞いてくれた。
リエルが王宮へ嫁いだあとは、伯爵の父とともに王宮へよく会いに来てくれた。
最近は窮屈な王宮暮らしに悩むリエルのために、ずっと王宮に留まってくれていたほどだ。
今まで見ていたノエラは誰もが清楚で可憐だと思うほど美しかった。
可愛らしい天使のような顔の彼女。
それが、今は悪魔のような顔をしている。
(まさか……まさか……まさか!)
優しいノエラの記憶がいくつかよみがえる。
(あの優しさはすべて演技だったの!?)
リエルはショックを受けると同時に視界が途切れた。
薄れゆく意識の中でアランとノエラの声だけが聞こえてくる。
「こんなことになって殿下が気の毒ですわ」
ノエラの甘ったるい声がやけに耳を刺激する。
「これからはあたくしが支えになりますから」
それに対するアランの答えも、リエルにとっては衝撃だった。
「やはり君は心の美しい人だ」
「そんな……あたくしは当たり前のことをしたまで。今までリエルを支えてきたつもりでしたけど、彼女の悪事を見抜けなかったあたくしの責任でもありますわ」
「ノエラ、君こそが王太子妃にふさわしい」
お互いに見つめ合うアランとノエラ。
これまでリエルは想像もしていなかった。
自分の夫と親友が、深い仲であったことを。
(これは何の茶番? 私が一体何をしたというの?)
リエルはふたりに何も発言することもできず、そのまま意識が薄れていく。
目の前の光景が歪んでいき、やがて真っ白の世界が広がった。
何も、なかった。
先ほどまでの痛みも感じなかった。
不快な思いも薄れていく。
これが死というものなのかと、リエルは不思議な感覚に囚われていた。
「リエル、リエル……」
遠くでよく知った女性の声がした。
なつかしくて、その声を聞くだけで涙が出そうになる。
「お母さま?」
リエルが10歳のときには母は病気で亡くなった。
母との思い出は数少ない。
母は絵本を読んでくれたり、一緒に庭を散歩したり、眠れないときは一緒に寝てくれた。
わずかな思い出。だからこそ、あまりに貴重でリエルの記憶には深く刻まれてる。
母が亡くなった日、リエルは彼女のベッドで大泣きした。
(迎えに来てくれたのね)
母と一緒なら今までの苦しみも悲しみも、すべて忘れられる。
リエルは微笑んで母に手を伸ばした。
しかし、母はリエルの手を拒絶した。
「戻りなさい、リエル。あなたの人生はまだ終わっていないわ」
「え?」
「後悔のないように」
それだけ言って、母はふたたびリエルの目の前から姿を消した。
「お母さまああぁっ!」
手を伸ばして叫んでみたが、目の前にはただ真っ白な空間があるだけだった。
ふたたび意識を失って目が覚めたとき、リエルはベッドの中にいた。
ゆっくり視線を周囲に向けてみるとよく知った光景が広がっていた。
しかし、それが不自然に感じられる。
なぜなら、ここが結婚前の自分の部屋だったからだ。
リエルはハッとして身体を起こし、自分の胸に手を当てた。
「……私、刺されたはずなのに」
ずきりと胸が痛む。
記憶を辿るとあまりに鮮明に思い出す。
自分の胸に剣を突きつけたのは愛していた夫のアランだった。
窓へ目をやるとカーテン越しに光が差していた。
「私……生きてるわ」
いつも一緒にいた彼女はふんわりと優しい笑顔にあふれていた。
気さくで男子たちに大変人気で、勉強だけが取り柄で人と接するのが苦手なリエルはうらやましく思ったものだ。
そして、尊敬もしていた。
ノエラはリエルの悩みをよく聞いてくれた。
リエルが王宮へ嫁いだあとは、伯爵の父とともに王宮へよく会いに来てくれた。
最近は窮屈な王宮暮らしに悩むリエルのために、ずっと王宮に留まってくれていたほどだ。
今まで見ていたノエラは誰もが清楚で可憐だと思うほど美しかった。
可愛らしい天使のような顔の彼女。
それが、今は悪魔のような顔をしている。
(まさか……まさか……まさか!)
優しいノエラの記憶がいくつかよみがえる。
(あの優しさはすべて演技だったの!?)
リエルはショックを受けると同時に視界が途切れた。
薄れゆく意識の中でアランとノエラの声だけが聞こえてくる。
「こんなことになって殿下が気の毒ですわ」
ノエラの甘ったるい声がやけに耳を刺激する。
「これからはあたくしが支えになりますから」
それに対するアランの答えも、リエルにとっては衝撃だった。
「やはり君は心の美しい人だ」
「そんな……あたくしは当たり前のことをしたまで。今までリエルを支えてきたつもりでしたけど、彼女の悪事を見抜けなかったあたくしの責任でもありますわ」
「ノエラ、君こそが王太子妃にふさわしい」
お互いに見つめ合うアランとノエラ。
これまでリエルは想像もしていなかった。
自分の夫と親友が、深い仲であったことを。
(これは何の茶番? 私が一体何をしたというの?)
リエルはふたりに何も発言することもできず、そのまま意識が薄れていく。
目の前の光景が歪んでいき、やがて真っ白の世界が広がった。
何も、なかった。
先ほどまでの痛みも感じなかった。
不快な思いも薄れていく。
これが死というものなのかと、リエルは不思議な感覚に囚われていた。
「リエル、リエル……」
遠くでよく知った女性の声がした。
なつかしくて、その声を聞くだけで涙が出そうになる。
「お母さま?」
リエルが10歳のときには母は病気で亡くなった。
母との思い出は数少ない。
母は絵本を読んでくれたり、一緒に庭を散歩したり、眠れないときは一緒に寝てくれた。
わずかな思い出。だからこそ、あまりに貴重でリエルの記憶には深く刻まれてる。
母が亡くなった日、リエルは彼女のベッドで大泣きした。
(迎えに来てくれたのね)
母と一緒なら今までの苦しみも悲しみも、すべて忘れられる。
リエルは微笑んで母に手を伸ばした。
しかし、母はリエルの手を拒絶した。
「戻りなさい、リエル。あなたの人生はまだ終わっていないわ」
「え?」
「後悔のないように」
それだけ言って、母はふたたびリエルの目の前から姿を消した。
「お母さまああぁっ!」
手を伸ばして叫んでみたが、目の前にはただ真っ白な空間があるだけだった。
ふたたび意識を失って目が覚めたとき、リエルはベッドの中にいた。
ゆっくり視線を周囲に向けてみるとよく知った光景が広がっていた。
しかし、それが不自然に感じられる。
なぜなら、ここが結婚前の自分の部屋だったからだ。
リエルはハッとして身体を起こし、自分の胸に手を当てた。
「……私、刺されたはずなのに」
ずきりと胸が痛む。
記憶を辿るとあまりに鮮明に思い出す。
自分の胸に剣を突きつけたのは愛していた夫のアランだった。
窓へ目をやるとカーテン越しに光が差していた。
「私……生きてるわ」
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