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58、毎日パーティをする必要がありますか?
しおりを挟む皇城では連日のようにパーティが開かれたが、イレーナは疲れ果てていた。
5日目あたりでぐったりして、イレーナは部屋へ戻るとベッドに倒れ込んだ。
イレーナとともに部屋に入ってきたヴァルクが彼女を見て苦笑する。
「この程度でバテていては正妃は務まらないぞ」
イレーナはベッドに転がったまま、横目でじろりとヴァルクを見つめた。
「毎日毎日貴族の方々に挨拶まわり、国の事業についての会議、町への視察、そして夜にはパーティともうヘトヘトです! だいたい毎日パーティをする必要がありますか?」
イレーナのとなりに腰を下ろしたヴァルクは笑みを浮かべて言った。
「そうか。お前がそう言うならパーティはもうやめておこう」
「えっ? お、お待ちください。そんな簡単に私の意見を通さないでください」
最近のヴァルクはあまりにもあっさりイレーナの言うことを聞く。
それがかえって貴族たちの反感を買ってしまうのだから、イレーナは困惑していた。
しかし黙っておこうにも気になることはつい口にしてしまう性分で、ヴァルクはそれを知っていてわざとイレーナから意見を引き出すのだ。
「お前はいつも形式に囚われず、そのときその場に必要なことを提示してくる。そうだな。パーティに金を使うくらいなら、孤児に本を送ってやるほうが国の将来のためになるか」
イレーナはがばっと身体を起こした。
「そうです。お金がなくて学校に行けない子供たちはまだたくさんいます。奨学金制度を整えたところで、結局全員がその恩恵を受けられるわけではありませんから。近い将来は教育の無償化も考えておりますが、まだまだ財源が足りません。他の者は増税を勧めておりますが、まだ治安が安定していない状態で増税したら民の反発は凄まじいと存じます。まずは私たちが無駄な贅沢を辞めるところから始めましょう」
イレーナは怒涛のごとくしゃべりまくったせいか、ヴァルクは目を丸くして黙っている。
「……言い過ぎました。申しわけございません」
「謝るな。お前のそういうところが、昔から俺はたまらなく気に入っているんだ」
「ありがとうございます。ですが、気になりますね。私は昔、ヴァルクさまにどんな対応をしたのでしょう?」
「知りたいか?」
「よろしければ」
ヴァルクはベッドに腰を下ろし、イレーナの肩を抱いた。
(わ、わざわざこの格好で話すの?)
ヴァルクはまったく気にしていないようだった。
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