20 / 66
20、女に体重の話は失礼ですわ!
しおりを挟む「少し重くなったな。食事の量を増やして正解だった」
「し、失礼ですわ! 女に太ったなんて言わないでいただきたいです」
「このほうが触り心地がいい」
「ひゃあっ!」
腰を触られて驚いたイレーナがヴァルクに抱きついたので、クマはぺしゃっと潰れた。
慌てて離れると、クマはふたたびふわりと元の形に戻った。
イレーナは驚いて首を傾げていると、ヴァルクがにやりと笑って言った。
「それは商人ギルドに提案して作らせた試作品だが、発案者としてどう思う?」
「え? え……このクマちゃんのことですか? まさか羽毛でございますか?」
「そのとおりだ。お前の言ったアヒルで作らせたぞ」
イレーナはぽかんと口を開けて絶句した。
たまたま公国にいた頃に、商売人からもらった本に書かれていたことなのだ。
なんとなくそうなんだと頭の片隅に入れておいた知識を役立ててくれるとは驚きだ。
「調査してみたら、セシルア王国はまだアヒルを使ったことがないようだ。かの国ではアヒルは食用だからな」
「そうでございますか。では、今後は安価で大量生産できれば民たちも今よりふかふかのお布団で眠れますね」
「そうだ。ところで触り心地はどうだ?」
「たしかにマザーグースよりは劣りますが、それでも硬いお布団よりずっとふわふわで気持ちいいです」
「よし、わかった。さっそく生産会議をおこなわせるが、お前も参加するか?」
「ええっ? それは……」
イレーナの胸中は歓喜にわいた。
昔は公国で民にまぎれて商売人のところでいろいろ手伝ったりしたものだ。
自分の考案したものを作って売ることの楽しさをすでに知っている。
公女でなければ商売人になりたかったくらいだから。
そうだ。落ち着かなければならない。
妃が商売に手を出すなど、他の貴族たちからどう思われるか。
この国は公国と違って権力争いの巣窟だ。
いくら皇帝がよしとしても、ここはおとなしくしておくべきだろう。
「私は思いついたことを言っただけです。あとは商人の方々にお任せいたしますわ」
「そうか。それなら他にも何か思いついたことはないか? お前の意見を聞いてやろう。何でもいいぞ」
「え……?」
まさかそんなことを言われるとは予想もせず、イレーナは驚いた。
しかし、ヴァルクが冗談を言っているようには思えない。
ただの人質でお飾りの妻なのに、彼は大切なことに関してイレーナに意見を求める。
意外すぎて思いつかないので、イレーナはとりあえず言いたいことを口にした。
「あの、そろそろ降ろしていただけないでしょうか?」
ヴァルクはぬいぐるみを抱っこしたイレーナを抱っこしたまま突っ立っているのだ。
一瞬彼の表情が固まったので、イレーナは怒らせたかと危惧したが、そうではなかった。
彼はにやにやしながらイレーナをベッドに降ろし、自身はとなりに座る。
「軽すぎて気づかなかった」
「先ほどは重いって……」
「気にするな。女は冗談が通じなくて困る」
「体重は一番気になるところなんです!」
106
お気に入りに追加
1,860
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
《完》義弟と継母をいじめ倒したら溺愛ルートに入りました。何故に?
桐生桜月姫
恋愛
公爵令嬢たるクラウディア・ローズバードは自分の前に現れた天敵たる天才な義弟と継母を追い出すために、たくさんのクラウディアの思う最高のいじめを仕掛ける。
だが、義弟は地味にずれているクラウディアの意地悪を糧にしてどんどん賢くなり、継母は陰ながら?クラウディアをものすっごく微笑ましく眺めて溺愛してしまう。
「もう!どうしてなのよ!!」
クラウディアが気がつく頃には外堀が全て埋め尽くされ、大変なことに!?
天然混じりの大人びている?少女と、冷たい天才義弟、そして変わり者な継母の家族の行方はいかに!?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完】あの、……どなたでしょうか?
桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー
爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」
見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は………
「あの、……どなたのことでしょうか?」
まさかの意味不明発言!!
今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!!
結末やいかに!!
*******************
執筆終了済みです。
【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。
私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。
「でも、白い結婚だったのよね……」
奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。
全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。
一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。
断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる