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1巻
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序章
通りかかるとふわりと香る、金木犀と草木の匂い。
澄んだ空気の漂う丘の上にある一軒の建物。
そこには金色の花が咲き、開け放たれた扉からかぐわしい香りがする。
導かれるように足を踏み入れると、そこはなつかしい時代を思い起こさせる古くて温かい木の造りの店。
「いらっしゃいませ」
店員の声が心地よく響く。それを合図に現実を忘れ、緩やかで穏やかな時間が流れる。
錆びついた扉、色あせた壁、木の匂いがするテーブル、薬草と珈琲の香り。
店員のオススメは【そのときの私にちょうどよいもの】を与えてくれる。
疲れてふらりと立ち寄った人は、ゆっくり心と身体を癒し、旅の途中で偶然見つけた人は、この思い出をSNSで語った。
何気ない日常としてこの店を利用する人たちは、ただおしゃべりをして帰っていく。
どこにでもありそうな店なのに、たぶんここにしかないものがある。
その店は【かおりぎ】と言った。
第一章
山川夏芽、二十四歳。
イラストレーター兼会社員だった彼女は、このたび会社が倒産し、無職の状態になった。正確には専業のイラストレーターになったわけだが、イラストの仕事などほとんどもらえず、実質失業状態である。
おまけに学生の頃から付き合っていた彼氏と別れたばかりだった。
仕事と恋人を同時に失ってこの世の終わりかというほど気落ちしていたものの、現実は落ち込んでいる場合ではなかった。
イラストレーターで食べていけるはずもないので、まずは転職先を見つけなければならない。
ひとり暮らしなので家賃もかかる。
実家に戻るか、早々に転職先を探すかのどちらかしかなかった。
高校卒業後にひとり暮らしを始めたときは、社会人になる前にひとりで生活できる力をつけたいなどと偉そうなことを述べていたが、実は彼氏が気軽に遊びに来られるようにという単純な理由だった。
別れてしまった今、その家にひとりでいても鬱々とするだけなので、夏芽は実家に戻ることにした。
それは実家に引っ越してしばらく経ったある夜のこと。
夕食後、夏芽はさっさと自分の部屋へ戻りたかったが、母がなぜか食後のティータイムをするからダイニングに残るようにと言った。
食器を片付けたあとのダイニングテーブルに、母が紅茶を淹れたカップを置く。
かちゃりとカップとソーサーが触れる音が軽く響いた。
夏芽は首を傾げた。
家族しかいないのに客用のカップでわざわざお茶を淹れることはめずらしい。これまではだいたい、それぞれのマグカップで済ませていたのに。
こんな形式ばったことをして、一体何が始まるのだろうと、夏芽は少し警戒した。
父はテーブルを挟んだ向こう側にドカッと座り、夏芽をじっと見つめる。
彼は柔道と空手の有段者で体格もいいので、真正面から見られるとその気迫に圧倒されてしまう。
「ケーキがあるのよ。夏芽はどれがいい?」
母親がそう言ってケーキの箱を開けて見せた。
「え? 今日って何かのお祝いなの?」
夏芽が訊ねると、母は「特には」と笑顔で答えた。
夏芽はまたもや首を傾げ、箱の中を覗いた。
紅く鮮やかな苺が目立つ白いロールケーキと、艶やかな黒茶のグラサージュに金粉が振りかけてあるチョコレートケーキ、そして和栗のクリームがたっぷりと盛られたモンブラン。
夏芽はうーんと唸りながら少し迷った末、静かに「モンブラン」と答えた。
「じゃあ、あたしはこれ」
と母はチョコレートケーキを選んだ。
そうなると父は残り物になるのだが、彼が苺と生クリームのケーキが大好きなことを夏芽も母も知っているので、自然とそれを避けたというのもある。
昔から、父は最後でいいと言うのだが、ふたりは自然と彼の好みを残すのだった。
母が父のとなりに座ると、夏芽は「いただきまーす」と言ってモンブランの山を崩しにかかった。母も艶やかなチョコレートケーキの表面にフォークを当てた。父はケーキを目の前にしても、夏芽から目をそらさなかった。
非常に食べづらい、と夏芽は胸中で呟く。
それまで黙っていた父は夏芽と目が合った瞬間に、ゆっくりと口を開いた。
「夏芽、見合いをしてみないか?」
夏芽は丁寧に崩していたモンブランにフォークを突き刺してしまった。
「えっと、何を言ってるの?」
フォークを刺したまま、夏芽は父を凝視して訊ねた。
「父さんな、夏芽のことが心配なんだ。これから先、いい出会いがあるとは限らないだろ? それなら素性の知れた相手と出会うほうがいいのではないかと思ってな」
父は真剣な顔で話しているが、その熱気がもわっと伝わってきて、暑苦しい。
「そういう心配はいらないよ」
夏芽はさらりと拒否した。しかし父は無視して話を続ける。
「つい最近知り合いが病気で入院して、その見舞いに行ったときにお前の話が出たんだ。相手はお孫さんだが、恋人がいないらしいからちょうどいいという話になった。どうだ? 会ってみないか?」
夏芽はフォークで丁寧にモンブランを一口大にカットする。
「どうだと言われてもね。お父さんはそのお孫さんのことを知ってるの? 話したことは?」
「ない」
父はきっぱりと言い切った。
夏芽は深いため息をつきながらフォークを皿に置いて、父を睨むように見据える。
「話にならないよ。自分の知らない人を娘に紹介するなんて」
夏芽と父はしばらく無言で目を合わせていたが、横から母が口を出した。
「まあまあ、とりあえず話だけでも聞いてみたらどう?」
父も無言で大きくうなずき、夏芽は話だけならと了承した。
見合い相手の名前は矢那森稔、二十一歳。まだ大学生だった。
いくらなんでも学生が相手とはどうなんだ、と夏芽は呆れた。
父はケーキに口をつけることもなく期待の目を夏芽に向け、母はそのとなりで黙々とケーキを食べている。
「とりあえずお断りします。まだ学生でしょ」
と夏芽は冷静に言った。
母はケーキを食べ終えて、上品に紅茶を飲んでいる。
「もうすぐ卒業する」
「三年生だからあと一年ね」
母が横からすかさず訂正すると、父は大きく咳払いをした。
「医療系の学生らしい。資格のある職に就く。問題ないだろう」
「私みたいなおばさんじゃかわいそうだよ」
謙遜して言ったつもりだったのだが、父はそれを本気にして夏芽を攻撃する勢いで彼女の問題点とやらを列挙した。
「お前はなんの取り柄もないんだから早く結婚相手を見つけたほうがいいぞ。だいたい、絵の仕事をまだ諦めていないらしいな? いつまで夢を追いかけるつもりだ? 彼氏に振られたのもお前に原因があるんじゃないのか?」
夏芽は苛立ちを感じたが、黙った。
言い返したいが、あながち間違ってもいないからだ。
しかし、これだけは主張しておく。
「間違えないで。私から振ったんだよ」
険悪な空気の中、母がちらりと父へ視線を向けた。
「お父さん、あんまり余計なことを言ってると嫌われちゃうわよ。あ、それ食べないならちょうだい」
父は眉をひそめながら、さっと両手でケーキの皿を自分のほうへ寄せてひと言。
「俺の苺だ」
それから夏芽は無言でモンブランを食べ終えて、ダイニングから逃げるように出ていった。
夏芽は自分の部屋に戻り、照明も点けないでデスクにあるパソコンを立ち上げた。
パソコンの起動画面がまぶしく光り、彼女の陰鬱な顔を照らす。
やけに静かな夜だった。
ひとり暮らしをしていたアパートは車の走る音が絶え間なく聞こえ、周囲に居酒屋があるので夜中になると酔っ払った客たちが大声で談笑する声もよく響いた。
真夜中の喧噪が当たり前の生活だったのに、実家は静かだ。
何せ周囲は住宅街で、夜中になると人が消える。
子どもの頃はまったく気にしていなかったが、こんなに何も聞こえなくなるのだとあらためて気づいて不思議な気持ちになった。
デスクに座ってしばらくぼんやりとパソコンの画面を見つめる。
「なんにも、ない」
夏芽はひとり呟いた。
仕事もお金も特技も、女としての魅力もない。そして唯一好きだった絵を描くことさえ、今は億劫になっていた。
小さい頃から毎日絵を描いていた。将来は絵を描く仕事に就くのだとばかり思っていた。
しかし、現実はそう甘くはなかった。広い世界に出てみると、絵がうまい人はごまんといる。
しかもその中で絵を仕事にできる人はほんの一握り。
夏芽は大学時代、SNSを使って自分の絵をアップしていたところ、偶然目を留めてくれた出版社からの依頼で絵本の作画を担当することになった。
そのときは夢が叶ったのだと喜んだが、絵本は売れず、次の仕事はなかった。
学生の頃から付き合っていた元彼は、夏芽に現実を見ろと何度も言った。
よその女は自分を美しく見せるために努力をしているというのに、自分の彼女は誰にも認められることのない絵を描いているというのが、彼は気に食わなかったらしい。
それだけが原因ではないが、彼に他の女の影を察した夏芽は静かに別れを告げたのだった。
何も考えずに恋愛を楽しんでいた学生の頃とは違い、社会に出るとさまざまな困難にぶち当たり、次第に彼とは話が合わなくなった。
夏芽がそう感じていたのだから、彼も同じような思いを抱いていたのだろう。
自分の彼女が心安らぐ存在でなくなれば、他の女に目を向けてしまうのも仕方ないのかもしれないと、夏芽は彼を責めることはしなかった。
見合いを断ったものの、夏芽は相手のことが気になって、その夜はなかなか寝つけなかった。
別れたばかりの心境で見合いなど相手にも失礼ではないかと思っていたのに、朝起きてみたら年下の学生がどんな子なのか会ってみたいと思うようになった。
彼は祖父の経営するカフェに下宿していて、そこの手伝いをしている、と母から聞いた。ちなみに、その祖父が夏芽の父の知り合いらしい。
そこで夏芽はその店に行ってみることにした。
見合い相手だと硬くなりそうだが、客として行くなら自然だろうと思った。
その店は鎌倉にある。
最寄りの横浜駅から電車で三十分程度の距離で、それほど遠くもないが落ち着いた町だ。
古い建物が立ち並び、木々や草花が自然と町に溶け込んで、静かで心地よくて都会の喧騒を忘れさせてくれる。
夏芽は落ち込んだときに、よくふらりと訪れることがあった。
そんな気持ちをほぐしてくれる場所に、父から紹介された人が住んでいるのだ。
顔もわからない相手に会いに行く。不思議な緊張感に包まれる。
大昔の人は結婚するまで相手の顔がわからなかったというけれど、比較にはならずともその心境に少しばかり触れたような気がした。
町から離れた少し坂道をのぼったところにあるその店は、大昔からあるような古びた木造の建物だった。庭から生えのぼる蔦が建物の壁や窓にへばりついている。
入口の傍らに、店の名前と簡単なメニューが記載された看板があった。
養生カフェ【かおりぎ】
珈琲 300
紅茶 300
その他 350
養生という言葉が気になったが、それよりも、ずいぶんと安く提供してくれる店なのだなと思った。
いつも行くような街で人気のカフェなんかはコーヒーだけで七百円もするから、この値段は新鮮だった。それに、その他というのが気になる。
夏芽はすっかり純粋にカフェを楽しむ気分で敷地内へと足を踏み入れた。
入口から店の扉までの細長い道に沿って庭がある。草木の他に季節の花々が彩りを添えていて、中でも小さな薄いオレンジの蕾をたくさんつけている木に目をやると、なんだかなつかしさを覚えた。
丁寧に手入れがされている。
夏芽は庭を眺めながら自然と笑みをこぼした。
店の扉には鍵がかかっていた。今日はもしかしたら定休日なのかもしれない。
こっそりと横のガラス窓から店内を覗いてみると、照明は点いていなかった。
入院中の店主に代わり他のスタッフが店を開けているという情報を母から聞いていたが、店のウェブサイトもないので確認のしようがなかった。
「まあいっか」
と夏芽はひとり呟いた。
店の場所だけでも知ることができたおかげか安堵していた。
せっかく来たのでのんびり散歩でもして帰ろうと思った。
仲秋と呼ばれる今の時季は昼間は暑く、夜間は涼しい。
今日は特に真夏が戻ったのかと思うほどに太陽が照りつけて、じわりと汗をかく。町では薄着で出歩いている人を多く見かけた。
夏芽は七分袖のカットソーにロングスカートを着用して、薄手のジャケットを手に持ち、足下はソックスとスニーカーだ。
心地よい風を庭のほうから感じる。薬草のような独特の匂いと花の香りが混じって不思議な感覚に包まれる。
こういうところに住んでいたら毎日癒されるのだろうなあと思う。
こんなに静かで穏やかな景色は久しぶりだ。
ここ最近のさまざまな出来事を忘れさせてくれる。
彼のことがなくても、またここを訪れたいと思った。
近くなら毎日でも来るのに。そんなことを考えていたら、がさりと落ち葉を踏むような音がして、夏芽は振り返った。
白いシャツに黒のスラックスを着用した若い男の子が立っていた。
「あ、お客さんですか? すみません、すぐに準備します」
彼は急いで店の扉の鍵を開ける。
夏芽は背後から慌てて声をかけた。
「あ、いいえ。今日が休業日だって調べずに来たこちらも悪いんです。ごめんなさい」
「いえ、こちらこそすみません。実は今日、営業日なんです。すぐに戻るつもりだったのに、ちょっと用事が長引いてしまって……あ、よかったらどうぞ」
そう言って彼は笑顔で扉を開けてくれた。
夏芽は軽くお辞儀をしてから店の中に入る。
少し、緊張していた。
薄暗い店内に、温かみのある照明が点けられる。
店全体は木目調の内装で、床を踏みしめると軋む音がする。棚の上には水中に草花が入った瓶が置かれ、古書も並んでいる。
そして、草木と薬が混じったような不思議な匂いも漂っている。
アジアンカフェのようだなと思った。
「すみません。あまり綺麗な店じゃなくて」
彼は黒いエプロンを身につけながら苦笑する。
「そんなことないですよ。こういう雰囲気のお店、私は好きです」
「よかった」
彼はにっこりと笑った。
この子が稔くんなのだろうと夏芽は思った。
身長は夏芽より高いが、童顔のせいか高校生に見える。地味ではあるが清潔感のある服装と、丁寧な言葉遣いはとても印象がいい。
ふと、疑問に思う。
どうしてこの子がお見合いをするのだろう。
絶対に同級生の女の子にモテるはずなのに。
「どうぞ、座ってください」
「ありがとう」
稔に促されて、夏芽はカウンターテーブルの木製の椅子に腰を下ろす。
「何にしましょうか?」
訊ねられて夏芽は外にある看板のメニューを思い浮かべる。
「えっと……【その他】っていう飲み物が気になっていて。そのメニューを見たいのですが」
「あ、はい。えっと、メニュー……あれ? どこだっけ? たしかこのあたりにあったのになあ」
稔はカウンターテーブルの向こうで困惑しながらメニューを探しまわる。
「すみません、お客さん。おじいさん……じゃなかった。ここの店主が今日はお休みで僕しかいないので、メニューが見つからなくて……もしよかったら、僕のオススメでもいいですか?」
ものすごく困った顔で見つめられて、夏芽は一瞬だけ硬直した。
猫みたいに可愛い子だなあ。
そんな感想を抱きながら、夏芽は冷静に返答する。
「かまいませんよ。あなたのオススメをください」
「わかりました。あなたにぴったりの飲み物をご用意します。ちょっと待っててくださいね。あ、とりあえずお水です」
彼はそう言って、水の入ったグラスをカウンターに置いて店の奥へと引っ込んでいった。
グラスには氷が入っておらず、少しレモンの香りと塩の味がする水だった。
夏芽はそれを少しずつ飲んで、彼が出てくるのを待った。
店内に音楽が流れ始める。おそらく彼が音楽をかけたのだろう。落ち着いた曲調で二胡の音色が心地いい。
ほどよい空調が効いている。夏芽は持ってきたジャケットをバッグの上に置いた。
「なんか、癒される」
夏芽はひとり呟いて、目を閉じた。
緩やかな音楽と、不思議な香りと、店内の雰囲気。まるで、違う国へ旅行している気分である。
ここには非日常の世界が広がっている。
都会のモダンで賑やかなカフェも好きだが、こういう田舎っぽい落ち着いた雰囲気もすごくいい。
夏芽は頭の中のキャンバスに筆を走らせる。草木と花とコーヒーと、それから笑顔の素敵な男の子。
「お待たせしました」
うっとりと妄想を繰り広げていた夏芽は急に話しかけられて驚いた。
「どうかしましたか?」
「えっと……」
まさか、君の妄想をしていました、などと言えるわけがない。
夏芽は稔と目を合わせることが恥ずかしくなり、カウンターテーブルに視線を落とした。
そこに耐熱ガラスのポットとカップが置かれる。
ポットの中には庭で見かけたオレンジ色の小さな花がたくさん入っていた。注ぎ口から熱い湯気が静かに立ちのぼっている。
夏芽は訊ねる。
「これはなんですか?」
花を浮かべたお茶は見たことがあるけれど、目の前に出されたものは初めて目にした。
夏芽の疑問に対し、稔は落ち着いた口調で答える。
「これは桂花のお茶です」
「桂花?」
「金木犀ですよ。ちょうど庭に咲いていたものを摘んでノンカフェインの紅茶とブレンドしました」
「え、今これを作ったの?」
「はい。摘みたてなので香りは抜群にいいと思います」
稔は慣れた手つきでカップにお茶を注ぐ。
もわっと湯気が立ち、ほんのりと甘い匂いが鼻をくすぐった。
「いい香り」
「味もいいですよ」
「いただきます」
ひと口飲むと強い香りが口の中に広がり、飲み込むと身体の中がじんわりと温かくなった。ありふれた紅茶の味に初めて口にする金木犀の香りが合わさって新鮮だった。
「美味しい」
稔はにこにこしながら「よかった」と言った。
透明なポットの中に浮かぶ金木犀が、窓から差し込む陽光に当たってキラキラと光る。これを三百五十円で提供してくれるなんて、なんだか申し訳ない気がした。
それに、先ほど彼が言った言葉も気になる。
夏芽は疑問を口にする。
通りかかるとふわりと香る、金木犀と草木の匂い。
澄んだ空気の漂う丘の上にある一軒の建物。
そこには金色の花が咲き、開け放たれた扉からかぐわしい香りがする。
導かれるように足を踏み入れると、そこはなつかしい時代を思い起こさせる古くて温かい木の造りの店。
「いらっしゃいませ」
店員の声が心地よく響く。それを合図に現実を忘れ、緩やかで穏やかな時間が流れる。
錆びついた扉、色あせた壁、木の匂いがするテーブル、薬草と珈琲の香り。
店員のオススメは【そのときの私にちょうどよいもの】を与えてくれる。
疲れてふらりと立ち寄った人は、ゆっくり心と身体を癒し、旅の途中で偶然見つけた人は、この思い出をSNSで語った。
何気ない日常としてこの店を利用する人たちは、ただおしゃべりをして帰っていく。
どこにでもありそうな店なのに、たぶんここにしかないものがある。
その店は【かおりぎ】と言った。
第一章
山川夏芽、二十四歳。
イラストレーター兼会社員だった彼女は、このたび会社が倒産し、無職の状態になった。正確には専業のイラストレーターになったわけだが、イラストの仕事などほとんどもらえず、実質失業状態である。
おまけに学生の頃から付き合っていた彼氏と別れたばかりだった。
仕事と恋人を同時に失ってこの世の終わりかというほど気落ちしていたものの、現実は落ち込んでいる場合ではなかった。
イラストレーターで食べていけるはずもないので、まずは転職先を見つけなければならない。
ひとり暮らしなので家賃もかかる。
実家に戻るか、早々に転職先を探すかのどちらかしかなかった。
高校卒業後にひとり暮らしを始めたときは、社会人になる前にひとりで生活できる力をつけたいなどと偉そうなことを述べていたが、実は彼氏が気軽に遊びに来られるようにという単純な理由だった。
別れてしまった今、その家にひとりでいても鬱々とするだけなので、夏芽は実家に戻ることにした。
それは実家に引っ越してしばらく経ったある夜のこと。
夕食後、夏芽はさっさと自分の部屋へ戻りたかったが、母がなぜか食後のティータイムをするからダイニングに残るようにと言った。
食器を片付けたあとのダイニングテーブルに、母が紅茶を淹れたカップを置く。
かちゃりとカップとソーサーが触れる音が軽く響いた。
夏芽は首を傾げた。
家族しかいないのに客用のカップでわざわざお茶を淹れることはめずらしい。これまではだいたい、それぞれのマグカップで済ませていたのに。
こんな形式ばったことをして、一体何が始まるのだろうと、夏芽は少し警戒した。
父はテーブルを挟んだ向こう側にドカッと座り、夏芽をじっと見つめる。
彼は柔道と空手の有段者で体格もいいので、真正面から見られるとその気迫に圧倒されてしまう。
「ケーキがあるのよ。夏芽はどれがいい?」
母親がそう言ってケーキの箱を開けて見せた。
「え? 今日って何かのお祝いなの?」
夏芽が訊ねると、母は「特には」と笑顔で答えた。
夏芽はまたもや首を傾げ、箱の中を覗いた。
紅く鮮やかな苺が目立つ白いロールケーキと、艶やかな黒茶のグラサージュに金粉が振りかけてあるチョコレートケーキ、そして和栗のクリームがたっぷりと盛られたモンブラン。
夏芽はうーんと唸りながら少し迷った末、静かに「モンブラン」と答えた。
「じゃあ、あたしはこれ」
と母はチョコレートケーキを選んだ。
そうなると父は残り物になるのだが、彼が苺と生クリームのケーキが大好きなことを夏芽も母も知っているので、自然とそれを避けたというのもある。
昔から、父は最後でいいと言うのだが、ふたりは自然と彼の好みを残すのだった。
母が父のとなりに座ると、夏芽は「いただきまーす」と言ってモンブランの山を崩しにかかった。母も艶やかなチョコレートケーキの表面にフォークを当てた。父はケーキを目の前にしても、夏芽から目をそらさなかった。
非常に食べづらい、と夏芽は胸中で呟く。
それまで黙っていた父は夏芽と目が合った瞬間に、ゆっくりと口を開いた。
「夏芽、見合いをしてみないか?」
夏芽は丁寧に崩していたモンブランにフォークを突き刺してしまった。
「えっと、何を言ってるの?」
フォークを刺したまま、夏芽は父を凝視して訊ねた。
「父さんな、夏芽のことが心配なんだ。これから先、いい出会いがあるとは限らないだろ? それなら素性の知れた相手と出会うほうがいいのではないかと思ってな」
父は真剣な顔で話しているが、その熱気がもわっと伝わってきて、暑苦しい。
「そういう心配はいらないよ」
夏芽はさらりと拒否した。しかし父は無視して話を続ける。
「つい最近知り合いが病気で入院して、その見舞いに行ったときにお前の話が出たんだ。相手はお孫さんだが、恋人がいないらしいからちょうどいいという話になった。どうだ? 会ってみないか?」
夏芽はフォークで丁寧にモンブランを一口大にカットする。
「どうだと言われてもね。お父さんはそのお孫さんのことを知ってるの? 話したことは?」
「ない」
父はきっぱりと言い切った。
夏芽は深いため息をつきながらフォークを皿に置いて、父を睨むように見据える。
「話にならないよ。自分の知らない人を娘に紹介するなんて」
夏芽と父はしばらく無言で目を合わせていたが、横から母が口を出した。
「まあまあ、とりあえず話だけでも聞いてみたらどう?」
父も無言で大きくうなずき、夏芽は話だけならと了承した。
見合い相手の名前は矢那森稔、二十一歳。まだ大学生だった。
いくらなんでも学生が相手とはどうなんだ、と夏芽は呆れた。
父はケーキに口をつけることもなく期待の目を夏芽に向け、母はそのとなりで黙々とケーキを食べている。
「とりあえずお断りします。まだ学生でしょ」
と夏芽は冷静に言った。
母はケーキを食べ終えて、上品に紅茶を飲んでいる。
「もうすぐ卒業する」
「三年生だからあと一年ね」
母が横からすかさず訂正すると、父は大きく咳払いをした。
「医療系の学生らしい。資格のある職に就く。問題ないだろう」
「私みたいなおばさんじゃかわいそうだよ」
謙遜して言ったつもりだったのだが、父はそれを本気にして夏芽を攻撃する勢いで彼女の問題点とやらを列挙した。
「お前はなんの取り柄もないんだから早く結婚相手を見つけたほうがいいぞ。だいたい、絵の仕事をまだ諦めていないらしいな? いつまで夢を追いかけるつもりだ? 彼氏に振られたのもお前に原因があるんじゃないのか?」
夏芽は苛立ちを感じたが、黙った。
言い返したいが、あながち間違ってもいないからだ。
しかし、これだけは主張しておく。
「間違えないで。私から振ったんだよ」
険悪な空気の中、母がちらりと父へ視線を向けた。
「お父さん、あんまり余計なことを言ってると嫌われちゃうわよ。あ、それ食べないならちょうだい」
父は眉をひそめながら、さっと両手でケーキの皿を自分のほうへ寄せてひと言。
「俺の苺だ」
それから夏芽は無言でモンブランを食べ終えて、ダイニングから逃げるように出ていった。
夏芽は自分の部屋に戻り、照明も点けないでデスクにあるパソコンを立ち上げた。
パソコンの起動画面がまぶしく光り、彼女の陰鬱な顔を照らす。
やけに静かな夜だった。
ひとり暮らしをしていたアパートは車の走る音が絶え間なく聞こえ、周囲に居酒屋があるので夜中になると酔っ払った客たちが大声で談笑する声もよく響いた。
真夜中の喧噪が当たり前の生活だったのに、実家は静かだ。
何せ周囲は住宅街で、夜中になると人が消える。
子どもの頃はまったく気にしていなかったが、こんなに何も聞こえなくなるのだとあらためて気づいて不思議な気持ちになった。
デスクに座ってしばらくぼんやりとパソコンの画面を見つめる。
「なんにも、ない」
夏芽はひとり呟いた。
仕事もお金も特技も、女としての魅力もない。そして唯一好きだった絵を描くことさえ、今は億劫になっていた。
小さい頃から毎日絵を描いていた。将来は絵を描く仕事に就くのだとばかり思っていた。
しかし、現実はそう甘くはなかった。広い世界に出てみると、絵がうまい人はごまんといる。
しかもその中で絵を仕事にできる人はほんの一握り。
夏芽は大学時代、SNSを使って自分の絵をアップしていたところ、偶然目を留めてくれた出版社からの依頼で絵本の作画を担当することになった。
そのときは夢が叶ったのだと喜んだが、絵本は売れず、次の仕事はなかった。
学生の頃から付き合っていた元彼は、夏芽に現実を見ろと何度も言った。
よその女は自分を美しく見せるために努力をしているというのに、自分の彼女は誰にも認められることのない絵を描いているというのが、彼は気に食わなかったらしい。
それだけが原因ではないが、彼に他の女の影を察した夏芽は静かに別れを告げたのだった。
何も考えずに恋愛を楽しんでいた学生の頃とは違い、社会に出るとさまざまな困難にぶち当たり、次第に彼とは話が合わなくなった。
夏芽がそう感じていたのだから、彼も同じような思いを抱いていたのだろう。
自分の彼女が心安らぐ存在でなくなれば、他の女に目を向けてしまうのも仕方ないのかもしれないと、夏芽は彼を責めることはしなかった。
見合いを断ったものの、夏芽は相手のことが気になって、その夜はなかなか寝つけなかった。
別れたばかりの心境で見合いなど相手にも失礼ではないかと思っていたのに、朝起きてみたら年下の学生がどんな子なのか会ってみたいと思うようになった。
彼は祖父の経営するカフェに下宿していて、そこの手伝いをしている、と母から聞いた。ちなみに、その祖父が夏芽の父の知り合いらしい。
そこで夏芽はその店に行ってみることにした。
見合い相手だと硬くなりそうだが、客として行くなら自然だろうと思った。
その店は鎌倉にある。
最寄りの横浜駅から電車で三十分程度の距離で、それほど遠くもないが落ち着いた町だ。
古い建物が立ち並び、木々や草花が自然と町に溶け込んで、静かで心地よくて都会の喧騒を忘れさせてくれる。
夏芽は落ち込んだときに、よくふらりと訪れることがあった。
そんな気持ちをほぐしてくれる場所に、父から紹介された人が住んでいるのだ。
顔もわからない相手に会いに行く。不思議な緊張感に包まれる。
大昔の人は結婚するまで相手の顔がわからなかったというけれど、比較にはならずともその心境に少しばかり触れたような気がした。
町から離れた少し坂道をのぼったところにあるその店は、大昔からあるような古びた木造の建物だった。庭から生えのぼる蔦が建物の壁や窓にへばりついている。
入口の傍らに、店の名前と簡単なメニューが記載された看板があった。
養生カフェ【かおりぎ】
珈琲 300
紅茶 300
その他 350
養生という言葉が気になったが、それよりも、ずいぶんと安く提供してくれる店なのだなと思った。
いつも行くような街で人気のカフェなんかはコーヒーだけで七百円もするから、この値段は新鮮だった。それに、その他というのが気になる。
夏芽はすっかり純粋にカフェを楽しむ気分で敷地内へと足を踏み入れた。
入口から店の扉までの細長い道に沿って庭がある。草木の他に季節の花々が彩りを添えていて、中でも小さな薄いオレンジの蕾をたくさんつけている木に目をやると、なんだかなつかしさを覚えた。
丁寧に手入れがされている。
夏芽は庭を眺めながら自然と笑みをこぼした。
店の扉には鍵がかかっていた。今日はもしかしたら定休日なのかもしれない。
こっそりと横のガラス窓から店内を覗いてみると、照明は点いていなかった。
入院中の店主に代わり他のスタッフが店を開けているという情報を母から聞いていたが、店のウェブサイトもないので確認のしようがなかった。
「まあいっか」
と夏芽はひとり呟いた。
店の場所だけでも知ることができたおかげか安堵していた。
せっかく来たのでのんびり散歩でもして帰ろうと思った。
仲秋と呼ばれる今の時季は昼間は暑く、夜間は涼しい。
今日は特に真夏が戻ったのかと思うほどに太陽が照りつけて、じわりと汗をかく。町では薄着で出歩いている人を多く見かけた。
夏芽は七分袖のカットソーにロングスカートを着用して、薄手のジャケットを手に持ち、足下はソックスとスニーカーだ。
心地よい風を庭のほうから感じる。薬草のような独特の匂いと花の香りが混じって不思議な感覚に包まれる。
こういうところに住んでいたら毎日癒されるのだろうなあと思う。
こんなに静かで穏やかな景色は久しぶりだ。
ここ最近のさまざまな出来事を忘れさせてくれる。
彼のことがなくても、またここを訪れたいと思った。
近くなら毎日でも来るのに。そんなことを考えていたら、がさりと落ち葉を踏むような音がして、夏芽は振り返った。
白いシャツに黒のスラックスを着用した若い男の子が立っていた。
「あ、お客さんですか? すみません、すぐに準備します」
彼は急いで店の扉の鍵を開ける。
夏芽は背後から慌てて声をかけた。
「あ、いいえ。今日が休業日だって調べずに来たこちらも悪いんです。ごめんなさい」
「いえ、こちらこそすみません。実は今日、営業日なんです。すぐに戻るつもりだったのに、ちょっと用事が長引いてしまって……あ、よかったらどうぞ」
そう言って彼は笑顔で扉を開けてくれた。
夏芽は軽くお辞儀をしてから店の中に入る。
少し、緊張していた。
薄暗い店内に、温かみのある照明が点けられる。
店全体は木目調の内装で、床を踏みしめると軋む音がする。棚の上には水中に草花が入った瓶が置かれ、古書も並んでいる。
そして、草木と薬が混じったような不思議な匂いも漂っている。
アジアンカフェのようだなと思った。
「すみません。あまり綺麗な店じゃなくて」
彼は黒いエプロンを身につけながら苦笑する。
「そんなことないですよ。こういう雰囲気のお店、私は好きです」
「よかった」
彼はにっこりと笑った。
この子が稔くんなのだろうと夏芽は思った。
身長は夏芽より高いが、童顔のせいか高校生に見える。地味ではあるが清潔感のある服装と、丁寧な言葉遣いはとても印象がいい。
ふと、疑問に思う。
どうしてこの子がお見合いをするのだろう。
絶対に同級生の女の子にモテるはずなのに。
「どうぞ、座ってください」
「ありがとう」
稔に促されて、夏芽はカウンターテーブルの木製の椅子に腰を下ろす。
「何にしましょうか?」
訊ねられて夏芽は外にある看板のメニューを思い浮かべる。
「えっと……【その他】っていう飲み物が気になっていて。そのメニューを見たいのですが」
「あ、はい。えっと、メニュー……あれ? どこだっけ? たしかこのあたりにあったのになあ」
稔はカウンターテーブルの向こうで困惑しながらメニューを探しまわる。
「すみません、お客さん。おじいさん……じゃなかった。ここの店主が今日はお休みで僕しかいないので、メニューが見つからなくて……もしよかったら、僕のオススメでもいいですか?」
ものすごく困った顔で見つめられて、夏芽は一瞬だけ硬直した。
猫みたいに可愛い子だなあ。
そんな感想を抱きながら、夏芽は冷静に返答する。
「かまいませんよ。あなたのオススメをください」
「わかりました。あなたにぴったりの飲み物をご用意します。ちょっと待っててくださいね。あ、とりあえずお水です」
彼はそう言って、水の入ったグラスをカウンターに置いて店の奥へと引っ込んでいった。
グラスには氷が入っておらず、少しレモンの香りと塩の味がする水だった。
夏芽はそれを少しずつ飲んで、彼が出てくるのを待った。
店内に音楽が流れ始める。おそらく彼が音楽をかけたのだろう。落ち着いた曲調で二胡の音色が心地いい。
ほどよい空調が効いている。夏芽は持ってきたジャケットをバッグの上に置いた。
「なんか、癒される」
夏芽はひとり呟いて、目を閉じた。
緩やかな音楽と、不思議な香りと、店内の雰囲気。まるで、違う国へ旅行している気分である。
ここには非日常の世界が広がっている。
都会のモダンで賑やかなカフェも好きだが、こういう田舎っぽい落ち着いた雰囲気もすごくいい。
夏芽は頭の中のキャンバスに筆を走らせる。草木と花とコーヒーと、それから笑顔の素敵な男の子。
「お待たせしました」
うっとりと妄想を繰り広げていた夏芽は急に話しかけられて驚いた。
「どうかしましたか?」
「えっと……」
まさか、君の妄想をしていました、などと言えるわけがない。
夏芽は稔と目を合わせることが恥ずかしくなり、カウンターテーブルに視線を落とした。
そこに耐熱ガラスのポットとカップが置かれる。
ポットの中には庭で見かけたオレンジ色の小さな花がたくさん入っていた。注ぎ口から熱い湯気が静かに立ちのぼっている。
夏芽は訊ねる。
「これはなんですか?」
花を浮かべたお茶は見たことがあるけれど、目の前に出されたものは初めて目にした。
夏芽の疑問に対し、稔は落ち着いた口調で答える。
「これは桂花のお茶です」
「桂花?」
「金木犀ですよ。ちょうど庭に咲いていたものを摘んでノンカフェインの紅茶とブレンドしました」
「え、今これを作ったの?」
「はい。摘みたてなので香りは抜群にいいと思います」
稔は慣れた手つきでカップにお茶を注ぐ。
もわっと湯気が立ち、ほんのりと甘い匂いが鼻をくすぐった。
「いい香り」
「味もいいですよ」
「いただきます」
ひと口飲むと強い香りが口の中に広がり、飲み込むと身体の中がじんわりと温かくなった。ありふれた紅茶の味に初めて口にする金木犀の香りが合わさって新鮮だった。
「美味しい」
稔はにこにこしながら「よかった」と言った。
透明なポットの中に浮かぶ金木犀が、窓から差し込む陽光に当たってキラキラと光る。これを三百五十円で提供してくれるなんて、なんだか申し訳ない気がした。
それに、先ほど彼が言った言葉も気になる。
夏芽は疑問を口にする。
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